「あぁっ!」




春美が小さく悲鳴を上げたかと思うと、手を引っ込めた。

ネジの横に春美の形の良い爪が剥がれて落ちている。

それは血に濡れてまるで赤いネイルを塗っているようだ。




「もういい! もうやめてくれ!」




文秋が懇願するように叫ぶ。

その目にも涙が浮かんでいた。

爪が剥がれるまで頑張っても、ネジはびくともしない。




「次の部屋に進もう」




文秋の静かな声が通路にこだましたのだった。