運命の恋の始まりは……

「またまた~。見栄なんて張ったって、かっこわるいだけだからね?」

 そんな痛みをごまかすように、私は笑って言った。

 だけど。

「ちげーよ」

 さっきまでとは違う真剣な声で、冬馬は私の言葉を否定した。

「おれが彼女にしたいのは……、美雪だから」

 ……え?

「いやいやいや、そういう冗談はよくないって!」

 そう言ったけれど、冬馬の目は真剣なままだった。

「ほんとは今日、美雪んちに言って呼び出すつもりだったんだ。……告白するために。でも、今までただの幼なじみとしてやってきただろ? その関係を壊しちまうことが怖くて、正直ちょっと怖気づいてた」

 だけど、と言ってから、冬馬はふっと小さく笑った。

「さっき偶然美雪に会って、運命だなって思った。神様が、ちゃんと言えって言っているみたいだなって」

 そこで一呼吸おいた冬馬は、私の目を見つめた。

「好きだ、美雪。ずっと前から」

 そう、もう一度言う冬馬。

 うそでしょ?

 冬馬が、私のことを……好き?

『ごめんね、冬馬。私、そんなふうに見たことないよ』

 そう言うだけでいいのに、なかなか声が出ない。

 心臓が、ドキドキしてうるさい。

 もしかして私、迷っているの……?

「ち、ちょっと……考えさせて」

 つい、そんなことを言ってしまう。

 どうせ振るって思っているのに……、すぐにそうできない自分がいる。

 ホントに私、どうしちゃったの?

「もちろん。よく考えて、結論を出してほしい。いつでも、待ってる」

 小さく笑った冬馬の顔を見て、私の胸がキュンとする。

 ……キュン?

 え、ちょっと待ってよ。

 冬馬を好きになるなんて、今まで考えたこともなかったのに。

 私の運命の恋は、もうすでに始まっていたのかもしれません……?