「柊木さん、これをあそこのお客さんに」

「はいっ!」

 クリスマスイブ。

 私、柊木美雪はハンバーガーショップで、臨時のバイトに入っていた。

 あーあ。

 高校生になったら運命的な出会いをして、今頃彼氏と二人でクリスマスしてる予定だったんだけどな。

 現実は、クリスマスでお休みの人の代わりにシフトに入っただけ。

 仲のいい友達も、彼氏持ちだから二人でのクリスマスだ。

 そんなわけで私はクリぼっち。

 特別なことなんて、何一つない。

 やっぱり、現実そううまくはいかないや。

 注文の品を運びにお店へ出ると。

「……あれ。もしかして、冬馬?」

 お客さんの中に見慣れた顔を見た気がして、私は小さくつぶやいた。

 ……やっぱり、冬馬だ。

 椿野冬馬は、私の近所に住む幼なじみ。

 中学までは、一緒に登校するくらい仲のよかった冬馬だけれど、高校は別々。

 サッカーのスポーツ推薦で遠くの高校に進学した冬馬は、朝練もあって、私よりも2時間以上早く家を出る。

 休みの日も毎日部活で忙しそうで、高校に入ってからはほとんど冬馬の姿を見ていないんだ。

 だから、本当に久しぶり。

 冬馬、気づくかな?

 運んでからもチラチラと様子をうかがっていると。

「柊木さーん、次はこっちお願いします!」

「あっ、はーい!」

 あーあ、気づかれる前に店長さんに呼ばれちゃった。

 私はちょっと残念に思いながら、店長さんのもとへ急いだ。