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秘密の滝にしばらく滞在したけれど、蒼空の記憶には何ら変化はなかった。
安心すると共に、少し残念にも思う。
蒼空の思い出に強く残っている場所はここではないんだ。
「ごめん、何も思い出せなかった」
「ううん、いいのいいの」
それに、本命はここじゃない。
蒼空の記憶に1番残っているであろう場所は1つしかない。
でも、そこに連れて行くのは…。
「俺たちの思い出の場所、他にもあるんだろ?」
蒼空が見透かしたように言う。
「連れてって。俺なら大丈夫だから」
「……」
本当にいいの?
蒼空が苦しむことになるのに。
思い出したいと言ってくれる蒼空の意見を尊重して、本当に後悔しない…?
「花純との思い出は絶対取り戻したい」
真っ直ぐすぎるほど真っ直ぐな瞳。
蒼空はここまで私のことを大切に思ってくれているんだ…。
「…蒼空にとってすごく苦しい記憶だと思う。本当にそれでもいいの?」
頷く蒼空の目には覚悟の色が灯っている。
覚悟が必要なのは私の方だ。
「…わかった。これから行く場所は、蒼空が記憶を失う前日の夜にいた場所」


