何度でもキミに恋をする(旧題:もう一度キミと青春を)

『もしもし、花純ちゃんか?』


「うん、そうだよ!今蒼空がいるんでしょ?」


『うん。いるけど…』


「けど、何?」


『まるで別人みたいだよ。花純ちゃん、今こっちに向かってるの?』


まるで別人…か。


間違いなく、蒼空はまだ記憶を取り戻してはいない。


それがわかりホッとしたものの、記憶がないのに村までたどり着いた行動力が恐ろしい。


「今向かってる。おばあちゃん、お願いがあるの」


『お願い?』


「蒼空には何も話さないで。この村での出来事を何一つ話さないで欲しい。蒼空に何を聞かれても知らないって突き通して」


『それはなんで―』


「お願い!!」


思い出させるわけにはいかないの。


この村のことは一つ残らず忘れなきゃいけないの。


『わかった。駅に着く時間が分かったら連絡しておいで。おじいちゃんが車で迎えに行くから』


「ありがとう、おばあちゃん」


おばあちゃんが茅野家に起きたことを知っているのかはわからない。
  

でも、私の様子から察してくれたような気がする。


『なぁ花純、何がどうなってんだよ?』


スマホが律の手に戻ったようだ。


私ももうすぐ最寄り駅につく。


「ごめん、話す時間ない。私が行くまでは蒼空に近づかないでほしい。萌音や真由にも、蒼空が帰ってきたことは秘密にしてほしい」


『…そのかわり、あとでちゃんと説明してくれ』


「うん。わかった。それじゃあまた後でね」


律の察しが良くて助かった。


電話を切って駅まで走る、走る、走る。


早く蒼空のところへ行きたい。


蒼空が思い出さないうちに、連れて帰りたい。


蒼空はあんなところにいちゃダメだ。


待っててね、蒼空、すぐ行くから。


だからお願い、何も思い出さないで―。