「ねぇエミリちゃん聞いてよ!」
友達の莉奈ちゃんに話しかけられた。
「なにかいいことでもあったの?」
「うん!それが今、天凪花様がこの棟に来ているの!」
「いつもきてるし、そんなにすごいこと?」
「もう!エミリちゃんは御曹司に興味ないよね」
「えぇそんなことないと思うよ」
そう…そんなことない。私だって少しは興味がある。いや、とても。
昔から…ずっと。
「エ…ちゃ…エミリちゃん!天凪花様!」
「天凪花様がどうしたの」
「ほら、廊下の方を見て!」
豪華に飾られた廊下を見てみると、そこにはアイルがいた。
「やっぱり、天凪花様が一番よね!」
「私たちには無理だけど付き合うなら天凪花様のような方がいいわ!」
「天凪花様、あの夏樹様までふったらしいからな」
「夏樹様の容姿でもダメってどんな人を求めているんだ!」
男子までも天凪花様の話に入っている。やっぱりすごい人気なんだな…。
「天凪花様の運命の方っていったいどんな人なんだろう」
運命の人…。
「天凪花様の運命な人ってどんな人だろうね?」
「え?うーん意外と派手目じゃなくて落ち着いた感じの人とか?」
「エミリちゃんはそう考えるのか…。う〜ん私も派手目じゃない美少女だと思うな!」
「莉奈ちゃんも美少女だから、もしかしたら莉奈ちゃんが運命の人かもね」
言っておいてだが自分の心が痛い。
「……あはは!それは流石にないよ!私は"エミリ"が運命の人だと思うな」
「それこそ絶対にないよ!」
「そんなこと言い切れないよ!」
「それが言い切れるの。だって…」
私は、前世あの人に殺されたんだから…。
思い出したのは、一年前。思い出した記憶は、遥か昔––––。
天使と悪魔が戦っていた別の世界でのこと。
私は悪魔の幹部として生きていた。
「ねぇ〜この戦争いつまで続くの〜?」
「どちらかが負けるか勝つかまでよ」
「うぅ…そんなの一生終わらないよ!」
「逆にエミリは何か終わってほしい理由があるの?」
「あるに決まってるじゃん〜!」
「エミリは悪魔の中で、長の次に強い権力まで手に入れたり、同じ悪魔からは好かれ不自由なく暮らせるのに。どうして、終わって欲しいと思っているの?」
「悪魔に好かれてもなんとも思わないし!私はアイルにだけ好かれたいの!」
「あんたまだそんなこと言っているの?相手は"天使"なのよ。もし想いが通じ合ったとしても、お互いの兵士たちに狙われて終わり。幸せなんてその先、待っていないのよ?」
「わかっているよ!悪魔としての決まりは」
悪魔に生まれてきたのならば死ぬ気で戦わないといけない。
甘えず立ち向かえ。
最後まで悪魔を狙い続けろ。
そして、天使と恋をしたものには命はない。そんな決まりがある。
「でも好きになってしまったの…」
「エミリ…じゃぁ聞くけどあの天使のどこに惚れたの?」
「私が恋に落ちた時はね、幹部同士の戦いの時だったんだ。お互い死との巡り合わせなのに…私がヘマをしちゃってやられるって思っていたんだけどね…。その時にアイルは私を倒そうとせずに助けてくれての…」
「要はただ助けてくれて惚れたっと」
「そうだよ何か悪いの〜!」
なんかリナの視線が冷たくてつい早口で答えてしまう。
「悪魔に優しいなんて大半の天使は嘘だから、その天使にも気をつけたほうがいいんじゃない?相手も幹部なんでしょ?」
「アイルは嘘なんかつかないよ!」
「はいはい。今度の戦いは大規模になるって予想だから、その愛しの天使様にやられないようにしてね」
「うん!またここで二人でお話ししようね」
そんな会話が親友との最後の会話になるだなんて思ってもいなかった。
「悪魔としての誇りをーーーーー!!」
「天使としての使命をーーーーー!!」
そんなことを言い合いながら、お互いに戦いあっている。そんな私も、たくさん天使と戦ってきたので魔力があまりない。
「エミリ様!天使の幹部がこちらに攻めてきました!」
幹部!
「色は?」
「金色です!」
金色!彼だ!
天使で金色の証をつけている人は彼以外いない!
「私がそっちに向かうから、君たちはそこら辺の天使をお願い!」
「はい!」
私は、黒い翼を広げて彼の元へ向かう。
「アイル!」
「エミリやっときたんだね」
「くるに決まっているでしょ。お互い幹部なんだから」
「あぁ、そうだね。でもよかったよ、きてくれて」
そう微笑みかけられる。
アイルの微笑み!やっぱりかっこいい!
「エミリ?どうしたんだい?」
「なんでもない!」
「そう…まだ効いていないのかな」
「効く?何が?」
「悪魔専用の魔法陣」
魔法陣!
「そんなものいつの間に!」
「最初からだよ」
「え?」
「気づかなかったでしょ?」
気づくはずがない…。アイルとやっと会えると浮かれていて、周りなんか見ていなかったから。
何か口の中がドロっとしてきた。
「うぅ…。こ…こ、れは…血?」
ドロっとしたものは多分血で、私の口から大量に出てきた。
「あっ!やっと効いてきたみたいだね。安心してよ。これは、悪魔専用の中で一番楽に死ねるやつだから」
「安心などできない!あんなに優しくしてくれたのは嘘だったの!」
「…そう、嘘だよ。」
「!!そ…んな」
「本当は君のことなんて、…大嫌いだ。長から君を倒せっていう命令が来たんだけど…。そのためには、信頼させておけばかなり楽だし、優しいふりをして隙をつこうと思って優しくしただけ」
「嘘!そんなの嘘でしょ?私が、間違えて自爆魔法を使ってしまった時、助けてくれたのも。それから優しく話しかけてくれたのも。全部…全部嘘だったってこと?」
「うん。思ったよりも悪魔の幹部がこんなにちょろいだなんって思ってもいなかったけどね。嬉しい誤算だったよ」
全部…利用されていたんだ。
リナが言っていたことは、やっぱり間違っていなかったみたい…。
リナが言っていたことを信じていればよかったな…。いやでも、信じていても私はきっとこの展開になっていただろう。
「そっか…。やっぱり悪魔と天使は一緒にいてはいけない存在だった。大丈夫だなんて思うのは、ダメだった…そんなこと当たり前なのに…」
目が急に潤ってくる。あぁ…私は今、きっと泣いているんだろう…。
「エミリ」
私をまだからかうつもりなのか、歩み寄ろうとしてくるアイル。
「近づい…てこない…で!もう…私をから…かわないで」
あぁ…血を吐くだけじゃなくて、だいぶ喋りにくくなっている。もう私はダメなんだろう。
残っている魔力は少ない。だけど、最後くらい意地悪してもいいよね。だって、散々私のことを騙してからかっていたし。
「何をするつもりなの?」
顔がこわばっている。こんな彼の顔を初めて見た。
「嘘…の関係…も、私は天…使と仲良…くできた時間は、…しあ…わせだった。だか…ら。あなたも、…みん…なもし…あわせになって、欲し…い。わ、たしはそ…な世界を見た…かっ…た」
そして、本当はあなたに思いを伝えたかった。
「……最後に言いたいことは、それだけですか」
首を振る。
「さ…いご、は…これ…Flower」
私がそういうとあたり一面にお花が降り注ぐ。
私の今の魔力ではこれが限界。
アイルも、周りにいるみんなも驚いてくれたみたい。
成功してよかった。
あぁ…でも私の体は崩壊しかけている。
毒が体に回り切るよりも、魔力を全て使った影響のせいで体の崩壊の方が早い。
「'&%*@"#$!!」
「"@#%&:*!!」
あぁ、リナもアイルも何か叫んでいる。
必死そうに叫んでいる。でも、私にはもう何を言っているのかわからない。
せめて…最後だから笑おう。
「みんなに…幸せを」
私は、目を閉じて眠りについた。
「あっ!エミリやっと起きた!具合はどう?」
あれ?私は死んだはず…。
「リナ?なんでここに?」
そこにはリナと瓜二つの女の子がいた。
リナは赤髪赤目だったけど、目の前の子は黒髪黒目だ。
鏡を見るけど、私も黒髪黒目になっているけど顔はもちろん、名前も変わっていないみたい。
リナがいるっていうことは、ここは地獄ではないということ?
じゃぁ一体ここはどこ?
「なんでって言われても、私と歩いているときに倒れて、二日間起きないエミリちゃんのお見舞いに来ていただけですけど」
「ごめんね」
口から勝手に言葉が出た。
「別にエミリちゃんが無事だったからいいよ!」
少しでも話しているうちにこちらの世界の記憶が入ってくる。
ここは、地獄でも天国でもなくて、地球という星の中の国、日本というところ。
この世界は天使や悪魔などいなくて、人間だけの文明がきずかれていること。
今世の私、鮮出美エミリとしての今までの記憶。
そして、目の前の子は名前まで同じで、莉奈というらしい。もしかしたら、記憶の中で、"アイルと瓜二つ"の男の子がいたように、二人ともこの世界に生まれ変わったのかもしれない。
生まれ変わりの術は、天使の幹部クラスでしか使えない。でも、天使の幹部は悪魔の幹部である私を生まれ変わらせるメリットがない。
もしかしたら、アイルが生まれ変わらせてくれたのかもしれないけど、彼に大嫌いっと言われているので流石にそれはないと思う。
「エミリちゃんお腹空いているでしょ!何食べたい?」
確かに、考え事をしていて気づかなかったが、お腹が空いている。
やっぱりここは私が好きな…。
「お寿司」
「エミリちゃんは本当にお寿司が好きだね」
「うん」
お寿司はとても美味しいと言う記憶がある。
「絶対にお寿司って言うと思ったから、買ってきてあるんだ!あっ!目を覚ました記念だからお金はいらないからね」
そう言ってお寿司を袋から出す莉奈…ちゃん。
「ありがとう。さすが莉奈ちゃん!太っ腹!私のことよくわかってる」
「ふっふふー。エミリちゃんのことなんて大体わかりますからね!」
そう言って、私の目の前にお寿司を置いてくれた。とても美味しそう!!
「ふふ。じゃぁいただきます。ん!美味しい!」
「お口にあったようで良かった!ねぇ、何かお話ししよう!」
「そうだね。ねぇ、変なことを聞くかもしれないけど…アイルっていう人いる?」
今さっき見た記憶では、アイルに瓜二つの子がいた。
私やリナがこんなに瓜二つなので、もしかしたらアイルもいるかもしれない。
「……天凪花様の下の名前がアイルだったよ!」
やっぱり、アイルはいるんだ!
「あれ、様?」
「ほら、天凪花財閥の御曹司だから。天凪花財閥って聞いたことあるでしょ?」
天凪花財閥…。私の記憶だと代々続く名家で世界有数でもあるとか。
「同じ学校に通っているけど、棟が分けられているからあんまり会えないんだけど…。天凪花様は運命の人を探しているから私たちの棟にも来ていて、かなり印象的だよね!」
運命の人…。
「まぁ仮に私たちの中に運命の人がいても家が許してくれないだろうね。身分差の違いみたいなものだしね」
身分差…。今世でも、神は私の恋を応援してはくれなさそう。
悪魔だから味方してくれるとは思っていないけど…。
「でも、天凪花様はすぐ近くに運命の相手がいるけどね」
「なんでそんなことがわかるの?」
「うーん。勘!」
「勘でわかるものなの?」
「私の勘は結構当たるんだよ?」
「確かに…」
記憶を遡ってみると莉奈ちゃんが言ったことがしっかり起きていた。
リナが得意だった悪魔の占いの力が、今世でも発揮されているからかもしれない。
「なにはともあれ、こうやって話せるくらいには回復していてよかった!」
「莉奈ちゃんのおかげだよ!ありがとう!そして、ごちそうさまでした」
「うん!じゃぁまた明日」
「そうだね。また明日」
–––––現在。
そうして、私は鮮出美エミリとして暮らしてきた。
やっぱり何回見てもアイルは変わらなかった。そして思い知らされる。
彼とは世界が違うと…。
今更そんなことは分かっているし、前世のこともあるから私は彼に近づくことができない。
いや近づかない。
それに逆に少し隠れているくらいだから、私のことなんて少しも頭にないだろう。
「エミリちゃんもう帰る時間だよ!」
「本当だ!」
もうそんな時間だったんだ。
「じゃぁもう帰ろっか」
「そうだね」
カバンを背負って玄関へ向かう。
「あぁー!莉奈さん発見しました!」
「え?今日もしかして?」
「はい!もしかしてです!」
「本当⁈ごめん!今日、生徒会会議の日だったけ?」
「そうですよ!あれだけ確認したじゃないですか!」
「おっしゃる通りです…」
莉奈ちゃんが言いくるめられている。
「って言うことで、エミリちゃん!ごめん今日は一緒に帰れない!本当にごめん!」
「全然良いって!そういう日もあるし」
「うぅ…本当エミリちゃん天使!」
私は、天使ではなくて悪魔です。
「多分、今回も会議で帰る時間遅くなると思うからエミリちゃんは先に帰っていてね」
「うん!分かった。会議頑張ってね!」
「うん!頑張る!」
そう言って、莉奈ちゃんは同じく生徒会役員であると思われる子と一緒に、生徒会室に向かっていった。
周りが急に静かに感じる。
「…やっぱり一人だと寂しいな」
「寂しいなら俺たちと一緒に遊ぼうぜ!」
「へぇ?」
私の独り言が聞かれてた!
しかも知らない人にだなんて、とても恥ずかしい!!
「俺たち、鮮出美さんにのこと気になっていたんだよね」
「ほら、早く行こうよ!」
「で、でも「良いから、良いから早く行こう!」」
どうしようこの人たち話を聞いてくれない…。
莉奈ちゃん…助けて!
「君たちその子嫌がっているよ」
「どこの誰だかしらねぇが邪魔するんじゃ……」
この声は莉奈じゃないけど、誰か助けてくれた。
それに、なぜか急に喋るのをやめた、目の前の男の子達。
周りを見ると、他の男もなぜだか助けに来てくれた人の方を見て固まっている。
いったい誰が助けてくれたんだろう…。
気になって、助けてくれた男の子を見ると、その男の子はなんと…アイルだった。
「あ、天凪花様…!どうして、あなたがここに⁉︎」
「こっちの方から声がして気になって来てみただけだよ?君たち何をしているの?」
「お、俺たちは鮮出美さんと遊びたくて話しかけただけです!」
「今さっきも言ったけど、この子嫌がってるように見えるけど?」
「そ、それは…」
すごい…。あんなに何を言っても聞いてくれなかった人たちが、一瞬にして黙っている。
「で、でも天凪花様には関係ないです!」
「ば、馬鹿かお前!」
「でもほんとに関係ないし!」
「おい、お前天凪花様に逆らった社会で生きていけなくなるぞ!」
アイルは今、そんなに影響力がある人なの?社会でなんてことがあるの?
「だけど!「物わかりの悪い人だね」…へぇ?」
「………」
アイルが男の子たちに近づいて、何やら話している。そして男の子たちの顔がだんだんと青くなっていく。
何かそんなに酷いことでも言ったの?
「っ!では失礼しました!!!」
「鮮出美さんごめんね!!!じゃぁ!!!」
それを言い残して、そそくさと帰る男の子たち。
「アイルは何を言ったの…?」
「ただ、注意しただけだよ?」
「声に出てましたか?」
「うん、ばっちりと」
微笑みながら言うアイル。でも、私には前世の記憶があるからわかる。この微笑みは絶対作り物。
私と話すときよくしてた表情。好きだったその表情も嘘だとわかると、嬉しさも無くなっている。
それより早く、アイルから離れたい!
「その、助けていただいてありがとうございました。さようなら」
「待ってよ」
そう言われて、腕を掴まれる。
「あの、なんでしょうか?」
「ちょっと付き合ってほしいことがあるんだけど」
「それは、私以外にもできることではないでしょうか?」
「いや。君にしかできないよ」
「では、また今度ということではダメでしょうか?」
「今日がいいんだ」
今さっきの男の子たちもしつこかったけど、アイルの方が全然諦めてくれない!
こうなったら、ちょっとずつ玄関の方へ向かう。
アイルは別の棟なので、玄関の場所も違う。
ここは、玄関を出ることができたら、私の勝ち!
よし、後ちょっと…。
「話聞いてる?」
「え?なんでしたっけ?」
「僕の家にくる話」
「それは無理です!」
家とか、絶対無理!
靴まで後ちょっと…。
「なんでそんなに「すみません!天凪花様助けてくださりありがとうございました!!」」
急いで掴んだ靴を履いて外へ出る。
そして、家まで全力ダッシュだ!
ダッシュしたからなのか、アイルが追いつけなかったのか。私は無事に何事もなく帰ることができた。
友達の莉奈ちゃんに話しかけられた。
「なにかいいことでもあったの?」
「うん!それが今、天凪花様がこの棟に来ているの!」
「いつもきてるし、そんなにすごいこと?」
「もう!エミリちゃんは御曹司に興味ないよね」
「えぇそんなことないと思うよ」
そう…そんなことない。私だって少しは興味がある。いや、とても。
昔から…ずっと。
「エ…ちゃ…エミリちゃん!天凪花様!」
「天凪花様がどうしたの」
「ほら、廊下の方を見て!」
豪華に飾られた廊下を見てみると、そこにはアイルがいた。
「やっぱり、天凪花様が一番よね!」
「私たちには無理だけど付き合うなら天凪花様のような方がいいわ!」
「天凪花様、あの夏樹様までふったらしいからな」
「夏樹様の容姿でもダメってどんな人を求めているんだ!」
男子までも天凪花様の話に入っている。やっぱりすごい人気なんだな…。
「天凪花様の運命の方っていったいどんな人なんだろう」
運命の人…。
「天凪花様の運命な人ってどんな人だろうね?」
「え?うーん意外と派手目じゃなくて落ち着いた感じの人とか?」
「エミリちゃんはそう考えるのか…。う〜ん私も派手目じゃない美少女だと思うな!」
「莉奈ちゃんも美少女だから、もしかしたら莉奈ちゃんが運命の人かもね」
言っておいてだが自分の心が痛い。
「……あはは!それは流石にないよ!私は"エミリ"が運命の人だと思うな」
「それこそ絶対にないよ!」
「そんなこと言い切れないよ!」
「それが言い切れるの。だって…」
私は、前世あの人に殺されたんだから…。
思い出したのは、一年前。思い出した記憶は、遥か昔––––。
天使と悪魔が戦っていた別の世界でのこと。
私は悪魔の幹部として生きていた。
「ねぇ〜この戦争いつまで続くの〜?」
「どちらかが負けるか勝つかまでよ」
「うぅ…そんなの一生終わらないよ!」
「逆にエミリは何か終わってほしい理由があるの?」
「あるに決まってるじゃん〜!」
「エミリは悪魔の中で、長の次に強い権力まで手に入れたり、同じ悪魔からは好かれ不自由なく暮らせるのに。どうして、終わって欲しいと思っているの?」
「悪魔に好かれてもなんとも思わないし!私はアイルにだけ好かれたいの!」
「あんたまだそんなこと言っているの?相手は"天使"なのよ。もし想いが通じ合ったとしても、お互いの兵士たちに狙われて終わり。幸せなんてその先、待っていないのよ?」
「わかっているよ!悪魔としての決まりは」
悪魔に生まれてきたのならば死ぬ気で戦わないといけない。
甘えず立ち向かえ。
最後まで悪魔を狙い続けろ。
そして、天使と恋をしたものには命はない。そんな決まりがある。
「でも好きになってしまったの…」
「エミリ…じゃぁ聞くけどあの天使のどこに惚れたの?」
「私が恋に落ちた時はね、幹部同士の戦いの時だったんだ。お互い死との巡り合わせなのに…私がヘマをしちゃってやられるって思っていたんだけどね…。その時にアイルは私を倒そうとせずに助けてくれての…」
「要はただ助けてくれて惚れたっと」
「そうだよ何か悪いの〜!」
なんかリナの視線が冷たくてつい早口で答えてしまう。
「悪魔に優しいなんて大半の天使は嘘だから、その天使にも気をつけたほうがいいんじゃない?相手も幹部なんでしょ?」
「アイルは嘘なんかつかないよ!」
「はいはい。今度の戦いは大規模になるって予想だから、その愛しの天使様にやられないようにしてね」
「うん!またここで二人でお話ししようね」
そんな会話が親友との最後の会話になるだなんて思ってもいなかった。
「悪魔としての誇りをーーーーー!!」
「天使としての使命をーーーーー!!」
そんなことを言い合いながら、お互いに戦いあっている。そんな私も、たくさん天使と戦ってきたので魔力があまりない。
「エミリ様!天使の幹部がこちらに攻めてきました!」
幹部!
「色は?」
「金色です!」
金色!彼だ!
天使で金色の証をつけている人は彼以外いない!
「私がそっちに向かうから、君たちはそこら辺の天使をお願い!」
「はい!」
私は、黒い翼を広げて彼の元へ向かう。
「アイル!」
「エミリやっときたんだね」
「くるに決まっているでしょ。お互い幹部なんだから」
「あぁ、そうだね。でもよかったよ、きてくれて」
そう微笑みかけられる。
アイルの微笑み!やっぱりかっこいい!
「エミリ?どうしたんだい?」
「なんでもない!」
「そう…まだ効いていないのかな」
「効く?何が?」
「悪魔専用の魔法陣」
魔法陣!
「そんなものいつの間に!」
「最初からだよ」
「え?」
「気づかなかったでしょ?」
気づくはずがない…。アイルとやっと会えると浮かれていて、周りなんか見ていなかったから。
何か口の中がドロっとしてきた。
「うぅ…。こ…こ、れは…血?」
ドロっとしたものは多分血で、私の口から大量に出てきた。
「あっ!やっと効いてきたみたいだね。安心してよ。これは、悪魔専用の中で一番楽に死ねるやつだから」
「安心などできない!あんなに優しくしてくれたのは嘘だったの!」
「…そう、嘘だよ。」
「!!そ…んな」
「本当は君のことなんて、…大嫌いだ。長から君を倒せっていう命令が来たんだけど…。そのためには、信頼させておけばかなり楽だし、優しいふりをして隙をつこうと思って優しくしただけ」
「嘘!そんなの嘘でしょ?私が、間違えて自爆魔法を使ってしまった時、助けてくれたのも。それから優しく話しかけてくれたのも。全部…全部嘘だったってこと?」
「うん。思ったよりも悪魔の幹部がこんなにちょろいだなんって思ってもいなかったけどね。嬉しい誤算だったよ」
全部…利用されていたんだ。
リナが言っていたことは、やっぱり間違っていなかったみたい…。
リナが言っていたことを信じていればよかったな…。いやでも、信じていても私はきっとこの展開になっていただろう。
「そっか…。やっぱり悪魔と天使は一緒にいてはいけない存在だった。大丈夫だなんて思うのは、ダメだった…そんなこと当たり前なのに…」
目が急に潤ってくる。あぁ…私は今、きっと泣いているんだろう…。
「エミリ」
私をまだからかうつもりなのか、歩み寄ろうとしてくるアイル。
「近づい…てこない…で!もう…私をから…かわないで」
あぁ…血を吐くだけじゃなくて、だいぶ喋りにくくなっている。もう私はダメなんだろう。
残っている魔力は少ない。だけど、最後くらい意地悪してもいいよね。だって、散々私のことを騙してからかっていたし。
「何をするつもりなの?」
顔がこわばっている。こんな彼の顔を初めて見た。
「嘘…の関係…も、私は天…使と仲良…くできた時間は、…しあ…わせだった。だか…ら。あなたも、…みん…なもし…あわせになって、欲し…い。わ、たしはそ…な世界を見た…かっ…た」
そして、本当はあなたに思いを伝えたかった。
「……最後に言いたいことは、それだけですか」
首を振る。
「さ…いご、は…これ…Flower」
私がそういうとあたり一面にお花が降り注ぐ。
私の今の魔力ではこれが限界。
アイルも、周りにいるみんなも驚いてくれたみたい。
成功してよかった。
あぁ…でも私の体は崩壊しかけている。
毒が体に回り切るよりも、魔力を全て使った影響のせいで体の崩壊の方が早い。
「'&%*@"#$!!」
「"@#%&:*!!」
あぁ、リナもアイルも何か叫んでいる。
必死そうに叫んでいる。でも、私にはもう何を言っているのかわからない。
せめて…最後だから笑おう。
「みんなに…幸せを」
私は、目を閉じて眠りについた。
「あっ!エミリやっと起きた!具合はどう?」
あれ?私は死んだはず…。
「リナ?なんでここに?」
そこにはリナと瓜二つの女の子がいた。
リナは赤髪赤目だったけど、目の前の子は黒髪黒目だ。
鏡を見るけど、私も黒髪黒目になっているけど顔はもちろん、名前も変わっていないみたい。
リナがいるっていうことは、ここは地獄ではないということ?
じゃぁ一体ここはどこ?
「なんでって言われても、私と歩いているときに倒れて、二日間起きないエミリちゃんのお見舞いに来ていただけですけど」
「ごめんね」
口から勝手に言葉が出た。
「別にエミリちゃんが無事だったからいいよ!」
少しでも話しているうちにこちらの世界の記憶が入ってくる。
ここは、地獄でも天国でもなくて、地球という星の中の国、日本というところ。
この世界は天使や悪魔などいなくて、人間だけの文明がきずかれていること。
今世の私、鮮出美エミリとしての今までの記憶。
そして、目の前の子は名前まで同じで、莉奈というらしい。もしかしたら、記憶の中で、"アイルと瓜二つ"の男の子がいたように、二人ともこの世界に生まれ変わったのかもしれない。
生まれ変わりの術は、天使の幹部クラスでしか使えない。でも、天使の幹部は悪魔の幹部である私を生まれ変わらせるメリットがない。
もしかしたら、アイルが生まれ変わらせてくれたのかもしれないけど、彼に大嫌いっと言われているので流石にそれはないと思う。
「エミリちゃんお腹空いているでしょ!何食べたい?」
確かに、考え事をしていて気づかなかったが、お腹が空いている。
やっぱりここは私が好きな…。
「お寿司」
「エミリちゃんは本当にお寿司が好きだね」
「うん」
お寿司はとても美味しいと言う記憶がある。
「絶対にお寿司って言うと思ったから、買ってきてあるんだ!あっ!目を覚ました記念だからお金はいらないからね」
そう言ってお寿司を袋から出す莉奈…ちゃん。
「ありがとう。さすが莉奈ちゃん!太っ腹!私のことよくわかってる」
「ふっふふー。エミリちゃんのことなんて大体わかりますからね!」
そう言って、私の目の前にお寿司を置いてくれた。とても美味しそう!!
「ふふ。じゃぁいただきます。ん!美味しい!」
「お口にあったようで良かった!ねぇ、何かお話ししよう!」
「そうだね。ねぇ、変なことを聞くかもしれないけど…アイルっていう人いる?」
今さっき見た記憶では、アイルに瓜二つの子がいた。
私やリナがこんなに瓜二つなので、もしかしたらアイルもいるかもしれない。
「……天凪花様の下の名前がアイルだったよ!」
やっぱり、アイルはいるんだ!
「あれ、様?」
「ほら、天凪花財閥の御曹司だから。天凪花財閥って聞いたことあるでしょ?」
天凪花財閥…。私の記憶だと代々続く名家で世界有数でもあるとか。
「同じ学校に通っているけど、棟が分けられているからあんまり会えないんだけど…。天凪花様は運命の人を探しているから私たちの棟にも来ていて、かなり印象的だよね!」
運命の人…。
「まぁ仮に私たちの中に運命の人がいても家が許してくれないだろうね。身分差の違いみたいなものだしね」
身分差…。今世でも、神は私の恋を応援してはくれなさそう。
悪魔だから味方してくれるとは思っていないけど…。
「でも、天凪花様はすぐ近くに運命の相手がいるけどね」
「なんでそんなことがわかるの?」
「うーん。勘!」
「勘でわかるものなの?」
「私の勘は結構当たるんだよ?」
「確かに…」
記憶を遡ってみると莉奈ちゃんが言ったことがしっかり起きていた。
リナが得意だった悪魔の占いの力が、今世でも発揮されているからかもしれない。
「なにはともあれ、こうやって話せるくらいには回復していてよかった!」
「莉奈ちゃんのおかげだよ!ありがとう!そして、ごちそうさまでした」
「うん!じゃぁまた明日」
「そうだね。また明日」
–––––現在。
そうして、私は鮮出美エミリとして暮らしてきた。
やっぱり何回見てもアイルは変わらなかった。そして思い知らされる。
彼とは世界が違うと…。
今更そんなことは分かっているし、前世のこともあるから私は彼に近づくことができない。
いや近づかない。
それに逆に少し隠れているくらいだから、私のことなんて少しも頭にないだろう。
「エミリちゃんもう帰る時間だよ!」
「本当だ!」
もうそんな時間だったんだ。
「じゃぁもう帰ろっか」
「そうだね」
カバンを背負って玄関へ向かう。
「あぁー!莉奈さん発見しました!」
「え?今日もしかして?」
「はい!もしかしてです!」
「本当⁈ごめん!今日、生徒会会議の日だったけ?」
「そうですよ!あれだけ確認したじゃないですか!」
「おっしゃる通りです…」
莉奈ちゃんが言いくるめられている。
「って言うことで、エミリちゃん!ごめん今日は一緒に帰れない!本当にごめん!」
「全然良いって!そういう日もあるし」
「うぅ…本当エミリちゃん天使!」
私は、天使ではなくて悪魔です。
「多分、今回も会議で帰る時間遅くなると思うからエミリちゃんは先に帰っていてね」
「うん!分かった。会議頑張ってね!」
「うん!頑張る!」
そう言って、莉奈ちゃんは同じく生徒会役員であると思われる子と一緒に、生徒会室に向かっていった。
周りが急に静かに感じる。
「…やっぱり一人だと寂しいな」
「寂しいなら俺たちと一緒に遊ぼうぜ!」
「へぇ?」
私の独り言が聞かれてた!
しかも知らない人にだなんて、とても恥ずかしい!!
「俺たち、鮮出美さんにのこと気になっていたんだよね」
「ほら、早く行こうよ!」
「で、でも「良いから、良いから早く行こう!」」
どうしようこの人たち話を聞いてくれない…。
莉奈ちゃん…助けて!
「君たちその子嫌がっているよ」
「どこの誰だかしらねぇが邪魔するんじゃ……」
この声は莉奈じゃないけど、誰か助けてくれた。
それに、なぜか急に喋るのをやめた、目の前の男の子達。
周りを見ると、他の男もなぜだか助けに来てくれた人の方を見て固まっている。
いったい誰が助けてくれたんだろう…。
気になって、助けてくれた男の子を見ると、その男の子はなんと…アイルだった。
「あ、天凪花様…!どうして、あなたがここに⁉︎」
「こっちの方から声がして気になって来てみただけだよ?君たち何をしているの?」
「お、俺たちは鮮出美さんと遊びたくて話しかけただけです!」
「今さっきも言ったけど、この子嫌がってるように見えるけど?」
「そ、それは…」
すごい…。あんなに何を言っても聞いてくれなかった人たちが、一瞬にして黙っている。
「で、でも天凪花様には関係ないです!」
「ば、馬鹿かお前!」
「でもほんとに関係ないし!」
「おい、お前天凪花様に逆らった社会で生きていけなくなるぞ!」
アイルは今、そんなに影響力がある人なの?社会でなんてことがあるの?
「だけど!「物わかりの悪い人だね」…へぇ?」
「………」
アイルが男の子たちに近づいて、何やら話している。そして男の子たちの顔がだんだんと青くなっていく。
何かそんなに酷いことでも言ったの?
「っ!では失礼しました!!!」
「鮮出美さんごめんね!!!じゃぁ!!!」
それを言い残して、そそくさと帰る男の子たち。
「アイルは何を言ったの…?」
「ただ、注意しただけだよ?」
「声に出てましたか?」
「うん、ばっちりと」
微笑みながら言うアイル。でも、私には前世の記憶があるからわかる。この微笑みは絶対作り物。
私と話すときよくしてた表情。好きだったその表情も嘘だとわかると、嬉しさも無くなっている。
それより早く、アイルから離れたい!
「その、助けていただいてありがとうございました。さようなら」
「待ってよ」
そう言われて、腕を掴まれる。
「あの、なんでしょうか?」
「ちょっと付き合ってほしいことがあるんだけど」
「それは、私以外にもできることではないでしょうか?」
「いや。君にしかできないよ」
「では、また今度ということではダメでしょうか?」
「今日がいいんだ」
今さっきの男の子たちもしつこかったけど、アイルの方が全然諦めてくれない!
こうなったら、ちょっとずつ玄関の方へ向かう。
アイルは別の棟なので、玄関の場所も違う。
ここは、玄関を出ることができたら、私の勝ち!
よし、後ちょっと…。
「話聞いてる?」
「え?なんでしたっけ?」
「僕の家にくる話」
「それは無理です!」
家とか、絶対無理!
靴まで後ちょっと…。
「なんでそんなに「すみません!天凪花様助けてくださりありがとうございました!!」」
急いで掴んだ靴を履いて外へ出る。
そして、家まで全力ダッシュだ!
ダッシュしたからなのか、アイルが追いつけなかったのか。私は無事に何事もなく帰ることができた。