『ありがとうございます。でも名前で呼んでくれたら嬉しいです』

『分かりました!じゃあ、これからは柾先輩って呼びます!あ、そしたら私のことも下の名前で呼んでください!』



彼女からの提案は嬉しい誤算だった。



『はい、では僕も桃さんと呼ばせていただきます』



お互い名前で呼び合うようになった。
それから何かが変わることもなく、僕たちはそのまま図書委員の先輩と後輩という関係のまま、お互い進級した。


3年生になった、僕は再び図書委員になり、
2年生になった、桃さんもまた図書委員だった。







廊下で会えば挨拶をするくらいの関係にはなった。
でも、いまの僕にはもうそれだけでは足りなかった。

桃さんを好きだという感情が溢れて、より心の声は大きくなるばかり。

もっと一緒の時間を増やすためにはどうしたらいいんだろうか。

そんなことを考えていたとき、僕にチャンスが訪れた。



『立河は今日から補習にしようと思います』



職員室で先生たちのその会話を耳にしたのだ。