「かっこいいと言っていただいたので」

「え、と、」

「イメチェンをした理由です」



先輩はふわりと優しく微笑むと、きゅっと私の手を強く握った。



「桃さんがあの日、眼鏡を外した僕をかっこいいと言ってくれたので」

「せ、先輩はいつも……かっこいいです……」

「ありがとうございます。桃さんだけがそう言ってくれます」









「あなた達には関係ないのでついて来ないでください
(うるさい女たちだ。少し見た目を変えただけで、群がってこないでほしい。僕は早く桃さんと補習がしたいのに!)」

「こんにちは、桃さん
(今日も、可愛い、可愛い、可愛い)」

「……こ、こんにちは、柾先輩」

「すみません、騒がしくて
(桃さんを待たせてしまった……)」

「あ、いえ、あの!先輩今日もかっこいいですね」

「(あーーー!ありがとうございます!)」



「え、桃さん……?
(僕のブレザーの裾を桃さんが握っている。可愛い、え、なに?可愛い!小動物みたい、え、抱きしめたい)」

「先輩」

「はい
(ありがとうございます、もうずっと握っててください!)」

「……先輩、急にどうして、イメチェンなんてしちゃったんですか……?」

「桃さんからそんなことを言われたら僕、期待しますよ?
(え、似合ってない、それとも本当に期待していいやつですか?もしかして、意識してくれました!?)」

「え……?」

「(桃さんだけがどんな僕でもかっこいいと、変わらずに接してくれる。でも、いつもの僕では原田くんに勝てない気がして、柄にもなく素顔を晒したくなってしまったなんて、カッコ悪くて言えない……)」