「はぁー……」
ホームルームが終わり、楽しそうなクラスメイトたちの声を聞きながら、教室の一番前、窓側の席で私ーー立河 桃はひとり、ため息をこぼした。
季節は12月。目の前では置き型暖房機がボーッと機械音と共に温かい熱を吐き出している。
私もあんなふうに、ぽかぽかな気持ちで受け止めたらいいんだと思うけど。
「どーした桃?ため息なんかついて?」
「あ、蒼くん!」
名前を呼ばれ、ポニーテールをブンブンといじられたので振り返ればそこには、八重歯を見せながらニカっと笑う同じクラスの原田 蒼くんの姿が。
基本的に胸下まである黒髪をポニーテールにしていることの多い私。
彼は私のポニーテールでよく遊ぶ。私の髪は遊び道具ではないのだけど……。
蒼くんは中学から高校も一緒で、家も近い。言うならば幼馴染みたいな感じで、いつもニカっと八重歯を見せながら太陽のように笑う人。