「どう言って良いのか。殿下は、機嫌を悪くすると……例えば負けそうになると、ゲーム盤をひっくり返します」

 品が良くあんなわからず屋にもちゃんと優しいジュリアスは皆まで言わなかったけど、私はあのエセルバードがちゃぶ台を「気に入らない!」と叫びつつ、ひっくり返す光景が容易に思い浮かんでしまった。

 ヒステリックな男って、絶対嫌だわ。最悪。

「けど、世界が滅ぶというのに、まさかそんな……そこまで馬鹿なことは、しないと思いたいです」

 自暴自棄になって世界を滅ぼす訳なんてないとジュリアスの心配していることに、信じられない思いを抱えつつ私はそう言った。

「僕もそう願いたいところですけどね……殿下の行動は、僕の想像出来る範囲をいつも超えます。本当に予想がつきませんから」

 ジュリアスが予想出来るのは、彼の倫理観の範囲内のみ。エセルバードはそれを軽く越えちゃう常識知らず。

 私だって、あんな風にして彼が自分から過去の悪事を自白すると思わなかった。罪を被ってくれたジュリアスは、それを事前に止めようとしてたよね。

 あの人、本当に一体何を考えているんだろう……。