「なんだよ。俺が呼んでいるのに……っ、まあ、それは良い。少し、話せないか」

 面白くなさそうに視線で近くの木の下を示したので、あの場所で私と二人で話したいらしい。

 ……一体、何を? 話すことなんて、思いつかないのに。

「あの……ジュリアスにも同席して貰って良いですか? 私。貴方のこと、信用していないんです」

 何一つ。まるっきり。

 それに、私は異世界から召喚された聖女なので国民でもないし、王族と言えどこんな乱暴者を敬う必要性については完全にゼロ。

 慣れないだろう冷めた視線と口調にエセルバードは眉を寄せて、無言で強引に手を引いた。不本意ではあった。

 けれど、ここで揉めたりして誰かが助けに来てくれたとしても、その人が板挟みになってしまう。

 だとしたら、さっさと用件を先に聞いた方が良いのかも……。

「お前は……ジュリアスジュリアスと……そんなにも、あの男が良いのか?」

「あの、言いたいことがわかりません……何が言いたいんですか?」

 そんなわかりきった質問を、今改めて聞いてどうするつもりなんだろう。