「ジュリアスに喜んで貰えると思ったんですけど、ごめんなさい……」

 そう言って、彼を見上げると顔は間近にまで迫っていた。あっという間に、私たち二人の唇は重なり合っていた。

 ジュリアスの若さを保つために必要なキスなら、昨日何度もしたはずだった。けど、彼なら嫌でもないし、私は嬉しい……けど、これには理由がない。

 私とジュリアスは、まだキスをする関係でもないはずだけど。

 毅然としてこれを断るなんて、欲のない良い子のすることだから……私としてはそれを甘受する悪い子で居たい。

「聖女様は僕を守ろうとしなくて、大丈夫です。役目は逆なので。けど、ありがとうございます……お気持ちは、とても嬉しいです」

 やがて、目を合わせたまま離れたジュリアスは照れくさそうにして、渡した指輪をその指に嵌めてから胸に手を当てて微笑んだ。