「それに被害者の司祭が、市井でも人気のある慈悲深い司祭として有名だったんです。十年ほど前に団長は彼を殺してしまったことで堕ちた英雄や汚れてしまった英雄と呼ばれるようになりました……ですが、私はどうしても団長がそんなことをするとは、今でも思えないんですよ……」

 私もそれには完全に同意する。だって、それだとあのエセルバードが今生きてるの、絶対おかしいと思うもん。

「私も、そう思います! ……けど、団長は彼を殺してしまった理由を、何か言っていたんですか……?」

 気になるのは、それをした動機だ。もしかしたら、殺されそうになったからやむを得ずの正当防衛なのかもしれないし……。

「いいえ……団長は司祭との間にあった詳しい事情については黙秘を貫き、ただ『自分が怒りに任せて切り殺してしまった』としか、取り調べに対しては言わなかったそうです」

 若い頃から彼の右腕を務めているというハミルトンさんはその頃からずっと、私と同じ思いだと思う。