「ええ。実際のところ……この世界での聖女の祝福とは、道中に役立てるものとしてこちらでも認識されています。もし、今キスをして若返ったり怪我を治せたりする力の有無を知っていれば、自分が負った怪我を治して欲しいと、どうしても期待してしまいますから……これは、内緒にしておきましょう」

 唇に人差し指を当てたジュリアスは、自分の役目よりも私への負担を考えて、祝福が何であるかを黙っていることに決めたらしい。

 騎士団を率いる彼だって団長でなくなれば、不便になってしまうだろうに。

 けど、なんて紳士なの……素敵過ぎる。外見だけでなくて、内側もより素晴らしいなんてチート過ぎない?

「ありがとうございます。私……実はエセルバードにちゃんとした『祝福』があるのよって、さっきだってやり返してやりたかったけど……あの時に言わなくてよかったです……あの馬鹿王子とキスするの、絶対嫌です……あ」

 私は慌てて片手を口に当てた。エセルバードのこと、馬鹿王子って呼んでいること、バレちゃった。

 ジュリアスは苦笑しつつ、気にしないでと言わんばかりに手を振った。