無表情が基本な副団長がその時にとても残念な表情になったので、私は彼は本当はそうしたいと思って居るんだなとよくよく理解した。

 エセルバードめ……団長の足を引っ張って庇って貰うくらいなら、自分が馬車で足を抱えて震えていれば良いのに。

 私は団長の手当てしたいと考え、副団長に断ってから夕食を取る前に彼を探すことにした。

 小さな川へ傷口を洗い流していたらしい団長は、すぐに見つかった。彼は座り込んで無理な体勢になり、怪我を負っている脇腹を確認しているようだ。

 しまった。もっと早くに来れば良かった。異世界の傷薬は現代では信じられないくらい効き目があって、少々の切り傷だったら一晩で治ってしまう。

 けど、脇腹の薬を塗ったり包帯を巻くことは、彼一人ではしづらいはずだ。

 ああ……聖女の私にも手をかざしただけで傷を治すことの出来る『祝福』があったらなあ……エセルバードが言っていたことは、一理あったりもするのだ。

 与えられた『祝福』が旅立つ前に何かわからない聖女なんて、前代未聞らしいし……私が口笛吹いても、あの鳥は言うことを聞いてくれません。

 三桁の数居る中で全員与えられているらしい聖女の祝福は、私一人だけ忘れられて貰えてないっていう話ではないよね?

「あ。団長ー! 怪我大丈夫ですか? 私、傷薬と包帯持って来ましたー!」

「これは、聖女様……ありがとうございます。別に走らなくて大丈夫ですよ」

 私は優しく微笑んだ団長に早く薬を塗ってあげなくては! という強い使命感に囚われて、彼の元まで急ぎ走った。

 座り込んだままで私を待っていた団長や、両手に持っていた包帯と傷薬の入った小さな壺は何も悪くない。

 何もない平坦な地面で、派手に転んでしまった私が何もかも全部悪いだけで……。