「聖女様。そろそろ……魔物の巣へ近付いています。明日には、たどり着けるかと。どうか、心の準備をしてください」

 本当に今思うとあっという間だったけど、異世界から来た私が傍に居るだけで攻撃が通るという魔物がそろそろ近くに居るらしい。

「なんだか、緊張する……絶対怖いよね? 目を瞑ってて良い?」

 これまでの魔物との戦いはひやっとすることもあったけど、ジュリアスはじめ騎士団の皆さんが強いこともあり絶体絶命のピンチとかはなかった。

「それだと、逆に怖いかも知れません。聞こえないならまだ良いのかと思いますが、視界も音も遮断してしまうと結界の中と言えど危ないと思います。戦いはそれほど長くは続かないと思いますので、我慢してちゃんと見ていてください」

 実年齢が高いせいかジュリアスは少し、説教っぽいというか先生っぽい口調になる時がある。私にとってみたら、彼のこういうところもとても良いと思う。

「わかった……あの結界張る道具を倒したら、私死んじゃう?」

「死にます。身を守るすべのない聖女様は、テスカトリポカの前では、ひとたまりもありません」