「うん? さっきの話?」
火花はなんのことか分からないのか、首を傾げた。
「さっき、みんなの前で俺に、ずっと一緒にいるって言っただろ?」
「あぁ……古代魔法語学の話? うん、言ったけど」
「……俺が言ったのは、ただ一緒にいるってことじゃないからな」
「え?」
火花の手を取って、泳ぐのをやめさせる。火花のくりくりとした瞳が、パッと俺を映した。
「ノアくん、どうし――」
「俺は、火花をずっと守っていきたいと思ってるよ。……その……す、好きだから」
あぁ、と息を吐く。
ようやく、言えた……。
心臓が破裂しそうなくらいにバクバクしてる。
どうしよう……火花の顔が見れない。
どう思われただろう。火花は今、どんな顔をしてるんだろう。
めちゃくちゃ見たいのに、見たくない……。
ドキドキしていると、火花が繋いでいた手をきゅっと握り返してきた。
「ひば――」
思わず顔を上げる、と――。
「うんっ! ありがとう!」
恐ろしいくらい軽い返事が返ってきた。
「…………」
唖然となる。
「あ、ありがとうって……え?」
「ん?」
「いや、なんか、軽くない?」
俺、渾身の告白をしたはずなんだけど。
「いや……火花、今の言葉の意味、分かってる?」
まさか、気付いてない?
「うん? もちろん。……あ、もしかして告白だと勘違いすると思った? ハハ、大丈夫だよ! ノアくんには七年も前にフラれてるからね! ちゃんとわきまえてるって」
「…………」
思考が停止する。
…………は?
フッた? 俺が火花を? いつ?
「ちょ、ちょっと待って! 七年前って……俺がいつお前を……」
ハッとする。
思い出すのは、火花と仲良くなったときのこと。
火花が孤児だってことをからかわれて、幼稚園から逃げ出したとき、連れ戻しに行ったその帰り――。
『――私のこと、好きなの?』
『はっ!? そんなわけないだろ! バカッ!』
まさか、あれ!?
思わず額を押さえ、これ以上ないくらい深いため息を漏らした。
「いや、たしかに否定したけど……」
あれは完全に照れ隠しだろ。
それくらい分かれよ、このバカ火花。
というか、七年前の自分が恨めし過ぎる……。
ついムスッとなっていると。
「あのね、ノアくん」
「……ん?」
最早放心状態で顔を上げると、火花は少しだけ寂しそうな顔をして、俺を見ていた。
「火花?」
「ノアくんは女の子みんなの憧れで、すっごくモテるでしょ?」
「?」
いきなりなんだ?
「だから……いつか本当に好きな子ができて、私のそばからいなくなっちゃうってことは、私、ちゃんと分かってるから、大丈夫だからね」
「は――?」
突然、心臓がひやっと冷たくなった気がした。
「だからその……私はこれからも一緒にいたいとは思ってるけど、もしノアくんが離れていくときが来たとしても、私はちゃんと受け入れるよってこと」
寂しそうな、なにかを堪えるような横顔。
……まただ。
火花はいつも、一定の距離を詰めようとすると線を引く。
「……なんでだよ」
悔しくなる。
「俺は、離れる気なんて一生ないんだけど?」
「え?」
今、そう真正面から伝えたはずなんだけど。
「逆に聞くけどさ。火花は、どうしたら俺のそばにいてくれるんだ? どうしたら、そういう不安そうな顔をしなくなる?」
火花が無邪気に笑えるなら、俺はなんだってするのに。
「えっ……ノ、ノアくん?」
俺はこんなに、そばにいたいって思ってるのに……。
「火花」
名前を呼んで、腕を引く。
「えっ……」
火花の細っこい身体を、ぎゅっと抱き締める。
「ノッ……ノアくん!? あああ、あの……!?」
腕の中の火花ばじたばたもがく。
「火花、よく聞いて」
俺は火花を抱き締めたまま、想いを伝えた。
「好きだよ、火花。俺は、ずっと火花のことを女の子として見てきたんだよ」
「え……え……?」
火花がぴたりともがくのをやめた。
少しだけ腕の力をゆるめて見れば、火花は頬を真っ赤にして瞬きを繰り返してる。
……可愛い。
そうだよ。俺はずっと、お前にこんな顔させられてきたんだよ。だから、お前ももっと俺のことを意識すればいいんだ。
「えぇっ……」
まだ足りない。
もっと、もっと俺だけを見て。意識して。
絶対、ほかの男になんて渡さないからな。
俺は、火花がいい。
バカで無鉄砲で、無自覚無防備だって、俺は火花がいい。
いつも笑ってるけど、本当は誰より寂しがり屋で、怖がりで、泣き虫な火花がいいんだ。
「ほかの女の子なんてどうだっていい。俺は、火花がいればなにもいらないんだから」
恥ずかしさを必死に堪えて、畳み掛けるように言う。
「えっ……えっ!? あ、あの、ノアくん……なんかそれ、告白みたいなんですけど……」
今さらかよ。さっきから伝えてるのに。
わたわたして動揺する火花さえ、可愛くて仕方ない。
「いや、告白なんだけど」
「え……」
「言っておくけど、この七年間ずっと片思いしてたんだけど」
「ええぇぇえっ!?」
平然としたフリをして言うと、火花はさらに顔を真っ赤にした。
……あぁ、可愛い。
思わず頬をつんと指でしてみると、火花がびーんと固まった。
「…………?」
……あ、あれ?
「お、おーい、火花?」
……動かない。
「おい! 火花っ!?」
嘘だろ!? ここで固まる!?
火花はぽけっと口を開けて放心状態。というかたぶん、意識ない。
目を覚ましたら記憶飛んでるとかそういうオチやめてよ!?
半泣き状態で火花を揺する。
「おっ、起きろ火花!! なんでここで寝るんだよ~!! 起きろっ! おーい、火花っ!!」
しーん……。
起きる気配はまったくなし。
嘘だろ……。
「火花ぁ~……」
あぁ、もう泣きたい……。
火花はなんのことか分からないのか、首を傾げた。
「さっき、みんなの前で俺に、ずっと一緒にいるって言っただろ?」
「あぁ……古代魔法語学の話? うん、言ったけど」
「……俺が言ったのは、ただ一緒にいるってことじゃないからな」
「え?」
火花の手を取って、泳ぐのをやめさせる。火花のくりくりとした瞳が、パッと俺を映した。
「ノアくん、どうし――」
「俺は、火花をずっと守っていきたいと思ってるよ。……その……す、好きだから」
あぁ、と息を吐く。
ようやく、言えた……。
心臓が破裂しそうなくらいにバクバクしてる。
どうしよう……火花の顔が見れない。
どう思われただろう。火花は今、どんな顔をしてるんだろう。
めちゃくちゃ見たいのに、見たくない……。
ドキドキしていると、火花が繋いでいた手をきゅっと握り返してきた。
「ひば――」
思わず顔を上げる、と――。
「うんっ! ありがとう!」
恐ろしいくらい軽い返事が返ってきた。
「…………」
唖然となる。
「あ、ありがとうって……え?」
「ん?」
「いや、なんか、軽くない?」
俺、渾身の告白をしたはずなんだけど。
「いや……火花、今の言葉の意味、分かってる?」
まさか、気付いてない?
「うん? もちろん。……あ、もしかして告白だと勘違いすると思った? ハハ、大丈夫だよ! ノアくんには七年も前にフラれてるからね! ちゃんとわきまえてるって」
「…………」
思考が停止する。
…………は?
フッた? 俺が火花を? いつ?
「ちょ、ちょっと待って! 七年前って……俺がいつお前を……」
ハッとする。
思い出すのは、火花と仲良くなったときのこと。
火花が孤児だってことをからかわれて、幼稚園から逃げ出したとき、連れ戻しに行ったその帰り――。
『――私のこと、好きなの?』
『はっ!? そんなわけないだろ! バカッ!』
まさか、あれ!?
思わず額を押さえ、これ以上ないくらい深いため息を漏らした。
「いや、たしかに否定したけど……」
あれは完全に照れ隠しだろ。
それくらい分かれよ、このバカ火花。
というか、七年前の自分が恨めし過ぎる……。
ついムスッとなっていると。
「あのね、ノアくん」
「……ん?」
最早放心状態で顔を上げると、火花は少しだけ寂しそうな顔をして、俺を見ていた。
「火花?」
「ノアくんは女の子みんなの憧れで、すっごくモテるでしょ?」
「?」
いきなりなんだ?
「だから……いつか本当に好きな子ができて、私のそばからいなくなっちゃうってことは、私、ちゃんと分かってるから、大丈夫だからね」
「は――?」
突然、心臓がひやっと冷たくなった気がした。
「だからその……私はこれからも一緒にいたいとは思ってるけど、もしノアくんが離れていくときが来たとしても、私はちゃんと受け入れるよってこと」
寂しそうな、なにかを堪えるような横顔。
……まただ。
火花はいつも、一定の距離を詰めようとすると線を引く。
「……なんでだよ」
悔しくなる。
「俺は、離れる気なんて一生ないんだけど?」
「え?」
今、そう真正面から伝えたはずなんだけど。
「逆に聞くけどさ。火花は、どうしたら俺のそばにいてくれるんだ? どうしたら、そういう不安そうな顔をしなくなる?」
火花が無邪気に笑えるなら、俺はなんだってするのに。
「えっ……ノ、ノアくん?」
俺はこんなに、そばにいたいって思ってるのに……。
「火花」
名前を呼んで、腕を引く。
「えっ……」
火花の細っこい身体を、ぎゅっと抱き締める。
「ノッ……ノアくん!? あああ、あの……!?」
腕の中の火花ばじたばたもがく。
「火花、よく聞いて」
俺は火花を抱き締めたまま、想いを伝えた。
「好きだよ、火花。俺は、ずっと火花のことを女の子として見てきたんだよ」
「え……え……?」
火花がぴたりともがくのをやめた。
少しだけ腕の力をゆるめて見れば、火花は頬を真っ赤にして瞬きを繰り返してる。
……可愛い。
そうだよ。俺はずっと、お前にこんな顔させられてきたんだよ。だから、お前ももっと俺のことを意識すればいいんだ。
「えぇっ……」
まだ足りない。
もっと、もっと俺だけを見て。意識して。
絶対、ほかの男になんて渡さないからな。
俺は、火花がいい。
バカで無鉄砲で、無自覚無防備だって、俺は火花がいい。
いつも笑ってるけど、本当は誰より寂しがり屋で、怖がりで、泣き虫な火花がいいんだ。
「ほかの女の子なんてどうだっていい。俺は、火花がいればなにもいらないんだから」
恥ずかしさを必死に堪えて、畳み掛けるように言う。
「えっ……えっ!? あ、あの、ノアくん……なんかそれ、告白みたいなんですけど……」
今さらかよ。さっきから伝えてるのに。
わたわたして動揺する火花さえ、可愛くて仕方ない。
「いや、告白なんだけど」
「え……」
「言っておくけど、この七年間ずっと片思いしてたんだけど」
「ええぇぇえっ!?」
平然としたフリをして言うと、火花はさらに顔を真っ赤にした。
……あぁ、可愛い。
思わず頬をつんと指でしてみると、火花がびーんと固まった。
「…………?」
……あ、あれ?
「お、おーい、火花?」
……動かない。
「おい! 火花っ!?」
嘘だろ!? ここで固まる!?
火花はぽけっと口を開けて放心状態。というかたぶん、意識ない。
目を覚ましたら記憶飛んでるとかそういうオチやめてよ!?
半泣き状態で火花を揺する。
「おっ、起きろ火花!! なんでここで寝るんだよ~!! 起きろっ! おーい、火花っ!!」
しーん……。
起きる気配はまったくなし。
嘘だろ……。
「火花ぁ~……」
あぁ、もう泣きたい……。