「どうしてグラアナの肩を持つの? あなた、もしかしてグラアナに弱みでも握られているの?」
ぶんぶんと首を横に振る。
「弱みなんて握られてないよっ! グラアナは、本当はとってもいい魔女なんだよ! 絶対話せば分かるから」
「話なんて聞いても、なにも変わらないわ。部外者が分かったようなことを言わないで!」
う……王妃様、結構キツい……。
王妃様は憎しみをたっぷり込めた瞳で、グラアナの家を見つめた。
「あの女は、私を恨んでいるの。私を恨んで、私の子であるシュナの声を奪ったのよ……」
「え……」
王妃様は、悲しげに目を伏せた。
「…………でも」
そのとき、がちゃんと背後の扉が開いた。ハッとしてうしろを見る。
「……グラアナ!」
グラアナが家から出てきていた。
当事者の登場に、すっと周囲の音が止んだ気がした。
「皆の者、武器をかまえなさい!」
王妃様が声を上げる。
――と。
「待ってくれ!」
国王様が、その場を制した。
全員の意識が国王様に向いた。
「あなた? どうして……」
王妃様も驚いて国王様を見ている。
「悪いがコルダ……僕は少し、彼女の話を聞きたいんだ」
国王様は王妃様に、優しい声音で諭すように言った。
「どうして!? グラアナはシュナの声を奪ったのよ!?」
『……お母様。私も、ちゃんと話を聞きたいわ』
シュナが王妃様の手を握る。
「……シュナ?」
王妃様は困惑したようにシュナと私を交互に見た。
「……ねぇ、シュナはなんて言っているの?」
「あ、えっと……」
代弁しようとすると、
「お母様。私も、ちゃんと話を聞きたいわ……ですって」
「えっ……」
代弁したのは私ではなく、グラアナだった。
「グラアナ、シュナの声が分かるの!?」
驚いてグラアナに訊ねる。グラアナはふんとつまらなそうに息を吐いて、淡白に言った。
「そうみたいね」
グラアナも、シュナの声を聴くことができたなんて……。
「シュナは、本当にそんなことを?」
王妃様は驚いて私とシュナを見下ろしている。
シュナは驚きながらも、王妃様を見てこくこくと頷いている。
すっとグラアナが国王様に近づいた。
「……久しぶりね、アーノルド」
「……そうだな」
グラアナは国王様を見て、少しだけ悲しそうな顔をした。
運命の再会……って言うわけにはいかないよね。
「……アーノルド。この子がいろいろと騒がせたみたいで悪かったわね。でも、安心して。私はもう、この海を出て陸に戻るつもりだから」
えっ!?
「待ってよ、どうしてグラアナが海を出ていくの!? グラアナはなにもしてないのに!!」
「……火花、もういいのよ。私にはもう、ここにこだわる必要はないの。そもそもアーノルドに迷惑をかけたいわけじゃないし、これ以上私がここにいたところで、問題を大きくするだけなら、私は……」
「待ってくれ、グラアナ。僕は君の話が聞きたいんだ。……真実が知りたいんだ」
グラアナが黙り込む。
よかった! 国王様は話を聞いてくれる気があるみたい!
「なぁコルダ。少しだけ、彼女の話を聞こう」
国王様が優しく言うと、王妃様は口を噤んだ。
そのとき、シュナが王妃様の手をぐっと引いた。王妃様が驚いてしてシュナを見る。
「シュナ? あなたまでどうしたの……」
『お母様、私……火花やグラアナの話を聞きたいの。火花は嘘をつくような子じゃないし、なによりこれは私自身の話よ。少しだけでいいの。少しだけ、話をさせて。お願いよ、お母様』
シュナは一生懸命声を上げて訴える。けれど、王妃様は困ったように眉を下げて、シュナを見つめるばかりだ。
……聴こえていないんだ。シュナの言葉が。
「王妃様。シュナは、グラアナの話を聞きたいって言ってるよ」
シュナの言葉を代弁すると、国王様と王妃様は顔を見合わせた。
「……でも」
『お母様、お願いよ』
シュナも訴える。代わりに伝えると、王妃様は困ったように口を閉じた。
「……シュナはお願いって、言ってるよ」
シュナはじっと王妃様を見つめている。
「……分かったわ」
王妃様は仕方なさげにため息をついた。
するとシュナはホッとしたように表情を緩めて私を見ると、そのままグラアナへ視線を向けた。
『……初めまして、グラアナ。私はアトランティカのマーメイドプリンセス、シュナよ』
「…………」
グラアナは、黙ってシュナを見つめている。
『私、あなたのことを知りたいの。それから……私自身の声のことも。……私に教えてくれないかしら』
グラアナは気まずそうに一度俯き、ため息をついた。
「……楽しい話じゃないわよ。特に、あなたにとっては」
『それでもいいわ。知りたいの』
シュナは真っ直ぐな眼差しでグラアナを見つめた。
グラアナは一瞬困ったように眉を下げ、くるりと背中を向けた。
「……分かった。それならひとまず中へどうぞ。そんなところで立ち話なんて、プリンセスにさせることではないわ」
『火花も一緒に来てくれる?』
「もちろん」
「火花、俺たちも聞いていいか?」
ノアくんやドロシー、ダリアンがそばへやってくる。
「うん、そのほうが心強いよ。行こう」
こうして私たちは、国王様や王妃様たちと共にグラアナの家に入った。
ぶんぶんと首を横に振る。
「弱みなんて握られてないよっ! グラアナは、本当はとってもいい魔女なんだよ! 絶対話せば分かるから」
「話なんて聞いても、なにも変わらないわ。部外者が分かったようなことを言わないで!」
う……王妃様、結構キツい……。
王妃様は憎しみをたっぷり込めた瞳で、グラアナの家を見つめた。
「あの女は、私を恨んでいるの。私を恨んで、私の子であるシュナの声を奪ったのよ……」
「え……」
王妃様は、悲しげに目を伏せた。
「…………でも」
そのとき、がちゃんと背後の扉が開いた。ハッとしてうしろを見る。
「……グラアナ!」
グラアナが家から出てきていた。
当事者の登場に、すっと周囲の音が止んだ気がした。
「皆の者、武器をかまえなさい!」
王妃様が声を上げる。
――と。
「待ってくれ!」
国王様が、その場を制した。
全員の意識が国王様に向いた。
「あなた? どうして……」
王妃様も驚いて国王様を見ている。
「悪いがコルダ……僕は少し、彼女の話を聞きたいんだ」
国王様は王妃様に、優しい声音で諭すように言った。
「どうして!? グラアナはシュナの声を奪ったのよ!?」
『……お母様。私も、ちゃんと話を聞きたいわ』
シュナが王妃様の手を握る。
「……シュナ?」
王妃様は困惑したようにシュナと私を交互に見た。
「……ねぇ、シュナはなんて言っているの?」
「あ、えっと……」
代弁しようとすると、
「お母様。私も、ちゃんと話を聞きたいわ……ですって」
「えっ……」
代弁したのは私ではなく、グラアナだった。
「グラアナ、シュナの声が分かるの!?」
驚いてグラアナに訊ねる。グラアナはふんとつまらなそうに息を吐いて、淡白に言った。
「そうみたいね」
グラアナも、シュナの声を聴くことができたなんて……。
「シュナは、本当にそんなことを?」
王妃様は驚いて私とシュナを見下ろしている。
シュナは驚きながらも、王妃様を見てこくこくと頷いている。
すっとグラアナが国王様に近づいた。
「……久しぶりね、アーノルド」
「……そうだな」
グラアナは国王様を見て、少しだけ悲しそうな顔をした。
運命の再会……って言うわけにはいかないよね。
「……アーノルド。この子がいろいろと騒がせたみたいで悪かったわね。でも、安心して。私はもう、この海を出て陸に戻るつもりだから」
えっ!?
「待ってよ、どうしてグラアナが海を出ていくの!? グラアナはなにもしてないのに!!」
「……火花、もういいのよ。私にはもう、ここにこだわる必要はないの。そもそもアーノルドに迷惑をかけたいわけじゃないし、これ以上私がここにいたところで、問題を大きくするだけなら、私は……」
「待ってくれ、グラアナ。僕は君の話が聞きたいんだ。……真実が知りたいんだ」
グラアナが黙り込む。
よかった! 国王様は話を聞いてくれる気があるみたい!
「なぁコルダ。少しだけ、彼女の話を聞こう」
国王様が優しく言うと、王妃様は口を噤んだ。
そのとき、シュナが王妃様の手をぐっと引いた。王妃様が驚いてしてシュナを見る。
「シュナ? あなたまでどうしたの……」
『お母様、私……火花やグラアナの話を聞きたいの。火花は嘘をつくような子じゃないし、なによりこれは私自身の話よ。少しだけでいいの。少しだけ、話をさせて。お願いよ、お母様』
シュナは一生懸命声を上げて訴える。けれど、王妃様は困ったように眉を下げて、シュナを見つめるばかりだ。
……聴こえていないんだ。シュナの言葉が。
「王妃様。シュナは、グラアナの話を聞きたいって言ってるよ」
シュナの言葉を代弁すると、国王様と王妃様は顔を見合わせた。
「……でも」
『お母様、お願いよ』
シュナも訴える。代わりに伝えると、王妃様は困ったように口を閉じた。
「……シュナはお願いって、言ってるよ」
シュナはじっと王妃様を見つめている。
「……分かったわ」
王妃様は仕方なさげにため息をついた。
するとシュナはホッとしたように表情を緩めて私を見ると、そのままグラアナへ視線を向けた。
『……初めまして、グラアナ。私はアトランティカのマーメイドプリンセス、シュナよ』
「…………」
グラアナは、黙ってシュナを見つめている。
『私、あなたのことを知りたいの。それから……私自身の声のことも。……私に教えてくれないかしら』
グラアナは気まずそうに一度俯き、ため息をついた。
「……楽しい話じゃないわよ。特に、あなたにとっては」
『それでもいいわ。知りたいの』
シュナは真っ直ぐな眼差しでグラアナを見つめた。
グラアナは一瞬困ったように眉を下げ、くるりと背中を向けた。
「……分かった。それならひとまず中へどうぞ。そんなところで立ち話なんて、プリンセスにさせることではないわ」
『火花も一緒に来てくれる?』
「もちろん」
「火花、俺たちも聞いていいか?」
ノアくんやドロシー、ダリアンがそばへやってくる。
「うん、そのほうが心強いよ。行こう」
こうして私たちは、国王様や王妃様たちと共にグラアナの家に入った。