「はー?千瑛一人いないところで、誰も悲しまないって」


「うわ、言ったなこの野郎」



千瑛が私の髪の毛をぐしゃぐしゃにして、満足したように笑ってから結局サッカーをしに行ってしまった。



「もー…。ほんっと、千瑛最低…!髪の毛ぐちゃぐちゃにするし、学級委員の仕事も全部押し付けてくるんだからね?ひっどいよねー」


「…ふーん?その割には、嬉しそうだけど?」



中学からの親友、犬飼瑚子(いぬかいここ)が私の頬を掴み、びょーんと伸ばしてきた。


…だって、仕方ないじゃないか。


私は千瑛が好きなんだから。



「もう九月ってことは、茉莉花の片想いも四ヶ月くらいになってきたね。告白、しないの?」


「…できるわけないじゃん。だって千瑛はきっと私のこと、女の子として見てくれてないもん…」



気持ちに気づき始めたのは、五月の体育祭。