「だからって、なんでそんな急に…」


「そうね…。千春を失った今、生きる意味なんて見出せなかったんだけどね、やりたいことが見つかって今はただ夢中に頑張ってみようかなって。そう思っただけよ」



今まで私の生きる意味は千春がいたからと言っても過言じゃない。


千春がいなくなった今、世界はとてもつまらなくて幸せなんかじゃないけど、それでもやりたいことが見つかった。


それは、千春のように病気で苦しんでいる人達を一人でも治してあげられる医者になること。


当たり前の日常を諦めている人達を一人でも減らすこと。



「…梓、強くなったな」



千瑛くんの言葉に、ふっと微笑む。



「千春が私を強くしてくれたの」



千春が最後に残してくれた愛の手紙が入っているポケットを、服の上からそっと握る。


ねえ千春。もしもこの広い世界でもう一度出会えたら、その時は本音を隠さずに伝えるね。



私の呼びかけに答えるかのように、窓の外から入ってきた優しい風が頬を撫でていった。