世界で一番好きな人

「…なにがちょうどよかった、よ。茉莉花の気持ちも何も知らないくせに…。あんたたちの好きってそんなもんだったの？」


「瑚子？こんなところにいたの、探したよ」



犬飼さんに胸ぐらを掴まれ返す言葉もなく黙っていると、教室から茉莉花が小走りで駆け寄ってきた。



「…あ、一ノ瀬くん？って、ちょっと瑚子何してるの！喧嘩？」


「…いや、喧嘩じゃないよ。ちょっと聞きたいことがあっただけ」


「だからって胸ぐら掴むって…次移動教室だし、早く行こう瑚子」



茉莉花に“一ノ瀬くん”と言われるだけで胸がチクチクと痛んだ。



茉莉花にやっと気持ちを伝えられると思ったのに。


俺への気持ちも忘れてしまっている茉莉花に、今更伝えたところでまた傷つけるだけだ。もう、どうしようもない…。



「ねえ、茉莉花。河瀬くんの告白、もちろんオーケー出すよね？」


「え？な、なんで今それ…」