世界で一番好きな人




「ちょっといい?千瑛くん」



退院して冬休み明けから学校もまた普通に通えるようになって二週間。


俺は死んだように毎日を生きるしかできなかった。



「…なに?」


「ここじゃああれだから、廊下来て」



犬飼さんに連れられて廊下に出る。



「茉莉花のこと、このままでいいの?」


「…だって、どうしようもないだろ。記憶がないんだから、茉莉花にとって俺はただのクラスメイトなんだよ。今話しかけたところで戸惑わせるだけだし。それに言ってなかったけど、実はあの日茉莉花に別れようって言われたんだ。だからちょうどよかったのかもな。お互い未練なくこれから過ごせるから…」



パンっと音と共に頬がじんわりと痛んだ。