世界で一番好きな人

「どういうことだよ…」


「一条さんは今、高校に入学してから一週間の記憶で止まっている。そこから先の記憶が思い出せないんだよ」



意味がわからなかった。


言っている意味も今起きていることも何一つ理解することができなかった。



茉莉花は入学してから一週間の記憶しかない…?


だってそれじゃあ…。



「恐らく一時的なものだと思うけど、それでも原因は何かまだわかっていないんだ。だからあまり刺激をしないであげてほしい」


「わかった、千瑛?もう、勝手に病室も抜け出しちゃダメよ」



もう一度茉莉花に会いにいく勇気なんてなかった。


だって茉莉花は俺への気持ちも全て、忘れてしまっているんだから。



茉莉花の中で俺は“ただのクラスメイト”になってしまった。