凄絶!麻衣ロード/その19
麻衣



「それとだ…、砂垣が”毒の実”かじったぞ。さっそくね。星流会がすんなり口添えしてくれてようでね。まあ、時期が来れば、麻衣の望んだ場面が訪れるだろうよ」

ふー、この人の手並みには、もう呆れるばかりだわ

私は丁重に感謝とお礼を述べ、約40分のテレホンミーティングを打ち切った


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これで、私の描いた絵図はほぼレールに乗っかった

あとは基本、流れに沿うことになる

あーあ、なんか気が抜けちゃったな

またいつもと一緒だよ…

普通の感覚の人間は、コトをやり遂げれば充実感に浸れる

ところが、私は違うんだ

やり遂げたあとは、いいようなくさびしくなる

その一瞬で、今まで熱く事に当たってた自分が終わっちゃう

私は生きてる限り、今現在が過去になることに恐れおののき続ける…


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2階の自分の部屋へ戻ると、ポケットの中から先日買ったモノを出し、机に並べてみた

並んだのは3つだ

3点セットよね、これ

ふふ…、そうそう

”これ”使う場面、まだ残ってるって事じゃないのよ

もし、それに出くわせば…

それは今まで経験したこととは、まるで次元の違う”現在”と”過去”の移行になるのは間違いない


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その晩、ある夢を見た

夜中の3時過ぎ、大声をだして、布団から跳ね起きた

体中、寝汗でびっしょりだ…

「夢か…」

なんだか、テレビドラマや映画でよくあるシーンと同じだわ

「麻衣、どうした?」

あまりに大きい声を出したようで、隣の部屋で寝ていたお母さんが起きちゃった

「だいじょうぶだよ。変な夢見ただけだから…」

「そう…。なら、おやすみ。麻衣…」


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その夢の中で、私は人を殺した

その相手は中学時代、とても嫌いだった若い女の教師

そいつを授業中、果物ナイフでブスリと一刺しだった

ところがどうだ…

教室内のみんなは、血にまみれた私に気付いてくれない

私は大声で叫んでるのに

「みんなー!気づいてよー!」


...



翌朝、中学時代の写真が貼ってあるアルバムをめくってみた

いた!

この女だ

生理的に嫌いで嫌いでどうしようもなかったんだ、この英語教師の女

私には、どうしても許せない人間が何人かいる

この女教師、かかりつけの歯医者のおやじ、駅の売店のおばはん、夏休み最後の日、レストランでフォークぶっ刺したイノシシ男、そして久美を汚したアツシ…

それは、おけいにカッカと熱くなったり、相川夏美を女として嫌悪していたのとは、全く別の感情なんだ

別物なんだよ、奴らに抱く感情は

なぜか、昨夜からそんなことを、とても意識してる

どうしちゃったんだろう、私…