運命の急流/その15
麻衣



「なら、条件から先に頼む」

「あの…、今の確約、剣崎さんにも直で伝えたいの。やっぱりね…。取り次いでくれますかね?」

「ああ、大丈夫だと思う、それは…」

「じゃあ、お願いの方ね…」

ここで私は椅子から立ち上がり、ベッドで寝そべってる彼の脇に体を寄せてから言った

「あなたと婚約するってこと、これ、この状況なら倉橋さんは私の保証人という立場だと思う。命を懸けた。そうでしょ?」

「ああ、そうだな」

「ならよ、私が仮によ、本当に仮に何らかの、例えば事故とかで死んじゃったりしたら、そこで組への保証人の立場は消滅するわよね?」

「そうだ」

「その場合には、忘れて欲しいんだ、私のこと。できれば、過去も全部」

「おい…」

この人、いつも言葉短いから、おそらく”おい”の後は、何言ってんってんだよとか、勘弁しろよとかって感じかな…


...



「できる範囲、極力ってとこでいいのよ。お願いしたいの、っていうか心がけておいてねってとこかな」

「フン、俺みたいな武骨もんにはついて行けねえよ、君の頭の中味には。まあ、心がける。このくらいの日本語は俺でも承知してるから、大丈夫だろ」

「ははは…。ありがとうね、倉橋さん。バカな私だけど、よろしくね」

「そっちがバカだったら、この俺は何なんだ。もう、難しいことはゴメンだよ」

「私たちはお互い、ヘンテコなバカなのよ。結局イカレてるってこと」

彼は一言、「なるほど」とだけ言った…


...



剣先さんと話がつけば、なんだか私、終わっちゃう気もする

さっき彼を確かめて、私の求めていた何かに達した喜び

これも、もう過ぎたことになりかけてる思いもどこかにある

私の中の”主”は、どこに向かおうとしているの?