ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

運命の急流/その11
麻衣




「まず言っとくぞ。”これ”をオレに持たすのに、剣崎さんは矢島さんに相当食い下がった。なんとかかんとか、やっとこさってとこだったようだよ。それこそ…」

「…」

クールな倉橋さんにしては、珍しく感情がこもっていた

それだけ、剣崎さんが苦労しての”最後通告”ってことだろう

「現会長は、すでに君の対処を考えていただろう。オレも含めてな。剣崎さんがいなかったら、二人とも今頃消されてたかもしれない…」

わかってる、わかってるって…

剣崎さんに私がどれだけ助けられてるかは

「剣崎さんにはとても感謝してるわ。こんな小娘に、最初からずっと関わってもらったんだもん。迷惑かけて申し訳ない気持ちはありますよ」

この言葉に、嘘偽りはない

私の正直な心の内だし…


...


「なら、その気持ちを噛みしめて聞いてくれ…。これから言う二つのうち、どちらかを君が承諾すれば、それで済む。口頭で構わないそうだ。ふふ…、どうやら剣崎さんだけでなく、現会長の矢島さんも麻衣ちゃんが口に出したことは信用おけると。そういう認識らしい。大したもんだ。これまでの君の行動には、今の会長も目を細めてたからよう…」

「ありがたいですね、こんな小憎らしいガキに…」

「…」

再び倉橋さんがベッドから体を起こし立ち上がると、私の方に歩いてきた

そして、椅子に座ってる私の横で止まり、おでこに軽くキスをした

そのあと、テーブルを挟んだ正面に腰かけ、私をじっと見つめてる

「じゃあ、麻衣ちゃん、いいな?」

「はい。お願いします」


...



「まずひとつ目だが、これは前回と一緒だ。今後絶対に”コト”を起こさないと、オレの前で誓うんだ。あいまいな表現だが、君とは解釈の相違はあり得ないと判断している」

「わかりました。もうひとつもお願い…」

私はせっつくようだった

倉橋さんはうなずいてから口が開くまで、かなりの間があった

「…オレと籍を入れるか、婚約を交わすこと。期限はともに来月末日まで。ただし、口頭での宣誓は即答が条件だ」

「…」

ふたつ目のそれって…

愕然だった

思いもしなかったことで、言葉が出なかったよ、私…