運命の急流/その6
アキラ
「あのね、11時までには戻るって言って出てきてるの。退学のことでお母さんがナイーブになってるから、しばらくはね。ゴメンね、せっかく誘ってくれたのに」
「いや…、そうかお母さんも、そりゃあそうだよな…」
「それで、立話で言うことじゃないとは思うんだけど、早めに話しておきたいことあるんだ。今、いいかな?」
やはり、何かあるようだ…
...
「うん、聞くよ」
「来週、仕事で南米に単身赴任中のお父さんが、急きょ帰ってくることになったの。1週間滞在して、その間に私の今後のことを決めるだろうけど、たぶん、高校卒業の資格を取る選択肢を考えてると思う、親は…」
「うん、そうだろうね。そうするんだろ、君も」
「私さ、学校のことがこうなって、いろいろ考えたんだ。立ち止まりたくなんだよ、私。高校卒業も当然、先々で考える。でも、まずはアキラとのこと、親に話したいんだ」
「でも、今なら、どう考えても…」
「大反対だろうね、当然。だからこの前言った通りだよ。あなたと別れられなきゃ、家出てけってなるよ…」
「ケイコちゃん…」
「私、アキラのアパートで一緒に住んで、私もバイトやって少しでもお金稼ぐ。そうしたいんだ…」
そうか…、この前話した時には、こうなることを予想してのか…
...
しばらくオレは、彼女の顔を無言のまま見つめて続けた
そして…
「そうだな…、ケイコちゃんが本気でってんなら、苦労のいっぱい詰まった川を二人で渡ろう」
本当にいいのかとか、まだ16歳だしとか、もう少しよく考えてからとか…
”通り一遍”が頭を巡ったが、オレは、あえてそれら抜きで即答した
もうオレたち、十分互いを信じ切ってる
今まで散々、それで乗り越えてきてるんだ
余分な念押しなんていらないと思った
「ありがとう。アキラ、よろしくね、ずっと…」
彼女も少し間があったが、”余分”なものは省略だった
急展開だけど、まあ歯切れ良くていいさ、なかなかだ…
...
ちょうど10時半を回ったところで、新品のジョギングシューズを履いていたケイコちゃんは、家に向かって走って行った
その愛しい後ろ姿は、立ち止まることを自分に許さない決意に満ちていたよ
アキラ
「あのね、11時までには戻るって言って出てきてるの。退学のことでお母さんがナイーブになってるから、しばらくはね。ゴメンね、せっかく誘ってくれたのに」
「いや…、そうかお母さんも、そりゃあそうだよな…」
「それで、立話で言うことじゃないとは思うんだけど、早めに話しておきたいことあるんだ。今、いいかな?」
やはり、何かあるようだ…
...
「うん、聞くよ」
「来週、仕事で南米に単身赴任中のお父さんが、急きょ帰ってくることになったの。1週間滞在して、その間に私の今後のことを決めるだろうけど、たぶん、高校卒業の資格を取る選択肢を考えてると思う、親は…」
「うん、そうだろうね。そうするんだろ、君も」
「私さ、学校のことがこうなって、いろいろ考えたんだ。立ち止まりたくなんだよ、私。高校卒業も当然、先々で考える。でも、まずはアキラとのこと、親に話したいんだ」
「でも、今なら、どう考えても…」
「大反対だろうね、当然。だからこの前言った通りだよ。あなたと別れられなきゃ、家出てけってなるよ…」
「ケイコちゃん…」
「私、アキラのアパートで一緒に住んで、私もバイトやって少しでもお金稼ぐ。そうしたいんだ…」
そうか…、この前話した時には、こうなることを予想してのか…
...
しばらくオレは、彼女の顔を無言のまま見つめて続けた
そして…
「そうだな…、ケイコちゃんが本気でってんなら、苦労のいっぱい詰まった川を二人で渡ろう」
本当にいいのかとか、まだ16歳だしとか、もう少しよく考えてからとか…
”通り一遍”が頭を巡ったが、オレは、あえてそれら抜きで即答した
もうオレたち、十分互いを信じ切ってる
今まで散々、それで乗り越えてきてるんだ
余分な念押しなんていらないと思った
「ありがとう。アキラ、よろしくね、ずっと…」
彼女も少し間があったが、”余分”なものは省略だった
急展開だけど、まあ歯切れ良くていいさ、なかなかだ…
...
ちょうど10時半を回ったところで、新品のジョギングシューズを履いていたケイコちゃんは、家に向かって走って行った
その愛しい後ろ姿は、立ち止まることを自分に許さない決意に満ちていたよ



