ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

運命の急流/その3
アキラ



来週からは職が付いた

ピザの配達だが、ホント、ありがたいことだ

高卒ながら、結構大きな会社に4年務めて、何となくって理由だけで会社やめて…

やめたその日、わずかな退職金、パーッと使い果たしちゃった

泥酔して、何だか知らないうちに、やくざの系列だったライブハウスで暴れちゃって…

店の修理代だなんやで、その晩のうちに100万の借金を背負った


...


ちょうど退職したんだろうよってことで、借金返済のため、そのライブハウスで雑用労働の毎日が始まった

”マッドハウス”というその小屋は牢獄だった

どん底だった

太陽の陽射しから見はなされた陰鬱な日々…

耐え続けた

ひたすらに…


...


だが、その間、いろいろ巡りあわせがあった

最初はとことん相性の悪かった、猛女ロッカーの天理赤子さん

この人の”機転”がきっかけで、なんとギターのギの字も知らないオレが、ステージに立つことになる

サプライズの連続で、雑用から専属バンド”ロード・ローラーズ”の補助メンバーとなる

そこからは、急展開だった


...



このライブハウス建築の目的だった、地上げの為の周辺地権者立ち退きにも関与した

ロックの聖地となったマッドハウスが役目を終えたのは、結果的にオレが導いたことになる

ここでの職を失うことに”尽力”したオレに、呆れながらも気遣ってくれたのも赤子さん…

それなのに、彼女が敷いてくれたプロのレールを蹴り、守銭奴オーナーのルートを選択した

それは、他のメンバーへのプロデビューも絡んでいたから

大坂での”形式的”なオーディションも決定した


...



オレは他のメンバーみたいに、何が何でもって気にまではなれなかったし、そもそも自信なんてのもなかった

そんなんで、生き馬の目を抜くプロの世界で通用するはずがない

それは当のオレが一番、承知していたよ

他のメンバーがプロになったら、オレを排除するだろうことも予感していたし…

流されてるだけだ、オレ…

考えてみれば今まで、ずっとそうだった…


...



魂が空っぽで、張りぼての未来に呪縛されてたオレは、その時、無性に太陽の陽射しが欲しくなった

初夏の太陽に焦がれたオレは、千葉の海に赴いた

そこで、出会ったんだ…

心の芯まで焦がしてくれる、まばゆい限りの”陽射し”のような少女と

この子からの陽射しを浴びていなかったら、ささやかなバイト採用が決まっても、この胸の高鳴り、あり得なかったし

さっそく、ケイコちゃんに報告しなきゃ…