接近/その2
追川



つまり、相和会はそう遠くない時期での剣崎体制の承認を、現時点で広域組織に迫った訳だ

それに付随して、その剣崎体制の方針転換も合わせて、突き付けたと…

「それが仰天ものだったってことさ…」


...



Gからは、いつも歯切れの良い”回答”が返ってくるのだが、この時は今一つ軽快さに欠けた”解説”にとどまっていた

「イメージとしては、従来のやくざ組織とは別物になるから、これを事前に黙認してくれってな…」

俺はそれを広域側が認めた場合、メリットはあるのかを尋ねた

「わからん。端的に考えりゃ、競争相手が退場と見込めるから、関東、関西とも、喜ばしいことだと思うが、そうあっさり解釈できるものかどうか…」

では、相和会としてのメリットはどこにあるのか

Gはこれも苦虫を噛むような表情で話した

「完全に推測になる。旧来の極道世界のポジションから外れても、奴らには商売が成立する道筋は描かれてるってことじゃないのか。なら、面倒な利害関係がなくなれば、それに越したことはない」

要はやくざ世界からの脱却を見据えているのか

剣崎の奴は…


...



「相和会は何年後かははっきりしないが、樹立する剣崎体制の容認を核として、今回の合意に臨んだのは明らかだ。奴らからの要求は、然るべき体制での”不都合”の除去。この一点に絞られていたように思う。まあ、あくまで抽象的、包括的に条件を呑ませることのアプローチだったとな」

俺も、今ひとつわかりかねる

所詮、極道もん同士の通常見られる交渉フレームを外れてるし

「まさにこのアプローチには関東と関西も、さぞ戸惑ったことだろうよ」

Gはため息を伴った、やや投げやり気味な口調だった

「枝葉の詳細諸々は、わかりかねるのか?」

俺はズバリ聞いた

「ああ、わからんね。我々が従来から持つセオリーを無視してるんだ。わかるもんか」

セオリー無視…

相馬豹一と一緒ってことか…

奴が死んでも、対峙する長年の宿敵は、”それ”から解放されてないままだというのか?