ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

果てなく、妖しく…/その8
麻衣



「ああ、麻衣、待たせたよね。ゴメン。とにかく、退院おめでとう。あの…、これ…」

メットを取った久美、いやあ、一気にハデになったな

「何だ?これは」

「ああ退院祝いって程じゃないんだけど、大福、麻衣好きだから。駅前の店で買ってきたんだ」

「ああ、すまないなあ。気を遣わせて」

「いや、全然。だけど、体の方はホントに、もういいの?」

「うん、何とかね。”廃人”にはなってないしな」

「…」

はは、このわかりやすさは久美ならではだ

さあ、ママとの夕食が控えてるんで、久美、さっさといくぞ!


...


「今日、退学手続きでね。それで学校行ったから。ええと、私からの伝言、正確に伝わってるかな?」

「うん、聞いてるよ。あの私…」

「久美、言ってみな!私の伝言、正確にだ」

「ああ…。ええと…、授業終わったら逆髪神社の下で待ってからって。夜までいるけど、来れないんなら今夜、絶対にいる時間に家へ行くからって。あと…、病院から出て、すぐに挨拶するつもりだったのに遅れちゃってすまないって…。あの、こんなふうに聞いたんだけど…」

「肝心なのが抜けてるぞ!もう一回だ。よく思い出して、言ってみろよ」

「えっ?あのう…」

久美はさっきと、ほぼ同様の答えだった


...



私は久美からもらった大福をバイクの上において、久美の真正面に立ってね

それから、顔がくっつくらいまで近寄った

そして、スカートのポケットに両手を突っ込んだまま、右ひざを久美の下腹部へ打ち込んだ

「わあー!」

思わず久美のヤツ、両手で腹を押さえて背中を丸めたわ

「お前、ずっと私と一緒やってて、この私のメッセージひとつまともに受け取れねーのかよ!肝心なのが抜けてんだっての。しっかり思い出せ!」

私は久美を見下ろし、大声で怒鳴りつけた