接近/その1
追川



”情勢”が喫緊を体しているのは間違いない

だが、今ひとつ掴めない…

あのルートでも…


...



GK4と呼んでいるこの情報ルートは、いわば業界OB、関係者複数が情報提供者だ

各方面の直近の動きを関西系の元組長Gが取りまとめ、分析した結果を”買う”形だ

直接会って質疑応答形式で聴取するのだが、難点は費用がバカ高なことだ

10分1万円なので、あらかじめ知りたい情報を整理しといててきぱきと済まさないと、すぐに財布が空になる

今回は某ビジネスホテルの一室で会うことになっていた

そして昨日、40分4万円の”ネタ”を仕込んできたのだが…


...



まず、俺は核心から聞いた

「相和会と広域組織の”決着”を教えてくれ」

すでにいくつかのルートでの下調査を積んで、奴らは数度の話し合いを持った結果、”合意”に至ったらしいというところまでは掴んでいたんだ

「つい数日前、”合意”を交わしたようだ。相和会がいくつかの”要望”を出して、”それ”に関東、関西が統一した条件を付けた”具体案”を相和会に返した。さらに相和会が条件を付しての回答が帰ってきたのを、広域側が呑んだってことだ」

やはり、彼らの見解も”決着済”だった


...



「…概ねは業界関係者の読みに沿った形だったんだが、2割程度のボリュームで”真意”を量れない」

Gの結論はこうだった

相和会の最優先なんといっても、”県警サイドとの取決め維持は絶対に譲れない”だった訳で、これの詰めが最初に行われた模様だ

広域組織側からは、関東傘下の星流会との利害関係にこけるスタンスは現状通りを持続させること、さらに新たに相和会のテリトリーと近接する埼玉北部に、関西傘下団体の”進出”を認めるよう要求を突き付けたと…

ここで俺を含め大方の業界関係者は、相和会がその傘下団体に相和会が破門した北原と相和会離脱組を関与させないことを条件提示すると見ていた

それを受けた広域側はそれを呑む交換条件に、北原ら離脱組の身の保証を得る

実際にそのままの展開で交渉は進み、ここまで話が至れば、基本となる大きな幹の問題がガチッと解決したことになる


...



あとは残りの細かい枝は事案の摺り寄せだ

要はお互い血を流さないことを暗黙の大前提とした上で、広域側は相馬が生存中には越えられなかった壁をひとつ越せること、そして相和会は相馬が亡き後、なし崩される可能性を最低限度で抑えること

そもそも今のところは対相和会で協調しているが、関東と関西がいつまでイチャイチャはないだろうし

それぞれがモアベターで今は到達点ということさ

これが大方のシュミレーションで、実際それをなぞった結果となったと…

Gはわかりやすく、俺にそう告げたんだが…

Gの見立てでは、今回の太い幹での合意は双方ともに当初より一致点を織り込んでいたため、焦点はむしろ枝葉の方であったらしいと言うことだ

「どうやら、相和会は3代目の引退時期を明かし、その跡目も含め、了解を突き付けたようだな」

その跡目とは剣崎満也だった…