清濁併呑/その12
麻衣




今の状況、私はきっとヤバい立場なんだろう

ところがね、ある意味ウキウキ感ってのもある

だけど、”周り”は心配みたいだ

まあ当然か…

真樹子さんなんかは、ここのところの私がイカれ尽きてるの分かってるから、とても按じてくれてるご様子だ


...



「ところで、麻衣さん、大丈夫なの?倉橋さんのこともひっくるめてだけど、私あたりからでもちょっと”越えちゃってる”って感じだし…」

抽象的だけど、私には言ってる意味がよーく分かる

「私の前にはハナから安全に歩く道は存在しないし、平穏な未来を追いかける気も特段ないのよ。真樹子さんから大丈夫かと問われれば、いつ何があっても大丈夫なのよってね」

そう言いながら、私はここ最近携帯している”例のもの”に、上着のポケット越しで手を当てた

「そう…。まあ、三田村さんもああいう人だから、ストレートには言わなかったけど、あなたの身は気にかかってるようよ。くれぐれもね…、とにかくさ」

「承知したわ。私だって、倉橋さんと幸せになりたいくらいの気持ちはあるしね。イカレたもんなりに無茶は極力ね…(笑)」

真樹子さんは笑い返してきたよ


...



家に帰った後、寝る間際になって、祥子から電話がかかってきた

「麻衣、何とかいい形に持って行けた。以後、やれる限りはやるが、またお前の力を借りる場面があるやもしれない。頼むな」

「ああ、祥子、枠外でなら何でもやる。遠慮なく言ってきてくれ。いつでも飛んでくから」

言い終わると祥子のヤツ、ゲラゲラ大笑いしてるわ

「ハハハ…、それとおんなじこと、おけいも言ってたぞ。さえ達に向かって。お前らって水と油のようで、本当のところは似た者同士なんじゃないのか。性格は全く違ったってよう、持ってる気骨は一緒ってとこだよ、私らからしたら」

「なかなか粋なこと言うじゃんか、あんた。さすが新生南玉連合のトップだ。実際はそんなところかも知れないしね…」

「なあ、どうなんだ?この前は馬美とも1年の歳月を超えて和解したじゃないか。おけいともさ、何とか元に戻れないのか?」

祥子の投げるタマはいつも直球だ


...



「おけいとはこの前も言ったけど、個人的にドロ沼な訳よ。無理だよ。最も私は奴が好きだ。うーん、愛してると言ってもいい。でもさ、アイツは私を許さない。それでいいと思うよ、私はね」

「相も変わらず、なんともな言い回しだな、お前(苦笑)。私には、お前らって今でもさ、凄い信頼関係にあると思えてならないんだがね。今回だってお前とおけい、まるで連携してるかのようだったぞ。なのになあって気持ちはある…」

まずもって好漢だよ、この大女

「おけいは、清いも混ざりしも丸呑みして、浄化できちゃうみたいだな。私はぶっ壊し専門だったけど。いずれにしろ、私らは外部にいるんで。求心力の高まった南玉を核に、今後も連携が広がるだろうから、祥子がみんなをな…。大変だろうけど…」

「わかった。せっかくいい展開になってきたんだしな。真樹子さんや三田村さんとも、いろいろやり取りしてるから。それにこの前、麻衣に託された件も、三人で申し合わせしてる…。相手がそうとなったらやってやるさ」

祥子は気合が乗っていたぞ