果てなく、妖しく…/その1
麻衣




先程、大河原高校の退学手続きを済ませたところだ

お母さんはずっと泣いてて、さすがに応えた…

ごめんなさい

この気持ちはしっかり持ってるし、さっきも言葉で伝えた

子供の頃からイカレた娘を女手ひとつで育て、気の休まる暇がなかったと思う

そんなお母さんの心労は小さい頃からずっと、痛いほど、わかっていたよ

それでも止められないのよ、私の狂った血を

相馬豹一と出会ってからは、さらにインスパイアされた

そして、その人がこの夏逝った後は、もはや制御不能となった

私の中の主が、果たして私なのかもわからくなってきたわ

ごめんね…、まだ猛りまくってるんで、私の中のもん…


...



母への”償い”は、バカ娘なりにだが考えてる

学校を出た後、お母さんには、ほっぺたくらいひっぱたいってって言ったんだけどね

泣くばかりで、手は上げなかった

ハンカチを目にあてがいながら、学校近くのバス停からバスに乗った母親を、私は手を振って見送ってね

私はまだ済ませる”用”があるので、お母さんには先に家に帰ってもらった

そして再び学校へと向かって歩いた


...



さあ、校舎のちょうど裏側にある焼却炉付近の裏門脇で待機だ

しばらくしてチャイムが鳴り、午前最後の休み時間に入ったようだぞ

一斉に学校の中がざわついて、すでに大勢の生徒が校庭に出てきたわ

いつもと変わらない学校のありふれた光景

みんなにとっては当たり前の日常だろう

だが、私にとっては、非日常にほかならない…

やっぱり、異常だ、私…


...



休み時間になって3分ほどしてから、お目当ての場面が視界に収まった

「コラーッ!」

私は門の外から、こう怒声をあげた

焼却炉の陰で”一服中”の女子生徒3人組は、跳ね上がって驚いてるよ(笑)

「ヤバい!見つかった!」

「すいません!あの、これは違うんで…、あっ!本郷先輩!」

「よう、久しぶり」

「わあ、本郷先輩じゃないですか!戻ったんですね、お久しぶりです!」

「えっ、本郷さん?」

「本当だ!麻衣だー!」

「おーい、みんなー、麻衣が帰ってきたよー!」

うわあ…、いっぱい来たよ

参ったなあ…