極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない

一瞬、場の空気が固まる。


「お見合いでもしたら? お父さんの会社の人で、目ぼしい人がいるみたいよ。あんた、どうせ仕事ばっかりなんでしょ?」

「お見合いって……。そんなのしないよ」

「贅沢言ってないで、とりあえず会うだけでもいいんだし」


反射的に漏れそうになったため息を、ギリギリのところで飲み込む。


「いやいや、お義母さん。お義姉さんは仕事が忙しいし、そんなに急かすようなことでもないですって」

「そうだよ。私の友達も職場の先輩たちも、独身の人が多いよ」


すぐにフォローに入ってくれた妹夫婦に、ありがたさと申し訳なさが芽生える。せっかくのお祝いの場なのに、これ以上は変な空気にしたくなかった。


「今日は私のことはいいでしょ。そういうのは、今度ひとりで来たときに聞くから」


得意の営業スマイルを返し、お皿を取り出す。今夜はダイニングテーブルには食材や飲み物を置き、ローテーブルで食事を摂るようだった。


「わかったわよ。あっ、芽衣。お皿とグラス、もっと出しておいて」

「どうして?」

「あら、言わなかった? 今日は香坂さんも一緒に食べるのよ」

「えっ!?」