樹くんはベッドから出ると、その辺に散乱していた自身の服を拾い集めた。


ボクサーパンツしか身に纏っていない後ろ姿が、なんだか妙に生々しい。
鍛えられた背筋が綺麗で、大きな背中にはシミひとつなかった。


昨夜の行為を思い出させられ、息を呑みそうになる。ドキッとした心臓をごまかすために、慌てて彼の背中から目を逸らした。


バスルームに行った樹くんが、すぐに戻ってくる。手に持っていたバスローブが、ベッドに置かれた。


「バスローブがあったから、ひとまず羽織ってて。十五分で戻ってくるから、そしたら芽衣もシャワーを浴びるといいよ。そのまま出るのは抵抗があるだろうし」

「う、うん……」


樹くんが再度バスルームに消えた途端、私も自分の服を拾う。
ビジネスホテルの一室には、昨日着ていたニットワンピースとワインのような色の下着が散乱していた。


(下着は上下セットでよかった……! しかも、買ったばかりの可愛いやつだし! って、そうじゃなくて!)


思考が整理できないまま、わけのわからないことばかりが脳内でグルグル回る。
ブラを引っ掴んだあとで胸元や太ももに赤い痕があることに気づき、動揺して手に持っていたものを離してしまった。