飲みすぎ。
久しぶりの再会。
そして、ふたりきりの楽しい時間。


理由はたくさんあって、けれどどれも核心的なものじゃない気がした。


(えっと……これ、どうすればいいの?)


酔って幼なじみと寝たなんて、どこかの漫画やドラマじゃあるまいし……と思う。
とはいえ、これが現実である以上、私はこのあとの自分の振る舞いに頭を悩ませるしかなかった。


ふと、樹くんの瞼が開く。
寝ぼけ眼でも精悍さのある顔が、眩しそうにしかめられる。


直後、私の存在に気づいて目を見開いた彼は、思考が停止したように固まった。


まだ冷静になれていない私からも、言葉なんて出てこない。気の効いたセリフどころか、『おはよう』すら紡げそうになかった。


「えっ……。……ああ、そうか」


程なくして、樹くんがひとりごちる。
どうやら、数分前の私と同じように昨夜のことを思い出したらしく、みるみるうちに彼の表情に気まずさが浮かんだ。


「とりあえず、なんか着て」


そう言われて、シーツから覗く自分の肩が無防備だということを思い出す。今さらとはいえ、この状況で体をさらす度胸はなかった。