極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない

駅から程近い場所にある居酒屋はチェーン店だけれど、個室があって味はいい。
地元で友人たちと会うときはここに来る確率が結構高くて、それを話すと樹くんも「俺もだよ」と頷いていた。


「でも、本当に久しぶりだよな」

「聡くんとはたまに顔を合わせてたけど、樹くんとは聡くんの結婚式以来だもんね。二年以上ぶり……かな?」

「そうだな。俺も、真衣とはわりと顔を合わせてたんだけど」

「真衣は近所に住んでるし、頻繁に実家に出入りしてるからね。私は仕事がシフト制だし、片道一時間半以上かかるから、帰ってくるのがちょっと億劫で」


実家から足が遠のきがちな一番の理由は、母に小言を言われるから。けれど、それはあえて口にしなかった。


「そうだよな。俺も結構時間かかるし、年末年始とかゴールデンウィークは絶対に仕事だから、まず一般的な帰省の時期に帰ってくることはないよ」

「パイロットだもんね。そういうときは繁忙期なんでしょ?」

「ああ。搭乗率はほぼ一〇〇パーセントだし、オフだとしてもだいたいはフライト先の海外にいるな。日本にいるときは、国内線のフライトが二本くらいは入ってる」


彼は苦笑しながらも、楽しそうでもあった。本当に仕事が好きなんだとわかる笑顔は、なんだか眩しかった。