極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない

確かに、昔から両親たちは深夜まで飲んでいることも多い。
そんなときに私たちの面倒を見てくれるのは、決まって樹くんだった。


「みんな大人だし、適当にやるよ」

「それもそっか。おばさんたちに挨拶してこなかったのは申し訳ないけど、このまま帰ろうかな」


ひとりごちるように言えば、彼が一瞬だけ微妙な顔をした。


「……明日は仕事なのか?」


その理由がわからないままに「休みだけど」と答えれば、柔和な笑顔を返される。


「それなら、ふたりで飲まないか? せっかく久しぶりに会えたんだし」


さっきよりももっと予想外だったけれど、素直に嬉しかった。樹くんとは滅多に会えないし、彼から誘ってもらえるなんて思いもしなかったから。


「うん」


笑顔で頷き、承諾する。
その後、私は真衣に、樹くんは聡くんにメッセージを入れ、目的地をコンビニから駅前に変更した。