おかげで、余計な誤解を生んでしまった。
俺としては、結婚生活を送りながら、少しずつでも彼女に振り向いてもらえるように努力するつもりだった。


ところが、そう上手くいかなかった。


同居生活は心地好く、それは芽衣も同じだったはず。彼女がタイミングよく羽田に異動になったのも、俺への追い風に思えたほど。


しかし、芽衣の同級生だという航空整備士の鈴木さんは、明らかに彼女を狙っている様子だった。
さらには、馬場園が芽衣に余計なことを言ったりもしていたようだ。


芽衣の逃げ道のために……と、俺が『契約結婚』や『好きな人ができたら離婚すればいい』なんて言ったこともあいまって、結果的に彼女を傷つけてしまった。


どう考えても、俺が悪い。
こういうことが起こる可能性は予想できたはずだったにもかかわらず、鈴木さんと親しげにしている芽衣の姿を見た瞬間、嫉妬で気が狂いそうだった。


あのときは、余裕なんて微塵もなかった。
一刻も早く指輪を買って、彼女は自分のものだと主張したかった。