極上パイロットは偽り妻への恋情を隠さない

聞けば、近所に住む香坂さんが来るのだという。
なんでも、次男の聡(さとし)くんが帰ってきていて、急遽決まったらしい。彼の奥さんと息子は、奥さんの実家に帰っているのだとか。


聡くんの一家と真衣たちは仲がよく、家族ぐるみで付き合っている。
香坂家の子どもたちとは幼なじみとして育ってきたし、私だって今でもおじさんとおばさんとはそれなりに親しくさせてもらっている。


けれど、今夜一緒に食事を摂ることになるとは思いもしなかった。


（ますます肩身が狭くなるんじゃ……）


私よりも二歳年上の聡くんは、真衣と同時期に結婚し、それぞれの子どもたちが同い年。ということは、独身者は私ひとりになる。


母の小言が繰り出されるのが安易に想像できてしまい、思わず項垂れたくなったけれど……。そんな暇もなくインターホンが鳴り響き、香坂家の来訪を告げた。


ぞろぞろと馴染みの顔が見え、お互いに「こんばんは」と挨拶を交わす。おじさんとおばさんとは年始にも会ったけれど、聡くんと顔を合わせるのは久しぶりだった。