「真白、どうかした? まだ不安?」


いつの間にか、旺志さんに顔を覗き込まれていた。私は微笑み、首を横に振る。


「ううん。旺志さんと出会ったときのことを思い出してたの」

「そうか」

「パーティーで旺志さんと過ごした時間も覚えてるけど、会社の前にいた旺志さんを見たときのことはもっと鮮明に覚えてるよ」

「真白は声も出ないほど驚いてたな」

「当たり前だよ。だって、神室の皇帝が会社の前にいたんだよ? もう二度と関わることなんてないと思ってたんだもん」


ふふっと笑う私に、旺志さんが瞳をたわませる。


「真白のことが頭から離れなくて、どうしても会いたかったんだ」


いつだったか、彼は電話口の兄に『真白』と呼ばれていたことを手掛かりに、私のことを探し出した――と話していた。
そんなことができるのも、きっと神室の力だろう。


経緯を知ったときには驚きと戸惑いに包まれたけれど、今は旺志さんが私を見つけてくれてよかったと思う。
そのおかげで、こうして彼と一緒にいられるのだから。