恐る恐る振り返った私の視界に飛び込んできたのは、美しい寝顔。ハッと息を呑むほどの艶麗さなのに、その顔は以前よりもずっと疲れているように見える。


「やつれたね……」


再会した直後から感じていたことを呟けば、余計に胸が苦しくなった。


彼はいつも無理をする人だった。
家のために、会社のために、と自分を犠牲にしてばかりだった。


だから、私と過ごすときには少しでも安らいでほしくて、旺志さんが気を抜いたように笑ってくれたり眠ってくれたりすると嬉しかった。


もう遥か遠い昔の事のように思える記憶に、どうしようもなく切なくなったとき。

「真白……」

夢の中にいるはずの彼が、私の名前を紡いだ。


「っ……」


刹那、ずっとずっとこらえていた涙が溢れ出す。
それはとどめる暇もなく零れ、瞬く間に枕やシーツを濡らしていった。


「ごめんなさい……」


再会してから言えなかった言葉が、静まり返った寝室に響く。


「傷つけて、ごめんなさい……。でも、もう……もとには戻れないの」


どれだけ謝罪をしても許されないとわかっているけれど、私の手を握っている旺志さんの温もりが涙を止めさせてくれなかった――。