大樹が“神獣”に姿を変えて、“ショウちゃんのペット”になった?

何が、どうなってそーなっちゃったの!?

本当、意味分かんない展開なんですけどーーー!

ミキの脳内は、大混乱で様子のおかしいミキを陽毬が心配そうに見ていた。


「…あ、ひーちゃん大丈夫だよー。
今ね、桔梗から緊急の連絡きてビックリしてるとこ。後で、ひーちゃんにも教えるねー。だから、ちょっと話終わるまで待ってて?」

ニッと笑顔を見せて陽毬の手を握った。陽毬はミキの邪魔をしないようにだろう。何も言わず、ミキの言葉に深くうなづいて見せた。

その心遣いに、ミキはキュッとしつつ


「早く、この大魔王との話を終わらせるからね。待っててね、ひーちゃん。」

と、陽毬に声を掛けてから、桔梗との会話に戻った。


『…クソッタレがっ!誰が、大魔王だよ。テメー、ありとあらゆる拷問の末に神経繋げたままミキサーに掛けて、最後は跡形もなく消し去ってやろうか?』


……ゾ……

その発想が既に大魔王なんだよ!と、思い、またも桔梗に悪態をつかれ

ようやく、本題へと戻った。


『ミキと陽毬が会場を去ってから、急展開があった。』

『それは豪乱とシープに会場であった出来事を酷い話は詳しく説明せず、濁しながらザックリとショウに報告してた最中な。』

『大樹が自業自得で、精神崩壊寸前まで追い詰められている事を医師の免許を持ってる俺様が気付いて、何気なしについポロッと言ってしまった。
それが、俺様の最大のミスだった。』

と、桔梗が説明して、何となく内容が掴めてきた。

今回起こるであろう事態は
桔梗含めショウのパパ、ママ達は
ショウには悪影響だと判断して

一切他の雑音が聞こえないよう

豪乱とシープの報告のみ、ショウの耳に聞こえるようにしていたのだろう。

だが、桔梗の事だ。

会場の中に居るみんなの様子を高見の見物のごとく、じっくりと観察して

ショウに伏せるべき内容や話してもいい内容など即座に判断して、豪乱やシープに指示を出していた可能性がある。

だから、誰よりも事細かに会場であった出来事を把握できているのだろう。
しかも、それくらいだから会場にいた人達全員の脳内も覗いる可能性が高い。

会場にいつ誰かが、どういった経緯で桔梗達と関わるかも分からない。
だから、知れるだけその人の内面や情報を把握しておこうと考えたかもしれない。


『そしたら、

“どうすれば大樹くんを助けられるの?大樹くんを助けたい!”

って、大泣きしちゃったんだよ。
…もう、ショウがあまりに可哀想で見てられなくてさ。ショウに言っちゃったわけ。

“大樹の心を癒してゆっくり休めてあげると治るから大丈夫”

ってね。

そしたら、

“どうすれば大樹くんの心を癒して休ませてあげられるの?”

って、必死に俺に聞くの。可愛くて、キュンキュンが止まらなかったよね。」


…あ、すこぶるどうでもいい話も入ってきた。

桔梗はちょいちょい、ショウの惚気話を挟んでくるのでミキは少しシラけつつ我慢して桔梗の話を聞いた。

ここで、下手に口を挟めば気分屋の桔梗はもう、この話について話してくれなくなるだろう。

赤ん坊の頃からの長い付き合いで(逆行してるから、赤ん坊の時の記憶もしっかりある)、ミキはその事をよぉ〜く知っている。


『そこで、豪乱に聞かせたわけ。

“大樹は、これからどうしたい?”

って。

そしたら、奴はなんて言ったと思う?


“人と関わるのが怖い。いっそのこと…ショウちゃんのペットになって癒されたいかな?”

って、冗談を装って本気の気持ちを言ったんだ。

それを知ったショウが、

“じゃあ大樹君の心が癒えるまで私のペットになるんだね!
大樹君が元気になってくれるならいいよ。私ね、可愛いペットが欲しかったの!”

なんて、目をキラキラさせて言うからさ。もう、仕方なかったよね。
俺は嫌だし大反対だよ?だけど、ショウに可愛くおねだりされたら断れないじゃん!受け入れるしかないじゃん!』


と、騒ぎ立てる桔梗に、ミキは遠い目をした。

あ〜。だから、あまりにムシャクシャして、オレに愚痴りにテレパシー使ってきたのね、と。


『…あれ?そしたらさぁ。大樹君が消えたって、家や学校で問題になるんじゃないの?』

ミキは、それって激ヤバじゃん!と、桔梗に聞くと


『…は?大樹が望んでショウが受け入れた。だから、

“鷹司家の大樹は最初から存在しない事にした”


だから、いくら大樹が鷹司家に戻りたい、人間に戻りたいって訴えても無駄。

なにせ、性別を無くして、自分の家族や友達、地位まで今まで自分が積み重ねてきたものさえも全て捨てて

“ショウのペット”になる事を選んだんだからさ。

アイツは、もうショウのペットで…クソッ!今もショウとイチャイチャしやがって、マジでムカつく!!!最悪だ!!』


と、ここでミキは、大樹が既に会場に居ない事を知った。


…うわぁ〜…

桔梗、めちゃくちゃご機嫌斜めじゃん。

…怖ぁ〜。

家に帰ったら、桔梗の愚痴が止まらないんだろうなぁ〜。

…うわぁ〜、家帰りたくないなぁ〜。


けど、大樹は本当にこれで良かったのかな?後悔しないの?

性別を無くして、もはや人間の姿ではないんだよね?恋愛もできないって事じゃん。

大樹があんなに好きだったエッチもできないんだよ?

…オレだったら、ムリなんですけどぉ〜。

オレより絶対、エッチが好きな大樹には耐えられないんじゃない?

絶対、ムリあるって。


なんて考えるミキに


『…あ〜、それは俺様も無理だわ。
ショウとエッチできないとか拷問過ぎるだろ!

…けど、ショウに心底嫌われて、人の姿を見るのさえ嫌だ。エッチなんて生理的に無理だって本気で思われたら

俺様も迷いなく、性別無くしてショウ好みの可愛い神獣にでもなって“ショウの最愛の奴隷”になる事を選ぶわ。』


桔梗はぶっ飛んだ話をしてきて、ミキは桔梗のショウへの底なし沼のような愛と何をしてでも離れない執着を感じ身震いしてしまった。


しかし、そうなれば大樹の神獣の姿が気になる。一体、どんな姿をしているのだろう?

一般動物や妖魔や魔獣なら実物を見た事もあるし、ここら辺に生息してなくたってテレビや動画などで画面越しになら見た事はあるし知っている。

妖魔や魔獣は、身近にいる危険生物なので主な生息地や特徴など授業にも取り入れられている。

…だけど、“神獣”?

桔梗の話だと、大樹の能力や力容姿の特徴は出てしまうが

基本的に、ショウが想像する可愛い動物に模した形に大樹の体を創った

魔道こそ桔梗が発動させてはいるが

ショウが手掛けているので、大樹が新たに生まれ変わる種族は“神獣”と分類される。


なんて、信じられない事を言っていた。

それにショウのペットになるんだから、主人を守る為に強くなってもらわなければ困る。

だから膨大な力と能力を受け入れる為の体に創り直したから

それに見合うだけの力や能力を身に付ける為に、毎日死ぬほどの修行漬けになるとかも言っていた。


…うわぁ〜…

誰に稽古つけてもらうんだろ?

桔梗君が、死ぬほどの修行漬けって言うくらいだから半端ないよねぇ〜。

屈強な心を持ってる人でも逃げだしてしまうような修行なんだろうなと、ミキは容易に想像できてしまい思わず身震いしてしまった。


…しかしながら…

神獣というからに、全く想像ができない。


『…あー!クソッ!本物のペットができちまったら、ショウと“ペットごっこ”ができなくなっちまうだろーが!
あの遊び…結構気に入ってたのに…最悪だ。』


…………。

あ〜、確かショウちゃんと桔梗君は

“ごっこ遊び”

で、テーマ決めて本気でなりきる遊びするのが大好きなんだよね〜。


ショウちゃんの一番のお気に入りは
“探偵ごっこ”(これで、大樹の裏の顔がバレた。…だから、他にも色んな人達の色々を知ってる事が多い。)

次にお気に入りが
“トレジャーハンターごっこ”

色んな国の山や遺跡、廃城、海の中の遺跡や沈没船などから、お宝を探し出すのだ。(…だが、財宝と宝石に引き寄せられるショウの特異体質と、不可能などないであろう桔梗様がいるので、本当に財宝やお宝を見つけてくる。
なので、宝来家にはその為のお宝倉庫がある。

財宝やお宝でも、呪物や聖なる物や邪悪な物の類は危険なので、桔梗が作った特別製の異空間倉庫に厳重に保管してある。)


で、ぶっ飛んでいて、“もはや、ごっこ遊びではない”気がするが…

二人がめちゃくちゃ楽しそうなので良しとしよう。

それに、ショウの提案した“ごっこ遊び”には

ミキや陽毬、風雷、ハナも一緒に参加して遊べるのでかなり楽しい。

誘われた時は、めちゃくちゃテンション上がるくらいドキドキワクワクが止まらないくらい面白い。

自分達に住む星を飛び越えて別の星へと赴き、見た事も聞いた事のないようなお宝や…とんでもない物にまでお目に掛かる事も少なくない。

だが、さすがに別の星へと赴く時は…
何があるか予測不明だし、あまりに危険過ぎる。

それに普通の人間である陽毬を守り切れる自信がないので、その時ばかりはミキと陽毬は参加せず二人でラブラブオタクデートだ。


そして、自分達が絶対に誘われる事のない“ごっこ遊び”をするのが桔梗だ。

…何となく、察している人も多いだろうが敢えて説明しよう。


桔梗の断トツ一番のお気に入りが
“傲慢で我が儘な女王様と女王様の性奴隷”

…なんて、モロ自分の欲望出しまくりの“ごっこ遊び”…実際ヤッちゃってるから“ごっこ”って言っていいものやら。

…あ、もちろん女王様役はショウちゃんで、性奴隷役が桔梗ね。

オレが考えるに、アレのプレイの一種に分類される気がするけど…。

ちなみに、ショウちゃんは“このごっこ遊び”は苦手みたい。

けど、最初こそ嫌がるけど、だんだん役になりきってくると最終的にはショウちゃんも楽しむ事ができてるみたいだからいいんだけど。

“そのごっこ遊び”が終わってからのショウちゃんの凹みも半端ないらしくて

それを慰めてあげるのも、可哀想可愛くてキュンキュンが止まらなくて、依存性のある麻薬のようで堪らないとか身震いするような事も言ってたよね〜。

そんなドのつくヘンタイ桔梗君に好かれちゃったショウちゃん…ご気の毒さま〜って、感じぃ〜。



次に桔梗が好きな“ごっこ遊び”が



桔梗の場合、どうしてもエッチが絡む“ごっこ遊び”をやりたいみたい。

…そこの部分は、オレも分かるかも。

けど、配役がね。桔梗君はかなり癖が強い役がお好みみたいで…その話を聞かされて(桔梗の惚気の一部)その内容にドン引きしちゃうよね。


桔梗が物凄くストレス抱えてて、ものすご〜くショウちゃんに甘えたい時

“ペットごっこ”

して、ショウちゃん希望の可愛いペットに変身していっぱいいっぱいショウちゃんに甘える時があるらしいけど。
…結局最終的には桔梗君のムラムラの限界がきてエッチにもつれ込むみたい。

大樹がショウちゃんの本物のペットになる事で、桔梗君がショウちゃんに存分に甘えられる“ペットごっこ”ができなくかつかもしれんという事に危機感を感じて喚いてるけど…


ショウちゃんの“ごっこ遊び”と、桔梗君の“ごっこ遊び”…意図が全然違うんだよねぇ〜。

ショウちゃんは純粋に遊んでるつもりでも、桔梗君は“アレのプレイの一環”“盛り上がり素材”にしちゃってるからなぁ〜。


…けど、どうしてかな?

“不倫・浮気ごっこ”や、“寝取られごっこ”の類の“ごっこ遊び”をやった話聞かないよね。

ごっこ遊びどころか、何に対してもエッチを盛り込むのが大好きな桔梗にとって、普段は絶対にない背徳感や罪悪感でかなり興奮して盛り上がりそうだけど。

前に何回か、そんな疑問を桔梗に投げ掛けたら物凄い顔でドン引きされちゃったよねぇ〜。

その質問する度に桔梗はオレに


“…え?マジで言ってんの?
お前、そんなクソカス・クソゲスな事したい願望あるの?…キモ!”

“例え、“ごっこ遊び”であっても、マジであり得ねーんだけど!”

“俺なら耐えられねー。胸糞ワリーだけで、楽しめねーよ。”


なんて、すこぶる気持ち悪そうに答えてきたっけ。

たかだか、”ごっこ遊び”であって、本当にそんな事する訳じゃないのにさぁ〜。

“ごっこ遊び”は、“実際にはできない事もできる”ってのも醍醐味じゃない?


恋人同士なんだし、“ごっこ遊び”なんだから何も悪い事なんてしてないんだし。

その役になりきって、ドラマさながら楽しむのが楽しいんじゃないの?


…とは、思うんだけど


“性奴隷”とか、

“種族の違いから、引き剥がされる恋。だけど、みんなの目を盗んで相引きして激しく愛を求める恋人”とか、

“年の離れた夫婦の奥さんが、介護が必要なくらいに動けなくなってそれを甲斐甲斐しく介護する旦那さんごっこ(もちろん、事あるごとにエッチする)とか、

“犯罪組織の幹部が組織から逃げ出して大怪我をして、それを偶然見つけた心優しい女性が介抱して激しく愛し合うも幹部は組織に命を狙われていて…”とか


こういう風な、スリリングで背徳ある設定は好むくせにね。


…まあ、いいけど。


どうも、桔梗君はショウちゃんに支配されたい願望が強くあるっぽいよねぇ〜。

支配とか束縛とかショウちゃんには、ハードルが高すぎて無理だろうなぁ。それやっちゃうとショウちゃん、逆にストレス抱えそう。

だから、その欲を満たす為に桔梗の“ごっこ遊び”は、そんな類にばかり偏っちゃうんだろうけど。


ショウちゃんの気持ち考えると複雑な気持ちぃ〜。

あんなド変態のエロエロ大魔神(ショウちゃん限定)が、恋人で気の毒かも。

桔梗君はショウちゃん限定で、常にムラムラ・悶々するくらい性欲が強いもんなぁ。


オレも人の事言えないけど。

だけど、ひーちゃんの事大事にしたい、傷つけたくないって考えたら手なんて出せなくて

…まだ、ほっぺにチューくらいしかできないもんね。

ひーちゃんの事、怖がらせたり嫌がられたりしたら立ち直る自信ないもぉ〜ん!

でも、ひーちゃんとオレの子供できたら可愛いんだろうなぁ。

早く、ひーちゃんと結婚して子供欲しいなぁ〜。


なんて、考えてると



『…あ!いい事思いついた!』

桔梗の軽い声が聞こえてきて、ミキは少し嫌な予感がした。

『“家族ごっこ”すればいいんだ!
もちろん、俺様とショウはラブラボな夫婦で、その子供が大樹な?』


…ゾ…


…え?

マジで嫌な予感しかないんだけど…



「で、子供の目を盗んで、可愛い奥さんにエッチなイタズラをする!そして、子供を寝かし付けた後は……うん!この設定、最高じゃない?
あはっ!なんだか、凄く楽しくなってきちゃった。
って、事で伝える事は伝えたからな?」


…ゾワワッ!


やっぱりーーー!!!?

桔梗君が考える事っていったら、そっちいっちゃうよねー。

…ショウちゃんも、それに巻き込まれる大樹もご気の毒様。

…うわぁ〜。


桔梗は言いたいだけ言って会話を強制終了しやがった。

いつもの事ながら身勝手な桔梗に少し腹を立てながらも、ミキは桔梗との会話を嘘のないように理解できないであろう所は少々話を作り陽毬に説明した。


「ショウちゃん、“ペット”を家族に迎えいれたのですな。
けど、桔梗君はそれに不満があって、テレパシーでミキ君に愚痴を言っていたと…。よっぽど、そのペットが気に入らないのですな。
差し詰め、ショウちゃんがペットを可愛がるのでペットに嫉妬しているのでしょうな。…あの桔梗君ですからな。」

と、苦笑いする陽毬に

「あの桔梗君だもーん。」

ミキも同じく苦笑いで返すと、これから桔梗に嫉妬の目を向けられ続けるであろう不憫なショウのペットを思い

ミキと陽毬は深いため息を吐くのだった。


そして、十分に休憩した所で二人は会場に戻った。

理由はもちろん!残り時間、二人で社交界を楽しむ為にだ。