クズとブスの恋愛事情。

まさか、自分達の知らぬ所で復讐の鬼と化した桔梗が、ミキとアンジェラを狙っているとも知らず

今回の夏休み合宿でも、仲のいい夫婦かのような仲のいい二人の姿があり結は複雑な気持ちで二人を見ていた。


…あれで、付き合ってないんだからなぁ〜

アンジェラさんには彼氏もいるのに、彼氏さんは二人の関係をどんな風に受け止めて見てるんだろ?

自分が、どっちかの恋人だったと考えたら

いくら、二人がありえないと笑って

“大親友で異性として見てない、恋愛対象じゃない”

なんて言われても、無理だわぁ〜


目の前で、自分の恋人がイチャイチャしてたら嫌だし、何より二人はちゃっかり体の関係持っちゃってるよね

二人の恋人目線で考えると……無理無理!どう考えたって私は無理だし、見てて不快感しかないし寒気がするよ

結は二人のバグりまくっている距離感に不信感しか湧かなかった。

と、そこに


「……だよなぁ〜。アイツら、クソむかつくよな。絶対に許さないからな…」

いつの間にか自分の横に立っている見知らぬ男子生徒が三人いた。驚き過ぎて、悲鳴をあげてしまいそうな結の口は何か目に見えないもので塞がれ悲鳴をあげる事は阻止されたのだった。

「…いやぁ〜…、メールで聞いた話と実際に目にするでは全然違いますな。」

なんて、馴染みのある口調の男子生徒。

「………マジかよ………」

「…ないわぁ〜」

と、絶句する男子生徒ニ人。

どの男子生徒達も、だいたい中学生くらいの年齢で極々普通の目立たない容姿をしている。


「あ、結以外みんな、オレ様達は結と同じ中学校から結と同じく合宿に参加してるって洗脳しといたから安心しろよ。結と同じくらいから、たまにトレーニングにも参加してるって設定だから。
ちなみに、俺の名前はロクドウって名前にしといた。」


…あ、あれ?

そんな、もの凄い事できるってかなり限られるんだけど…

風雷くんは、こんな事しなさそうだし…

って、事は残りの三人は

ショウちゃんとフジちゃん、陽毬ちゃんかな!?


と、結が名探偵さながら推測すると


『惜しいな。けど、結構いい線いってるぜ?』

なんて、超絶上から目線でロクドウ…おそらく桔梗がドヤ顔で答えると


…ビクゥーーーッッッ!!!?


いきなり、自分の脳内に桔梗の声が響いてビックリし過ぎて体ごと飛び跳ねてしまった。悲鳴は桔梗の魔道で強制的に止められたが。


『オレ様の隣にいる、角刈りのちょい色黒な中学生一年生は陽毬だ。コードネームは、ナラクって名前。
その隣にいる丸ボーズの中学生はアンジェラの婚約者のクリシュナ。セイント・ローズ学院高校に通う高校一年生だそうだ。ミキの大親友ってセフレより一つ年上だな。コードネームは、ニヴルで中学一年生って設定。』


…えぇ!!!

アンジェラさんの婚約者ぁ〜〜〜!!?

じゃあ、もう一人は?

と、考える結に


『もう一人の、五分刈りの眼鏡はエバン。ミキのセフレに婚約者がいる事なんて知らずに恋人になって一年の、ミキ達と同学年で一般中学生。
コードネームは、ヘムで中学一年生って設定な?』


ま、まさかの恋人ぉ〜〜〜!!?

って!婚約者がいる事を知らないでアンジェラさんと一年も交際してるって……ええっ???

情報量が多すぎて、脳内パニックを起こしてる結に桔梗は更なる情報を与える。


『クリシュナは、幼い頃から親同士が決めた政略的なものであったが、ミキのセフレと触れ合っていくうちに奴の人となりに惹かれ好きになった。
そして、随分と奴に尽くしてきたしお互いに良好だと思っていたらしい。

だが、ミキのセフレは別に好きな男がいて、婚約者には悪いがどうしても好きな気持ちが抑えきれずさりげなくを装ってアプローチして、ゆっくり時間をかけてエバンと恋人になる事に成功。二人は別々の学校ながら、出来る限り時間を合わせて愛を育んでたってさ。』


…えぇ〜〜〜!!?

色々複雑だけど、色々とダメな気がする

婚約者にも恋人にも、まず相談しなきゃだろ?

二人に内緒で、同時にお付き合いって…いやぁ〜…難しい話ではあるけど不誠実な気がするなぁ…

二人に対して、酷い事してる気がするのは私だけか?


と、恋愛に疎い結は、複雑な恋愛事情にう〜ん、う〜ん唸っていた。


『あと、みんなの設定としては
毎回、トレーニングについていけなくて同い年って事もありゲロ仲間で仲良くなった設定な?』


…これ、絶対に勝手に私の脳内覗いたね!

覗くにしても一言言ってくれよ!

と、これには結は、ちょっと嫌な気持ちになった。プライバシーもへったくれもないじゃないかと。


『ちなみに、優秀な教官もいるからな。勘の鋭い奴とか。念には念を重ねて、容姿や声だけじゃなくて言葉遣いもどっかの方言に変換して言うようになってるから標準語を使ってもイントネーションが違うからバレにくいと思う。
更に俺の知り合いを何人か使って、オレ様含めてみんなの“気や波動、魔力”も全然別のものに変えたからバレねーだろ。あと、コイツらの体と精神の関係でタイムリミットは今日一日って所だな。オレ様が、コイツらに力を与え続けた状態でだ。』


と、何を企んでいるのか分からないが、ここにショウの姿はなく桔梗の機嫌がとんでもなく悪い事も何か関係ありそうだと思い、ショウの事は触れないでおこうと思った結である。


二人の様子を見ていると、それぞれ同性の友達とつるんだりして離れる事もあるが、やっぱりそれでも二人が一緒の時間は多い

そして、二人はその容姿と性格の良さからモテモテである。

それはいいとしてだ。あり得ないだろというような言動がよく目立っている。

あからさまにミキ狙いの女の子がミキと楽しそうにお喋りしてると、それを見計らったかのようにさりげなくを装ってミキの側にくるアンジェラ。

そして、ミキを好きであろう女の子の前で、ミキにベッタリとくっ付き

「…あ!いつもの癖で!本当に気にしないで?
私達、そんなんじゃないから!男女関係ない悪友とでも言うのかな?ただの友達のノリだから!」

そう言って、女の子に自分とミキは恋愛関係じゃないと説明してから、女の子の側に寄って

「ミキの事好きなの?ミキの事なら何でも知ってるから、知りたい事があったらいつでも私に聞いてね?
ミキで答えられない事ないくらいの腐れ縁だからさ!
応援してるね!」

なんて、コソコソと耳打ちしてウインクして去って行った。

一見、良い人そうに見えなくもないが…よくよく考えたら、ミキを好きな女の子にとったら

ミキの事なら知らない事はない。ミキの事なら何でも知ってるアピール…牽制に思えて仕方ないだろう。ミキを好きな人にとっては不愉快も過ぎる行動だ。

アンジェラの女の子にしか聞こえないようなヒソヒソ話も、結や陽毬、クリシュナ、エバンの脳内には、女の子に耳打ちするアンジェラの顔のドアップとデカデカと声も響いてきた。

その、細やかな表情の変化や言葉の内容に、みんなドン引きしている。


……え?

ミキくんとアンジェラって恋人なの?

恋人でもないのに、何でこんな牽制めいた嫌味ったらしい事してるの?無自覚?

無自覚で、これはかなり常識はずれもいい所だし思いやりの欠片もない気がする

もし、故意的にそんな言動してるってなら、かなりヤバイ女じゃん…

だが、アンジェラに寄って来る男の子達にミキは何をする訳でもなかったが、どうしても困ってる!助けてといった風にアンジェラがミキに目で訴えると、さりげなくアンジェラと男の子の間に入ってアンジェラを助けていた。

そして、昼休み時間に入りメールや電話も許される時間。

すかさずアンジェラは、エバンにメールを送っていた。


[エバン、どうしてこの間は会ってくれなかったの?]

それに対してエバンは、深いため息を吐きながら

「…うち、貧乏で学校も奨学金制で成績落とされないし、学校の講習やボランティア活動にも積極的に参加しないと学校に通えなくなるんだ。
アンジェラにもその説明はしてるし、その日はどうして外せない講習があるからって説明しても毎回こんなメールばっか届くんだよ。」

と、説明して、会えなかった事情をしっかりと書き込んでアンジェラに謝罪していた。いつもなら、謝罪のあと次のデートの約束を必ずしていたが、今回はとてもではないがそんな軽率な言葉は言えなかった。

すると、直ぐに返信がきて


[いつもならデートの約束してくれるのに、どうしてデートの約束してくれないの?酷くない?]

そんな内容がきたので、渋々に今回学校の講習が続いてるから会える日が分かったら教えるとだけ返事を返した。

それからも怒りのメールがたくさん送られてきたが、それをエバンは無視した。

なのに、エバンに連絡はくるのにクリシュナに一切の連絡がこない事に、みんな気の毒そうにクリシュナを見てしまった。クリシュナは都合悪そうに


「…いつも、誘いは僕の方からだけだったので…」

と、泣きそうになりながらもグッと耐え無理矢理笑みを浮かべ答えた。

それには、エバンはとんでもなく申し訳ない気持ちになり「知らなかったとはいえ…」と、何度も謝ったしクリシュナも「あなたが謝る必要なんて全然ないですよ!むしろ、あなたは被害者だ。」そんな風に言ってくれた。

二人とも、とてもいい人達であった。
…二人とも、自分の婚約者、恋人のこんな本性を目の当たりにしてショックを受け傷つき自分の事を考えるだけで精一杯だろうに。

なんとも言えないドンヨリした雰囲気になり、みんな何とも言えない微妙な空気の中アンジェラに動きがあった。

アンジェラは、すぐさまにアプリ携帯を弄ると直ぐにミキのアプリ携帯に反応がありミキはそれを読むと何処かへと消えて行った。もちろん、アンジェラもだ。

みんなの脳内に、二人が相引きする秘密の場所が映し出され鮮明に二人の様子が見えた。

二人は誰にも見つかってない事を入念に確かめて、近くに誰も居ない事が確認できると


アンジェラはウルウルと涙を滲ませ、涙を流すまいと必死に堪え声にならない声で


「…もう、エバンとはダメかもしれない…。
…また、会えないって言われちゃった…エバン、ミキほどじゃないけどモテるからさ。
…きっと、私のこと…飽き……ウッ…ウゥ〜〜…!!」

我慢しても堪えきれなかった涙が、幾つも溢れこぼれ落ちていく。

そんな気丈な姿のアンジェラをミキは力強く抱きしめ、そんなミキにすがるように声を押し殺してミキの胸の中でアンジェラはたくさんたくさん泣いた。

そして、自然な流れでいい雰囲気になった二人はキスをして、それは次第にどんどん深くなりディープなキスに変わりしばらくの間二人は情熱的なキスをしていた。

それから二人は、しばらく抱き締め合い次の訓練ギリギリまでその場に居たのだった。

それから、二人は目だけで通じ合えるのだろう。少しお互いに目を合わせてアンジェラは小さくうなづいた。

そして、二人別々の方向に向かって歩き始めようと一歩ミキが足を進めたところで、名残惜しかったのかアンジェラは後ろを振り返りミキに駆け寄ると勢いよくミキの逞ましい背中に飛び付き

ミキは何も言わずに、それを受け入れて大丈夫だよと言ってるかのように自分の腰に手を回してきたアンジェラの手を優しくポンポンと叩くと

顔だけ振り返り、少し困った表情で優しく笑い掛けた。
そこで、ようやく二人は密会していた事がバレないように別々の場所から時間もズラして訓練場に向かったのだった。


その様子を見ていた陽毬は

「…いやはや。いつも元気いっぱい、オッチャラケてばかりのお調子者だとばかり思ってたけど。アンジェラさんの前では頼れる男ってかんじだな。
このギャップに落ちる女子は数知れないだろよ。」

陽毬の口調とは違う為、結と桔梗は違和感ありありで陽毬の言葉を聞いていたが。

ミキに惹かれはじめていた陽毬は、おそらくよっぽどのショックを受けたに違いない。

『アイツらは、夜中の1時に準備室で密会するみたいだぜ?それまでに、みんなこれからの事をしっかり考えるんだな。』

桔梗はそう言って、普通にトレーニングに参加していた。もちろん、幻術を使ってるので周りには桔梗や陽毬達はヘロヘロでみんなについていけなくて途中ゲロしたりのしんどそうな姿にしか見えていない。

実際は、桔梗は余裕でトップに負けじ劣らずのトレーニングできてたし、陽毬達はみんなの邪魔にならない場所で見学していた。


…桔梗って、魔道だけじゃないのかよ!

と、ゲロを吐きながら結は、同い年なのに何でこうも違うのかと泣きたい気持ちになっていた。

そして、ついに

その時がやってきた。

事前に準備室に忍び込み、桔梗の魔道で透明人間になって待ち構える面々。

そうとも、つゆ知らず

周りを警戒しながら入ってくるミキとアンジェラ。

そして、準備室のドアを閉めるなり二人は、お互いに服を脱がせ合いながら器用にお互いの体を求め合っていた。アンジェラは激しく強く求めるように、ミキは情熱的かつ優しく丁寧で。

この様子を見るととてもではないが二人の間に立ち入れる気はしなかったし、こんなにも互いの体を知り尽くし絡み合う二人の姿を見て

アンジェラの婚約者も恋人も、ミキのようにアンジェラの体を満足させてあげる自信はないと感じた。
そもそも恋人や婚約者のいる身でありながら大親友であろうが、他の人に体を許してしまうアンジェラの未来までも予測がついてしまい

アンジェラの婚約者と恋人のアンジェラへの気持ちは冷め愛想が尽きてしまった。

きっと、結婚して子どもができようと

寂しい、辛いなど負の感情が出る度に、大親友のミキに抱いてもらうのだろう。

もし、その事を問い詰めたとしても、自分は悪くないと自分の言い分を主張し自分の考えを正当化するのだろう。

とても頭はキレるし、気の強い彼女は婚約者や恋人の話に耳を傾けてくれる事はなく自分ばかり主張して平行線になるばかりになるだろう。

もしかしたら、ミキ以外にもそんな相手がいるのかもしれない。

と、合宿での二人の行動や今までのアンジェラの言動を思い出し、あーでもない、こーでもないとクリシュナとエバンはアンジェラの事を桔梗のテレパシーを使って脳内で会話をして、アンジェラに対しそう判断した。

もう、クリシュナとエバンは、アンジェラに対し不信感しか感じなくなってしまった。

それに、そもそもクリシュナなんてクリシュナが8才の頃に当時7才だったアンジェラと婚約者になった。
だが、今まで一度もアンジェラと体の関係なんて持った事などなかったようだ。

触れ合うだけのキスさえした事がなく、手を繋いだのは二人で無邪気に遊んでいたアンジェラが8才になる頃までだ。

それ以降は、エスコートの時以外は手さえ繋いでもらえなかった。

そういう雰囲気になっても、アンジェラが何かしら上手い理由をつけて拒んでいたし

結婚する前に間違って赤ちゃんできたら大変だとか、結婚するまで私を大切にできる?

なんて、言われたら…


その話を聞いて、みんなクリシュナに哀れみの目を向けた。

婚約者にそんな事言っておきなら
恋人とは二週間も経たないうちにアンジェラの方からエバンを誘い、早い段階で男女の関係になったようだ。

アンジェラは、外を歩く時や甘える時によくエバンに体を密着させ指と指を絡ませる手を繋ぎたがった。

…しかし…大親友という名のセフレのミキとは、随分昔から体の関係があり、頻繁にお互いを求めあってるようにしか思えないくらいに、お互いの体を知り尽くしてるという事実にますますクリシュナが不憫過ぎるとみんな心が痛かった。

クリシュナ…本当に見た目は髭と腕や指毛が濃い(おそらく、胸毛やすね毛も濃いであろう)以外は、平凡そのもので気が弱くお人好しで無害そのものといった、本当に良い人そうなのに…

家の事情で好きでも好みでもない男と婚約、その内に他に好きな人ができてしまった。
将来的に、家の事情で勝手に婚約者を決められ、政略結婚しなければならない家の道具のように扱われるアンジェラも心が痛むくらいに可哀想だが。

それは、アンジェラだけでなくクリシュナだって同じなのである。それでも、クリシュナは目の前にいるアンジェラを拒む事などせず、アンジェラの良いところをたくさん探して仲良くなろうと努力し続けた。

【もちろん、アンジェラに好きな人ができたら自分に相談してほしい。たくさん話し合わなければならないし、嫌な思いも辛い思いもするかもしれないけど。
アンジェラにとって、いい方向に向かえるように一緒に考えよう。】

と、数ヶ月に一回はアンジェラにそんな話をしていたのだが…

その話を聞いて、みんなとても複雑な気持ちになったしエバンはこんないい人を裏切るような真似をするアンジェラに怒りさえわいた。

短い間でも分かるクリシュナの人となり。

そんな婚約者を裏切って、恋人を作りセフレまでいるアンジェラに呆れの声しか上がらない。


みんなで、冷めた目でミキとアンジェラの大人の大運動会を眺めながら、ミキやアンジェラとの今後についても話し合っている。

そんな中、長く情熱的な大人の大運動会も終わり二人はマットに寝そべりアンジェラはうつ向けになって、マットに肘を立て両手で顔を支えると足をプラプラさせてイタズラっぽく笑いながらミキに聞いてきた。


「ねえ〜?いいのー?好きな人居るんでしょ?
なのに、こんな事しちゃってぇ〜!ウフフ!」


「お前が、苦しそうにしてるの放っておけないっしょ?」

なんて、優しく微笑みかけるミキに、アンジェラは思わず頬を赤らめ口を尖らせ目線を逸らすと

「…もう、ズルいんだから。」

なんて、呟き

すぐさまに、肘枕してアンジェラを見ているミキのホッペにキスをして

「…あ〜あ、アイツもミキくらい私に紳士的に向き合ってくれたらなぁ。講習だの奨学金だの浮気するただの言い訳だよ。…本当に酷い奴。」

と、目を伏せて涙を滲ませていた。そんな可哀想なアンジェラの唇にミキはキスをすると、慣れた様子でアンジェラもキスし返し何度も何度も吸い付くようなキスをして落ち着いた。

そして、ミキはゴロンとマットに寝そべると


「…実はさ。好きな人ってのは、大樹の好きな人なんだ。」

と、打ち明けるミキに、大きな目をこれでもかってくらいに見開き驚くアンジェラ。


「だけど、その子の容姿が…まあ、大樹の好みから大きくかけ離れててさ。超美人な容姿と清純で上品な性格を好む大樹自身気がついてないけど、あれは確実にあの子の事好きなんだって直ぐ分かったよ。

大樹専用使用人としてずっと同じ家で嫌でもずっと大樹を見てなきゃいけなかったからさぁ。
だから、嫌でも直ぐ分かった。だから、これは大樹に復讐できるいいチャンスだと思ったよ。」

そう話すミキに、アンジェラは悲しそうな表情をして何も言わずそっとミキの胸に顔を置き、ミキの手を両手で包み込んだ。


「大樹が本当に好きな子と俺が恋人になって、大樹の前に現れたらアイツどんな顔すんんだろうってさ〜。
それ考えてたら今までの嫌な事も忘れるくらい愉快な気持ちになって、その子に近づいたんだ。
その子、かなりの変わり者だし、見た目もデブス眼鏡だしなんだけどさ。」

と、言った時

「…ブフッ!その子、デブス眼鏡なの?
すっごい、面白い話なんだけど!」

なんて、相手の容姿の情報を得たアンジェラは思わず吹き出して、面白過ぎて更にその子の情報を知りたがった。

「最初のうちは、容姿は気持ち悪いし趣味も超オタク過ぎて気色悪すぎて笑えたんだけど。
その子、根暗だしマイナス思考だしで、どうしようもない子だな。なんで、大樹はこんな子好きになったんだろ?って、逆に興味湧いてその子の事好きなフリして出来るだけその子の側にいて観察してみる事にしたんだよね。」

「…ちょっ…!デブスな上にオタクで根暗!!いいところ、一つもないじゃない!あはは!おもしろ〜い!
それに、観察とか!その子、珍獣じゃないんだからさ〜!あ!ある意味、珍獣よね!」

「…あ〜、言われてみれば新種の珍獣ちゃんだぁ。」

「何が、どうなって、その子の事好きだなんて言ってんのよ。あはは!」


「まあ、ただ大樹に嫌な気持ちになってもらいたいだけだからさ。その子の事は、大樹が立ち直れないくらいポッキリ心が折れた頃合いをみて捨てようと思った。
だから、俺の計画がバレないように欺くならまず味方からって事で、みんなには好きな子がいるって言ってるし。その子には、好きだよって言い続けてるよ〜。
おかげで疑い深いあの子も確実に俺に落ちてきてる。
…まぁ、まだ時間はかかりそうだけど夏休み中には落とせそうかも。」


「…あ〜、そういう事かぁ〜。納得!
本当、ミキって悪い子!!」

と、アンジェラは面白そうに目をキラキラ輝かせミキを見ると、ミキは

「悪い子は嫌い?」

なんて、イタズラっぽく目を細め笑うと、アンジェラミキに馬乗りになり吸い付く様なキスをして

「…ウフフ!悪い子、だ〜い好きよ。」

なんて言って、大人の大運動会第3ラウンドが行われていた。今回の大人の大運動会は楽しそうに戯れ合うようなキャッキャとはしゃいでる様子であった。


「……マジかよ……」

「…とんでもないな…」

「……とても悲しく辛い事実でありますが、ミキくんの本音が聞けて良かったでありますよ。
あいにく、好感度は鰻登りにぐんぐん上がっておりましたが、まだ恋とか何やらとは考えもしてなかったもので…。確かにミキくんの話を聞いてると、私自身気が付かないうちにミキくんに惹かれてはじめてたのかもしれませぬな。…しかし、大樹様といいミキくんといい似た者同士ですな。」

ミキとアンジェラにボロクソ言われて笑われた陽毬は、それはそれは深く傷付き胸にぽっかりと穴が空いた気持ちになっていた。

ミキとアンジェラのあまりの酷い内容の話に、クリシュナとエバンも大激怒で

今、ここで姿を現して断罪してやる!!と、憤慨する陽毬とクリシュナ、エバンだったが…


…おや?

ミキとアンジェラに復讐して地獄を見せてやると自分達をここに連れてきた大魔王桔梗の様子がおかしいぞ?

最初、酷く驚いた顔をしたかと思うと

徐々に顔の筋肉が緩み始め、今では美しい女神の様にニコニコと微笑んでいる。


そして


「ショウが落ち着いたみたいでね。俺の話を聞いてショウの誤解が解けたみたい。だから、ミキなんてどうでもいいや。
だから、お前達も元いた場所に帰すね。良かったね、真実が知れて。って、事でみんなお疲れ様。」


と、晴れやかな桔梗の言葉と共に、陽毬達は桔梗に振り回されて酷い事実を知ってしまい

負の感情が溢れ出て止まらない程の怒りや悲しみ、辛さを抱えたまま自分達が元いた場所へと強制送還されたのだった。


陽毬をはじめ、みんな桔梗に対して


なんて無責任で身勝手な奴なんだ!

人を巻き込むだけ巻き込んで!!


と、怒ったしムカつきはしたけど、今回の事で自分達が知り得なかった大事な事を知る事ができて良かったと思った。

もし、このまま知らずに居ても、遅かれ早かれあの二人の関係性は知る事となるだろう。

それが、遅ければ遅いほど悔しく悲しい気持ちばかりが強く根深く負の感情が根付き、自分達はどうなっていたか分からない。

だか、理由は何であれ、今のうちにこの事実を知る事ができて本当に良かったと心の底から思う陽毬達であった。


だから、桔梗に対してムカつきはしたけど感謝の気持ちの方がとても大きかった。


さっそく、陽毬はその事実をフジに伝えるとフジはこれでもかというほど怒って泣いて暴れて…

陽毬と話し合った結果


ミキの家の事情もあって、ミキの心が心配な事もありあくまで見猿聞か猿言わ猿で、今まで通り“仲のいい友達”でいよう。

と、いう判断をした。

理由は何であれ、陽毬がここまでダイエットを頑張れたのはフジだけでなくミキの力も大きかったのでとてもとても感謝しているのだ。

だから、ミキが陽毬の事を大樹への復讐の為の駒であり、デブス眼鏡で気持ち悪く超オタクで気色悪いと思ってようが

表向きだけでも仲良くしてくれるなら、それに合わせてあげよう。それが、ダイエットに付き合ってくれたお礼だと陽毬は無理矢理思う事にした。

フジも陽毬の意見には賛成で、どうせ飽きたらフラッと居なくなるでしょと笑い飛ばした。