ショウにリュウキに関する衝撃的な話を聞き、桔梗はすぐさまにリュウキに関係の深い風雷とハナにテレパシーを使いことの真実を伝えた。
まだまだ不明な点は多く謎だらけではあるが、それを聞いて風雷は酷く驚いた様子だったが
『…やはり、そういう事か。』
と、妙に納得していた。それに不信感を抱いた桔梗は
『どういう事だ?』
そう聞くと
『…ああ、俺も俄かに信じがたい話ではあったんだが、ハナが…ああ、ここからはハナもいるから本人から聞けばいい。』
そう言って、ハナにバトンタッチすると
『…え!?私かい?私は話し下手だから、風雷が喋ってくれりゃ有り難かったんだが…あはは!分かりづらかったら、いつでも風雷に聞いてくれ!』
ハナは、参ったなぁという感じに誤魔化し笑いをしながらも話をした。
『私はとんでもない地獄の様な施設で育ったんだが、そんな私達を救い出し私を聖騎士団に入団するよう計らったのがリュウキだ。』
そこで考えるのが、確か…ハナは施設で酷い事をされてる子供を見て暴れて警察でも手がつけられず兵達が来たという話だったっけ?
…あれ?
だけど、そうなるとその当時のハナって…
なんて、桔梗がごちゃごちゃと考えながらハナの話を聞いている。
『だけどね、なんとな〜くだけど、何せその時の私は二才だ。だから記憶も朧げで曖昧なんだけど、幼心にもその時のリュウキは眩しく光り輝き熱く照らす太陽みたいで、強い憧れと心惹かれるものを感じて心が躍ったよ。
だから、コイツのいる所で困ってる人達を助けるんだって幼心にそう誓ったさ。』
…と、いう事は、そんな幼い頃からハナは職員や悪い貴族、王族達に性的にそそられないってだけで酷い暴力を受け続けてたって事?
…そんな中で、よく生きてられたな…
普通、二才の赤ちゃんが大人の暴力受けたらタヒんでるか、運良く生き残っても大きな障害が残り……考えただけで胸糞悪過ぎる!最悪だ!
恐ろしくも悍ましい地獄としか思えない!
もう、これ以上考えないようにしよう。…あまりにも胸糞過ぎて世界を滅ぼしたくなるから
『だけど、そのすぐ後に会ったリュウキは私の知ってるリュウキじゃなかった。“コイツは違う!”何となく、そう感じた。
だけど、出会った時の衝撃や感動、憧れ。そして、“約束”があって私はリュウキに紹介された里親に大切に育ててもらいながら聖騎士団の訓練を続けていた。』
って、事はハナを救い出したリュウキと、次に出会ったリュウキは別人に変わっていたとハナは感じた
俺はよく知らないけど、風雷もリュウキも“ハナの野生的直感”はほぼ100%と言っていいくらいだと聞いた事がある
俄かに信じがたい話だけど…
野生の勘って何だよ…?マジで、そんなん当てになるもんなの?信じられるもんなの?
俺は、そんなの信じられないけど
『また“アイツ”が戻ってくるって信じてね。だけど、全然戻ってくる気配は感じない。
だけど、もう“アイツ”が居なくても私には大事な家族(部下)達がいるからね。“アイツ”以外の下につくつもりもないから、私の思う通り勝手に動かせてもらうさ。あはは!』
その判断は、賢明だと思う
あまり関わった事はないけど、ハナはバカだけど
鋭い洞察力や判断能力にかなり優れてるし地頭もいいからね
と、ショウの父親であるリュウキについて自分達の知り得る情報を交換していた時だった。
「……それでも、お父さんはお父さんだよ?」
ショウが悲しそうな顔で何かを訴えたそうに桔梗の顔を見てきた。
「…ショウ?」
「確かにお母さんと一緒に私をつくってくれた人は別人だけど…私が生まれてから、ずっと私のお父さんでいてくれたのはお父さんだよ?
ちゃんと私の事、自分の子供だって大切にしてくれてるのもお父さん。だから、私のお父さんはお父さんだけなの。…私をつくってくれた人は……“向こうのショウのお父さん”だから。」
「……え!?」
ショウの衝撃発言に、桔梗はピシリと固まってしまった。
「…それって、そういう事?」
「…よく分からないけど、“誰か分からない…とってもとっても綺麗な【人じゃない】誰か”が、私を作る為だけに向こうから“その人の魂”を連れてきてお父さんの体に入れちゃったの。その時、お父さんの魂は眠らされてたみたい。」
“このオレ様を毎日見慣れてるショウでさえ認める美貌の【人間じゃない】何者か”
…一体、何者なんだ?
何のために、わざわざ“始まりの世界からリュウキの魂をコッチのリュウキの体に入れる必要があったんだ?
と、ショウの話を風雷とハナにも聞かせる為に、テレパシーでこちら側の会話全てを二人に流している。
「それで、私が出来た瞬間に“その人の魂は無事に、向こうのショウのお父さんの体に戻ったみたい”。」
ショウができたから用済みって事か…
コッチのリュウキでは、ショウを作る事が出来ないから、わざわざ向こうから召喚したのか?“魂”だけを?
「それから眠らされてたお父さんは目が覚めて、自分が知らない内に周りの人達に崇拝されてて驚いたし怖かったみたい。
それに知らない間に、全然好みじゃないし自分のお母さんってくらい年の離れたおばさんが自分の奥さんだって知った時は、嫌だ!嘘だ!って、泣き叫んで、お母さんをすっごくすごーーーーーく拒否したみたい。
しかも身に覚えも無いのに、そのだいぶ年上のおばさんは自分の子供を妊娠してるっていうしでお父さんの頭の中は大混乱。
それにね、自分が最後に覚えてる記憶から何年も経ってる事も知ってパニックになって大暴れしたみたい。」
…だろうな
コッチのリュウキにしてみれば、寝て起きた瞬間に何年も時が経っていて
しかも、自分が知らない内に見覚えのない事ばかり起きているうえ、自分の体の成長にも驚いただろうし自分が皇帝になっていた事にも驚いた事だろう
精神的には、その当時はまだ7才程度か?
それが、いきなり11才になって皇帝にまでなって
自分の母親よりも年上の全然好みじゃない女と結婚してたうえ、見に覚えもないのに自分の子供が出来たってなりゃ
混乱しない訳がない
大人でさえ、受け止めきれない事を
精神年齢7才が…精神を壊してもおかしくない状況で、よく今の状態まで持ち堪え気持ちを切り替えて順応したな
…この世界線のリュウキの事を、かなり馬鹿にして見下してたけど
これは、並大抵な精神力じゃない…誰にも真似できないような屈強な精神力と頭の柔軟性と飲み込みの早さだ
オレ様でさえ、そんな状況に陥ったら精神が崩壊してとんでもない事になってたかもしれないって安易に想像できてしまう
と、桔梗は考え
それは、風雷やハナも同じような事を考えていたらしく、なんとも言えない気持ちになり
そして、リュウキの立場を自分達に置き換え考えてみた時、…ゾッとしたし
リュウキに対し、よくここまで頑張りそして今を堂々と生きてる姿に感服し尊敬の念を抱いた。
「そこで、周りの人達は帝王が精神的な重い病気にかかってしまったと思って見捨てたんだけど。
お母さんだけは最後まで残って一生懸命にお父さんを支え続けたんだね。とってもとっても大変だったけど、お父さんは落ち着きを取り戻したんだね。
その時、お母さんの事を自分の恩人であり大切なパートナーだって一生この人と家族でいたいって思ったみたい。自分とお母さんの子供だから、私だけは自分の子供と認めて大切に大事にしよう。何があってもこの子だけは自分が守るってお父さんは心の中で誓ったみたい。」
…ああ、だからか
リュウキの部下達は、妙にリュウキに対し過度な期待ばかりする者
帝王は精神を壊して、今は正常に戻ったものの“過去の帝王にまでは戻れないだろう。今でも、とても優秀には違いないが病気さえしなければ…勿体ない事だ”と、過去の栄光あるリュウキと現在のリュウキを比較して落胆する者
その為か、帝王の部下達はまとまりがなくチグハグ状態
今の帝王の悪い部分を真似て、美醜や才能・能力・財力で人を判断する者が増えてくる一方になっている
だけど、ありがたい事はショウの事をとても可愛がってくれてるって事かな?
なんて、桔梗が考えていると
『…そーか、今まで感じてた違和感は、そういう事だったんだな。じゃあ、今のリュウキの実年齢は…あれ?アイツって今、何才だっけか?』
『リュウキ叔父様は、体年齢は23才、精神年齢は19才ってところだ。
そこを考えれば7才といえば小学一年生だ。小学校入学したての児童が目を覚ますと急に11才になってるし、そのうえ帝王として世界を統べいる状態だったんだから
な。何が何だか分からない浦島太郎状態で、俺達では想像がつかない程の苦悩と苦痛、混乱の日々だったろう。気の毒としか言えない。』
『……だよなぁ。アイツの空白の時間を取り戻すなんてできないだろうに……。今までは“人が変わっちまった”って、関わらないようにしてきたけど。こんな事情を知っちまったら放っとけないね。
私達の家族達にも事情を話して、精神状態がチグハグで苦しんでるアイツをサポートするよう伝えないとな。』
『そうだな。事情が事情なだけに俺達が動かない訳にはいかない。放っておけるはずがない。』
と、ハナと風雷は話し、リュウキに対しての今後の話について決着がついたらしい。
「お父さんは、“知らない間に勝手にできてた自分の家族”に不満しかなくて。それが大きく影響して、お父さんは“恋や恋愛、結婚”に強い憧れを持ったみたい。
だから、自分の理想とする恋愛や結婚がしたくて“自分の運命の人”が必ずいるはずだって夢見て、自分の運命の相手探しを頑張ってるみたい。」
…ああ、だから
身分を隠して、色んな美女達と恋愛して家庭まで作ってたのか
そこが、まだまだお子ちゃまってヤツなんだろうけど
恋や恋愛も知らないまま、まだまだ自分も幼いってのに、知らない間に自分の家族が勝手にできてた反動ってヤツなんだろうけど…
…けど、その時間をマナには無理でもさ。娘であるショウでさえ親としての愛情を向けられなかったのか?
あれだけ、娘は大切で大事、可愛いと言っておきながらさ!そこは、かなり不服に思う
と、桔梗はリュウキの事をとても気の毒に思うし、ショウの事を思えば不快感MAXでもあった。
「…お母さんの事は、家族として愛してる。それに唯一自分を見捨てないで、どんなに辛くあたっても一生懸命にお父さんの為に尽くして支え続けてくれた恩人であって一生掛かっても返せないくらいに感謝もしてるみたい。だから、お母さんの事とても大切で大事な存在だと心から感じてるみたいだけど。
やっぱり、見た目が好きじゃないからエッチな目で見る事はできなくて恋愛できないって。」
なんて、リュウキの恋愛観についてショウが語ると、何となくだが事情を察した蓮を含めみんな複雑な気持ちに苛まれた。
結は、桔梗達のテレパシーでの会話なんて聞こえる筈もないので、ショウの話と少し桔梗が喋る程度なので話が途切れ途切れの為、例えるなら半分以上埋められてないパズル状態の話についていけていなかった。
けど、そんな結でも疑問に感じる事があった。
それは
「…あの…さ、ちょっと疑問なんだけど。
どうして、ショウちゃんが自分の父親の事情とか…なんて言ったらいいのか分からないんだけど、よく分からない人じゃない美人なヒト(?)の事とか色々知ってるの?誰かに聞いたの?」
と、結は自分が疑問に思ってる事を聞いてみた。
「…へ?…あ、あれ?……ん???
あ!そう言われてみたら、そうだ!今まで、何ともなかったし誰も何も言ってこなかったから気にした事があんまりなかったんだけど。本当だね!何で、分かるんだろ!?」
なんて、ショウ自身がビックリしていた事に、無自覚だったの!?と、結と蓮も驚いてるショウに驚いた。
そもそも、その事に誰も触れずにショウの言ってる事をすんなり信じて受け入れているようだったから、おそらくはショウ以外ショウの事をよく知る人達はこの事を分かっているのだろう。
それを何故か、敢えてショウに伝えてないようだ。
「よく分からないんだけど、知りたい事があると
“その場に私がいる”事がたま〜にあって、でも周りの人達には私の事が見えてないから不思議体験だよね!
でも、“そこでは”何年も経ってたりしても時間も何も関係なくて、私は“一瞬で知りたい事を知る事ができる”事もあるみたい。
でも、本当に不思議なんだよ!いつもは、いくら“見たい、知りたい”って思っても考えても、全然見れないし知る事もできないのにね?…何でかな?」
と、不思議がるショウに
桔梗は、優しくショウを抱き締めると
「ふふ。何でだろうね?あんまり、気にしなくていいんじゃない?“たまたま、偶然”に、誰かの何らかの魔道がショウに飛んできて、そんな体験ができちゃったのかもね。ほら、ここには魔道とか錬金、気術ありとあらゆる術使い達が勢揃いしてるからさ。」
なんて言って、ショウは「そっか!」って納得してたけど、絶対違うと結と蓮は思った。
おそらく、予言とか予知関連の能力がショウにあるのだろうが、どうやらあんまり知られてはいけない事のようだ。
つい、うっかりポロリと喋ってしまいそうなショウだからこそ、誰かに悪用されないようにショウ本人にさえ、その能力がある事を伝えていないように感じた。
だから、空気を察した結と蓮もこれ以上、ショウの能力について深追いする事はなかった。…とても、気になって仕方ないのだが。
「そういえば、私のお父さんね。
“すっごく美人な人じゃない誰か”が、自分の細胞の一部と“向こうのショウのお父さん”の細胞の一部を採取して作ったみたい。どうしてか分からないけど。」
…は?
それじゃ、こっちのリュウキはまるで“何かの実験体”みたいじゃねーか
ショウが理由が分からないって事は…考えたくねーがショウ以上に“あの力”を持ってる奴……まさかとは思うが……いや、まさかな
これ以上、考えちゃヤベー気がする
『……“実験体”って…それが本当なら、あんまりな話じゃないか!』
と、怒りを露わにするハナ。
『桔梗がこれ以上考えたらヤバイ事ってなると……できるだけ避けた方がいい案件だな。これ以上、この話を追求するのはやめておこう。』
…ああ、もし
それでも、どうしても関わらなきゃなんねー時が来るとしても、オレ様達はまだまだ未熟過ぎる
だから、“もしも”の時があっても、それは
せめて、オレ達が大人になってからの話だ
『“もしも”が、来ない事を心の底から願いたいな。』
『“もしも”ってなんだい?よく、分からんが胸糞悪い話ばっか続くな。』
「だけど、“すっごく美人な人じゃない誰か”が、“何かに期待して待ち望んでも”何故か、お父さんとお母さんが出会っても恋にも落ちる気配もないし魂の関係で“私が生まれない”事も分かって、仕方なく本当に渋々“向こうのショウのお父さんの魂”をちょっと借りたみたい。
そしたら、驚くほどに順調過ぎる程順調にお母さんと恋に落ちて直ぐに結婚までしちゃって私が出来たみたいだよ。その結果に、“すっごく美人な人じゃない誰か”は、心の底からガッツリして立ち直れないくらい落ち込んでるみたいだけど。」
…つまり、“その誰か”の人体実験は失敗に終わったってところか
だけど、おかしい
この世界にショウのお母さんが存在するなら、アイツも存在していいはずなのに存在しない
そして、“アイツの代わり”に作られた“始まりの世界のリュウキとは別人のリュウキがいる
何故だ?
何の為に、わざわざそんな面倒くせー真似してんだ?
『桔梗、とりあえず今はその事に関して考えるのは止めにしよう。ハナが知熱で倒れそうになってる。
あと、リュウキ叔父様については、こちらの方でも内密に動き調べてみる。そして、叔父様の精神的なケアも考え慎重に事を進めようと考えている。』
…ああ、よろしく頼む
『胸糞悪いし難しい話だけど…何となくだけど。この話については、桔梗は動かない方がいい気がするよ。
何となくの直感だけどね。何故か、この件に関しては桔梗はなるべく避けた方がいい気がするよ。
そして、この件はショウのお母さんに絶対に伝えなきゃいけない気がするんだよ。これは、絶対だよ。』
…は?
ハナの発言に、桔梗は何言ってるんだ?オレ様が動かないでどうするんだよ?と、ハナは何言ってるんだかと鼻で笑うと
『ハナの野生的直感が出たな。桔梗、ハナの言う通りに願いたい。お前にとって信じがたい話だろうが、ハナの直感はほぼ100%当たる。
おそらく、お前にとって不都合な何かがあるのかもしれない。リュウキ叔父様の件はギリギリまで俺達に任せてほしい。』
なんて、頭でっかちのクソ真面目な風雷がそこまで言うならと、桔梗はリュウキの件は風雷達に任せる事にした。
そして、さっそく風雷はショウの母親であるマナに、話がしたいと連絡をしたのだった。
いくら、リュウキが連絡しても音信不通だと聞いていたので期待はしていなかったが、直ぐにOKの返事がきて約束を取り付けたのだった。
ここで、ようやくリュウキの件は一体落ち着いた。
ようやくピリついた空気から解放された為、蓮はようやく気になる事を口に出した。
「…ちょっと、気になってたんだけどさ。」
その事に関しては、結もあれとか聞くんだろうな。
自分もかなり気になってたけど聞きづらくもあったので、蓮が聞いてくれるのはありがたいとショウと桔梗の言葉を聞き逃すまいと結は耳をダンボにして待ち構えていた。
…ドキドキ!
まだまだ不明な点は多く謎だらけではあるが、それを聞いて風雷は酷く驚いた様子だったが
『…やはり、そういう事か。』
と、妙に納得していた。それに不信感を抱いた桔梗は
『どういう事だ?』
そう聞くと
『…ああ、俺も俄かに信じがたい話ではあったんだが、ハナが…ああ、ここからはハナもいるから本人から聞けばいい。』
そう言って、ハナにバトンタッチすると
『…え!?私かい?私は話し下手だから、風雷が喋ってくれりゃ有り難かったんだが…あはは!分かりづらかったら、いつでも風雷に聞いてくれ!』
ハナは、参ったなぁという感じに誤魔化し笑いをしながらも話をした。
『私はとんでもない地獄の様な施設で育ったんだが、そんな私達を救い出し私を聖騎士団に入団するよう計らったのがリュウキだ。』
そこで考えるのが、確か…ハナは施設で酷い事をされてる子供を見て暴れて警察でも手がつけられず兵達が来たという話だったっけ?
…あれ?
だけど、そうなるとその当時のハナって…
なんて、桔梗がごちゃごちゃと考えながらハナの話を聞いている。
『だけどね、なんとな〜くだけど、何せその時の私は二才だ。だから記憶も朧げで曖昧なんだけど、幼心にもその時のリュウキは眩しく光り輝き熱く照らす太陽みたいで、強い憧れと心惹かれるものを感じて心が躍ったよ。
だから、コイツのいる所で困ってる人達を助けるんだって幼心にそう誓ったさ。』
…と、いう事は、そんな幼い頃からハナは職員や悪い貴族、王族達に性的にそそられないってだけで酷い暴力を受け続けてたって事?
…そんな中で、よく生きてられたな…
普通、二才の赤ちゃんが大人の暴力受けたらタヒんでるか、運良く生き残っても大きな障害が残り……考えただけで胸糞悪過ぎる!最悪だ!
恐ろしくも悍ましい地獄としか思えない!
もう、これ以上考えないようにしよう。…あまりにも胸糞過ぎて世界を滅ぼしたくなるから
『だけど、そのすぐ後に会ったリュウキは私の知ってるリュウキじゃなかった。“コイツは違う!”何となく、そう感じた。
だけど、出会った時の衝撃や感動、憧れ。そして、“約束”があって私はリュウキに紹介された里親に大切に育ててもらいながら聖騎士団の訓練を続けていた。』
って、事はハナを救い出したリュウキと、次に出会ったリュウキは別人に変わっていたとハナは感じた
俺はよく知らないけど、風雷もリュウキも“ハナの野生的直感”はほぼ100%と言っていいくらいだと聞いた事がある
俄かに信じがたい話だけど…
野生の勘って何だよ…?マジで、そんなん当てになるもんなの?信じられるもんなの?
俺は、そんなの信じられないけど
『また“アイツ”が戻ってくるって信じてね。だけど、全然戻ってくる気配は感じない。
だけど、もう“アイツ”が居なくても私には大事な家族(部下)達がいるからね。“アイツ”以外の下につくつもりもないから、私の思う通り勝手に動かせてもらうさ。あはは!』
その判断は、賢明だと思う
あまり関わった事はないけど、ハナはバカだけど
鋭い洞察力や判断能力にかなり優れてるし地頭もいいからね
と、ショウの父親であるリュウキについて自分達の知り得る情報を交換していた時だった。
「……それでも、お父さんはお父さんだよ?」
ショウが悲しそうな顔で何かを訴えたそうに桔梗の顔を見てきた。
「…ショウ?」
「確かにお母さんと一緒に私をつくってくれた人は別人だけど…私が生まれてから、ずっと私のお父さんでいてくれたのはお父さんだよ?
ちゃんと私の事、自分の子供だって大切にしてくれてるのもお父さん。だから、私のお父さんはお父さんだけなの。…私をつくってくれた人は……“向こうのショウのお父さん”だから。」
「……え!?」
ショウの衝撃発言に、桔梗はピシリと固まってしまった。
「…それって、そういう事?」
「…よく分からないけど、“誰か分からない…とってもとっても綺麗な【人じゃない】誰か”が、私を作る為だけに向こうから“その人の魂”を連れてきてお父さんの体に入れちゃったの。その時、お父さんの魂は眠らされてたみたい。」
“このオレ様を毎日見慣れてるショウでさえ認める美貌の【人間じゃない】何者か”
…一体、何者なんだ?
何のために、わざわざ“始まりの世界からリュウキの魂をコッチのリュウキの体に入れる必要があったんだ?
と、ショウの話を風雷とハナにも聞かせる為に、テレパシーでこちら側の会話全てを二人に流している。
「それで、私が出来た瞬間に“その人の魂は無事に、向こうのショウのお父さんの体に戻ったみたい”。」
ショウができたから用済みって事か…
コッチのリュウキでは、ショウを作る事が出来ないから、わざわざ向こうから召喚したのか?“魂”だけを?
「それから眠らされてたお父さんは目が覚めて、自分が知らない内に周りの人達に崇拝されてて驚いたし怖かったみたい。
それに知らない間に、全然好みじゃないし自分のお母さんってくらい年の離れたおばさんが自分の奥さんだって知った時は、嫌だ!嘘だ!って、泣き叫んで、お母さんをすっごくすごーーーーーく拒否したみたい。
しかも身に覚えも無いのに、そのだいぶ年上のおばさんは自分の子供を妊娠してるっていうしでお父さんの頭の中は大混乱。
それにね、自分が最後に覚えてる記憶から何年も経ってる事も知ってパニックになって大暴れしたみたい。」
…だろうな
コッチのリュウキにしてみれば、寝て起きた瞬間に何年も時が経っていて
しかも、自分が知らない内に見覚えのない事ばかり起きているうえ、自分の体の成長にも驚いただろうし自分が皇帝になっていた事にも驚いた事だろう
精神的には、その当時はまだ7才程度か?
それが、いきなり11才になって皇帝にまでなって
自分の母親よりも年上の全然好みじゃない女と結婚してたうえ、見に覚えもないのに自分の子供が出来たってなりゃ
混乱しない訳がない
大人でさえ、受け止めきれない事を
精神年齢7才が…精神を壊してもおかしくない状況で、よく今の状態まで持ち堪え気持ちを切り替えて順応したな
…この世界線のリュウキの事を、かなり馬鹿にして見下してたけど
これは、並大抵な精神力じゃない…誰にも真似できないような屈強な精神力と頭の柔軟性と飲み込みの早さだ
オレ様でさえ、そんな状況に陥ったら精神が崩壊してとんでもない事になってたかもしれないって安易に想像できてしまう
と、桔梗は考え
それは、風雷やハナも同じような事を考えていたらしく、なんとも言えない気持ちになり
そして、リュウキの立場を自分達に置き換え考えてみた時、…ゾッとしたし
リュウキに対し、よくここまで頑張りそして今を堂々と生きてる姿に感服し尊敬の念を抱いた。
「そこで、周りの人達は帝王が精神的な重い病気にかかってしまったと思って見捨てたんだけど。
お母さんだけは最後まで残って一生懸命にお父さんを支え続けたんだね。とってもとっても大変だったけど、お父さんは落ち着きを取り戻したんだね。
その時、お母さんの事を自分の恩人であり大切なパートナーだって一生この人と家族でいたいって思ったみたい。自分とお母さんの子供だから、私だけは自分の子供と認めて大切に大事にしよう。何があってもこの子だけは自分が守るってお父さんは心の中で誓ったみたい。」
…ああ、だからか
リュウキの部下達は、妙にリュウキに対し過度な期待ばかりする者
帝王は精神を壊して、今は正常に戻ったものの“過去の帝王にまでは戻れないだろう。今でも、とても優秀には違いないが病気さえしなければ…勿体ない事だ”と、過去の栄光あるリュウキと現在のリュウキを比較して落胆する者
その為か、帝王の部下達はまとまりがなくチグハグ状態
今の帝王の悪い部分を真似て、美醜や才能・能力・財力で人を判断する者が増えてくる一方になっている
だけど、ありがたい事はショウの事をとても可愛がってくれてるって事かな?
なんて、桔梗が考えていると
『…そーか、今まで感じてた違和感は、そういう事だったんだな。じゃあ、今のリュウキの実年齢は…あれ?アイツって今、何才だっけか?』
『リュウキ叔父様は、体年齢は23才、精神年齢は19才ってところだ。
そこを考えれば7才といえば小学一年生だ。小学校入学したての児童が目を覚ますと急に11才になってるし、そのうえ帝王として世界を統べいる状態だったんだから
な。何が何だか分からない浦島太郎状態で、俺達では想像がつかない程の苦悩と苦痛、混乱の日々だったろう。気の毒としか言えない。』
『……だよなぁ。アイツの空白の時間を取り戻すなんてできないだろうに……。今までは“人が変わっちまった”って、関わらないようにしてきたけど。こんな事情を知っちまったら放っとけないね。
私達の家族達にも事情を話して、精神状態がチグハグで苦しんでるアイツをサポートするよう伝えないとな。』
『そうだな。事情が事情なだけに俺達が動かない訳にはいかない。放っておけるはずがない。』
と、ハナと風雷は話し、リュウキに対しての今後の話について決着がついたらしい。
「お父さんは、“知らない間に勝手にできてた自分の家族”に不満しかなくて。それが大きく影響して、お父さんは“恋や恋愛、結婚”に強い憧れを持ったみたい。
だから、自分の理想とする恋愛や結婚がしたくて“自分の運命の人”が必ずいるはずだって夢見て、自分の運命の相手探しを頑張ってるみたい。」
…ああ、だから
身分を隠して、色んな美女達と恋愛して家庭まで作ってたのか
そこが、まだまだお子ちゃまってヤツなんだろうけど
恋や恋愛も知らないまま、まだまだ自分も幼いってのに、知らない間に自分の家族が勝手にできてた反動ってヤツなんだろうけど…
…けど、その時間をマナには無理でもさ。娘であるショウでさえ親としての愛情を向けられなかったのか?
あれだけ、娘は大切で大事、可愛いと言っておきながらさ!そこは、かなり不服に思う
と、桔梗はリュウキの事をとても気の毒に思うし、ショウの事を思えば不快感MAXでもあった。
「…お母さんの事は、家族として愛してる。それに唯一自分を見捨てないで、どんなに辛くあたっても一生懸命にお父さんの為に尽くして支え続けてくれた恩人であって一生掛かっても返せないくらいに感謝もしてるみたい。だから、お母さんの事とても大切で大事な存在だと心から感じてるみたいだけど。
やっぱり、見た目が好きじゃないからエッチな目で見る事はできなくて恋愛できないって。」
なんて、リュウキの恋愛観についてショウが語ると、何となくだが事情を察した蓮を含めみんな複雑な気持ちに苛まれた。
結は、桔梗達のテレパシーでの会話なんて聞こえる筈もないので、ショウの話と少し桔梗が喋る程度なので話が途切れ途切れの為、例えるなら半分以上埋められてないパズル状態の話についていけていなかった。
けど、そんな結でも疑問に感じる事があった。
それは
「…あの…さ、ちょっと疑問なんだけど。
どうして、ショウちゃんが自分の父親の事情とか…なんて言ったらいいのか分からないんだけど、よく分からない人じゃない美人なヒト(?)の事とか色々知ってるの?誰かに聞いたの?」
と、結は自分が疑問に思ってる事を聞いてみた。
「…へ?…あ、あれ?……ん???
あ!そう言われてみたら、そうだ!今まで、何ともなかったし誰も何も言ってこなかったから気にした事があんまりなかったんだけど。本当だね!何で、分かるんだろ!?」
なんて、ショウ自身がビックリしていた事に、無自覚だったの!?と、結と蓮も驚いてるショウに驚いた。
そもそも、その事に誰も触れずにショウの言ってる事をすんなり信じて受け入れているようだったから、おそらくはショウ以外ショウの事をよく知る人達はこの事を分かっているのだろう。
それを何故か、敢えてショウに伝えてないようだ。
「よく分からないんだけど、知りたい事があると
“その場に私がいる”事がたま〜にあって、でも周りの人達には私の事が見えてないから不思議体験だよね!
でも、“そこでは”何年も経ってたりしても時間も何も関係なくて、私は“一瞬で知りたい事を知る事ができる”事もあるみたい。
でも、本当に不思議なんだよ!いつもは、いくら“見たい、知りたい”って思っても考えても、全然見れないし知る事もできないのにね?…何でかな?」
と、不思議がるショウに
桔梗は、優しくショウを抱き締めると
「ふふ。何でだろうね?あんまり、気にしなくていいんじゃない?“たまたま、偶然”に、誰かの何らかの魔道がショウに飛んできて、そんな体験ができちゃったのかもね。ほら、ここには魔道とか錬金、気術ありとあらゆる術使い達が勢揃いしてるからさ。」
なんて言って、ショウは「そっか!」って納得してたけど、絶対違うと結と蓮は思った。
おそらく、予言とか予知関連の能力がショウにあるのだろうが、どうやらあんまり知られてはいけない事のようだ。
つい、うっかりポロリと喋ってしまいそうなショウだからこそ、誰かに悪用されないようにショウ本人にさえ、その能力がある事を伝えていないように感じた。
だから、空気を察した結と蓮もこれ以上、ショウの能力について深追いする事はなかった。…とても、気になって仕方ないのだが。
「そういえば、私のお父さんね。
“すっごく美人な人じゃない誰か”が、自分の細胞の一部と“向こうのショウのお父さん”の細胞の一部を採取して作ったみたい。どうしてか分からないけど。」
…は?
それじゃ、こっちのリュウキはまるで“何かの実験体”みたいじゃねーか
ショウが理由が分からないって事は…考えたくねーがショウ以上に“あの力”を持ってる奴……まさかとは思うが……いや、まさかな
これ以上、考えちゃヤベー気がする
『……“実験体”って…それが本当なら、あんまりな話じゃないか!』
と、怒りを露わにするハナ。
『桔梗がこれ以上考えたらヤバイ事ってなると……できるだけ避けた方がいい案件だな。これ以上、この話を追求するのはやめておこう。』
…ああ、もし
それでも、どうしても関わらなきゃなんねー時が来るとしても、オレ様達はまだまだ未熟過ぎる
だから、“もしも”の時があっても、それは
せめて、オレ達が大人になってからの話だ
『“もしも”が、来ない事を心の底から願いたいな。』
『“もしも”ってなんだい?よく、分からんが胸糞悪い話ばっか続くな。』
「だけど、“すっごく美人な人じゃない誰か”が、“何かに期待して待ち望んでも”何故か、お父さんとお母さんが出会っても恋にも落ちる気配もないし魂の関係で“私が生まれない”事も分かって、仕方なく本当に渋々“向こうのショウのお父さんの魂”をちょっと借りたみたい。
そしたら、驚くほどに順調過ぎる程順調にお母さんと恋に落ちて直ぐに結婚までしちゃって私が出来たみたいだよ。その結果に、“すっごく美人な人じゃない誰か”は、心の底からガッツリして立ち直れないくらい落ち込んでるみたいだけど。」
…つまり、“その誰か”の人体実験は失敗に終わったってところか
だけど、おかしい
この世界にショウのお母さんが存在するなら、アイツも存在していいはずなのに存在しない
そして、“アイツの代わり”に作られた“始まりの世界のリュウキとは別人のリュウキがいる
何故だ?
何の為に、わざわざそんな面倒くせー真似してんだ?
『桔梗、とりあえず今はその事に関して考えるのは止めにしよう。ハナが知熱で倒れそうになってる。
あと、リュウキ叔父様については、こちらの方でも内密に動き調べてみる。そして、叔父様の精神的なケアも考え慎重に事を進めようと考えている。』
…ああ、よろしく頼む
『胸糞悪いし難しい話だけど…何となくだけど。この話については、桔梗は動かない方がいい気がするよ。
何となくの直感だけどね。何故か、この件に関しては桔梗はなるべく避けた方がいい気がするよ。
そして、この件はショウのお母さんに絶対に伝えなきゃいけない気がするんだよ。これは、絶対だよ。』
…は?
ハナの発言に、桔梗は何言ってるんだ?オレ様が動かないでどうするんだよ?と、ハナは何言ってるんだかと鼻で笑うと
『ハナの野生的直感が出たな。桔梗、ハナの言う通りに願いたい。お前にとって信じがたい話だろうが、ハナの直感はほぼ100%当たる。
おそらく、お前にとって不都合な何かがあるのかもしれない。リュウキ叔父様の件はギリギリまで俺達に任せてほしい。』
なんて、頭でっかちのクソ真面目な風雷がそこまで言うならと、桔梗はリュウキの件は風雷達に任せる事にした。
そして、さっそく風雷はショウの母親であるマナに、話がしたいと連絡をしたのだった。
いくら、リュウキが連絡しても音信不通だと聞いていたので期待はしていなかったが、直ぐにOKの返事がきて約束を取り付けたのだった。
ここで、ようやくリュウキの件は一体落ち着いた。
ようやくピリついた空気から解放された為、蓮はようやく気になる事を口に出した。
「…ちょっと、気になってたんだけどさ。」
その事に関しては、結もあれとか聞くんだろうな。
自分もかなり気になってたけど聞きづらくもあったので、蓮が聞いてくれるのはありがたいとショウと桔梗の言葉を聞き逃すまいと結は耳をダンボにして待ち構えていた。
…ドキドキ!

