クズとブスの恋愛事情。

とんでもない恐ろしい地獄だと、…ハッと気がついた時には蓮はベットから、ダイニングテーブルの椅子に座っていた。

何が起きているんだと慌てて周りを見渡し、時計を見ると桔梗に幻術を掛けられて5分も経ってない事に気がついた。


…バックンバックンバックン!!!!!

あまりに地獄の様な人生に、まだ恐ろし過ぎて心臓が飛び出るんじゃないかというほど激しく心臓は動き冷や汗がドバドバと流れ止まらない。

まだ、幻術と現実の境が分からなく混乱しておかしな事を口走っている蓮に、現実に戻ってきた事を分からせる為に桔梗は蓮の言葉と答え合わせをして

ようやく、蓮は現実に戻ってきた事を理解した。

「……こんな恐ろしい幻術なんか見せるなよ!本当に、とんでもない恐ろしい世界だったよ!なんてもの見せるんだ。さすがに、酷い!」

と、幻術と知り我に返った蓮が、桔梗にもの凄い勢いで抗議すると


「……あれ?また、運命が変わりそうかも。」

ゲームがひと段落した所で、ショウが不思議な事を呟き桔梗を見て、次に怒りまくっている蓮を見た。

「桔梗の幻術は色々な種類を持ってて使い分けてるんだけど。蓮くんに使った幻術は“この先、本当に起こる事”
“未来の蓮を見せた”んだね!」

そう言ってくるショウの言葉に、蓮はゾッとした。


「…え?俺の事が嫌いで、桔梗の作り上げた幻術を見せてきたんじゃないの?」

と、あまりに信じられない話に、思わず蓮はショウに聞いてしまった。ショウは嘘のつけないおバカさんだから信用ができるのだ。


「全然、違うよ。多分、桔梗が使った幻術は【もし、蓮くんと結ちゃんのお兄ちゃんが両思いだったら、どうなるのか】って、設定みたい。
だから、【もし本当に蓮くんと結ちゃんのお兄ちゃんが両思いだった場合の未来を夢を使って体験した】んだね。だから、桔梗は悪くないよ?
もし、二人が両思いだったら起こる未来だから。」


そう言われて、蓮は……ゾゾゾっとした。

それを聞いた瞬間、あまりに恐ろし過ぎたのと

あんなに愛し合ってた筈なのに颯真の心が壊れた時側にいる事も支える事も無く

罪悪感を感じながらも颯真を見捨てて、ちゃっかり外国で結婚していた自分が脳裏に浮かんできて最低最悪な気持ちになり自己嫌悪に陥ってしまった。

…俺って、そんなとんでもないヤバイ奴なの!?と、今まで自覚のなかった蓮は多大なショックを受けていた。

多少の罪悪感を感じた時があっても、それだけの事だったしそれ以上深く考える事もなかったから。


その瞬間


「あ!!」

と、驚いたように急にショウが大声を出すと、いきなり結に向かって抱きつき

結も意味が分からないまま、ショウのとんでも行動を受け止めた。


「あはは!どうした?」

と、聞く結に


「…良かったね、良かった!本当に良かった!!
結ちゃんの“残酷で可哀想な未来が消えた”よ!」

なんて、まるで預言者の様な事を言って、まるで自分の事の様に大喜びしてぴょんぴょん飛び跳ねていた。

それを見ていた蓮は


「…急に、どうしちゃったの?ショウって頭おかしいの?」

ドン引きしていた。そんな蓮に、深いため息を吐きながら桔梗は


「…テメーの幻術の中見てたけど、テメー…とんでもない厄災、疫病神じゃねーか。…ああ、だからか。
ショウが、結にバーサーカを勧めてたのは。
あんな未来よりだったら、確かにバーサーカになった方が全然マシだ。」

と、蓮に聞こえるように呟いた。


…ゾッ…!

桔梗もそうだけど、ショウって何者だよ?

予言の力でも持ってるの?…怖っ!


「…て、事は、蓮の颯真への気持ちもどの程度だったって事だな。」

と、呆れたように言ってきた桔梗に、蓮はカチンときた。颯真を好きで好きで堪らなくて、何を犠牲にしてでもどんな事があっても二人で愛し合って乗り越えていくって覚悟までしてたんだという気持ちを思い出し、キッと桔梗を睨み付けた。

だが

「いくら俺を睨んだって、颯真の大ピンチな時に颯真の容貌が変わってショック受けて精神状態のおかしさから面倒見てられないって見捨てた。
なのに?自分は海外に逃げて女と結婚。托卵だけど子供もいたのに浮気や不倫し放題。
けど、妻が浮気してると知ったら嫉妬と裏切られたって悲しみ恨み、とんでもない恐ろしい事件を起こす。
やっぱり、颯真への気持ちはその程度じゃねーか。バーカ。」

と、言われると何も言えなくなった。

「もし、俺がテメーの立場なら、心が壊れたショウの介護は喜んでやるぜ?だってさ、そのショウは俺無しじゃ生きられないし依存してくれるんだぜ?俺ら二人を邪魔する奴なんて何処にもいねぇ。
しかも、何から何まで面倒見れるんだ。ショウは脇目も振らず俺だけしか見ない。息絶えるまでお互いに愛し合える。最高じゃねーか。」

なんて、うっとりとショウを見ている桔梗に寒気が走った。…こいつ…頭おかしいんじゃないか?あまりにも異常過ぎると。


「…ああ、俺の話はいいとして。ショウが、“結の残酷で可哀想な未来が消えた”って、言ってたから、テメーが夢で体験した未来が消えたって事。
つまり、今のテメーは既に颯真への恋心が消えたって事な。良かったな、お前の悩みもこれで解決だ。」

と、言われて、確かにその通りではあるが、桔梗の嫌味っぽい言い方に腹が立って腹が立って仕方なかった。


…クソッ!

こいつ、ムカつく!!

いつか痛い目に合え!クソヤロー!!

直接言えないので、蓮は心の中でいっぱいいっぱい桔梗に悪態をついた。


その頃、ショウは結にまたとんでもない話をしていた。


「本筋の運命通りだったら、桔梗の幻術通りになって結ちゃんの家族みーんなとんでもない地獄に落ちる所だったんだけど。それがすっかり消えちゃったから、結ちゃんに別に新たな道が何本かできたよ!
まだまだ薄い道だから、そこに行くには別の運命を変える必要があるんだけどね!その道が、結ちゃんにとってすっごくすっごーーーくいい道だから、頑張ってその未来に向かえると嬉しいなぁ。」

と、はしゃいでるショウは、結の地獄の様な未来が消えた事がよっぽど嬉しかった様だ。
それを、こんなに喜んでくれるなんて、なんだかよく分からない話ではあるけどショウの気持ちがとても嬉しいなとじんわり心が温かくなる結だった。

その会話の内容を聞いていた蓮は


「…なあ、ショウって予言者か何かの能力があるの?」

恐る恐る桔梗に聞いてみると


「……予言や占いとは少し類が違うかもな?詳しくは言えねーけど。気になるんなら、テメーの将来の事聞いてみれば?ショウがお前の未来に興味あったら見えるし、興味なかったら見えねーからあんま期待しねー方がいいかもな?
全部、ショウの気持ち次第だからさ。」

なんて、どうでもいいように適当に答えてきた。


蓮はちょっと試しに、まさかなと思いつつもドキドキしながら

「なあ、ショウ。俺の未来って、どんな感じになってるの?エリートで美人な奥さんいたりする?」

なんて、からかい半分…半分は本気の本気で軽く聞いてみるように見せかけて、実はかなり勇気を振り絞って聞いていた。


ドキドキ…!


「…え!?私、占い師さんじゃないんだから、そんな事分かる訳ないよ?」

と、凄くビックリした表情で思いっきり全否定して蓮を見てきた。そして、…あ…!もしかして桔梗に揶揄われちゃった?みたいな顔をして苦笑いしている。


じゃあ、結の未来への道とかそういう話は何だったんだ?

ただのデマカセか?

やっぱり、桔梗は俺を揶揄って馬鹿にしてたのか!?


と、桔梗を睨み付けると

桔梗は小さく両手をあげて、何がおかしいのかクツクツ笑っていた。


…ムカつく!!

クソ!本当に桔梗に揶揄われただけかよ!!!


こんな風に色んな意味で、宝来家での怒涛の一日は終わりみんなが寝静まるお時間となり


「何で、“オレ様”とショウが、コイツらと一緒の部屋で寝なきゃなんねーんだよ!」

と、使用人達に不服だと怒りの声を上げる桔梗を使用人達は

「ショウ様のお友達が泊まりに来るなんて初めてなんだからさ。たまには目を瞑ってやれよ。ショウ様、スッゲー喜んでんじゃん!」

「いつも、桔梗の我が儘でショウ様の幼なじみの陽毬お嬢様でさえお泊まりさせた事もないのに!ショウ様、かわいそぉ〜。」

など、桔梗に言いたい放題言っていたし、それに負けず桔梗の不服の声は止まらず

桔梗vs何人かの使用人の図式が出来上がっていた。


あの桔梗相手に、よくあんなに言い合えるなと桔梗と使用人達の廊下で言い争う声を蓮は部屋の中で聞き耳を立てて聞いていた。

あまりの桔梗の嫌がりっぷりに、さすがの結も


「…私達がこのまま、ショウちゃん家にお泊まりしちゃって大丈夫なの?」

迷惑じゃない?と、ショウに聞くと


「…え!?どうして?私ね、ずっと憧れてたんだ。
お友達とお泊まり!だから、結ちゃん達とお泊まりできてとってもとぉ〜っても嬉しいよ。
結ちゃん!蓮くん、うちにお泊まりしてくれてありがとう!」

ショウは、嬉しそうに頬をピンク色に染めてベットの上に座ったままピョンピョン跳ねながら、結達に自分の気持ちを伝えた。

そんなショウの姿に、結と蓮はカワイイなぁ〜、癒されるとホッコリした気持ちでショウを見ていた。


「そう言ってもらえると私も嬉しいよ。私もショウちゃんの家に泊まっていっぱいお喋りしたり遊んだりしてすっごく楽しかった!また、お泊まり会しようね。
今度はフジちゃんと陽毬ちゃんも交えてさ!」

と、いう結の提案に、ショウは嬉しそうに目をキラキラさせて前のめりになりながら結に話も大きく“うんうん!”と、頷いていた。


やっぱり、かわいい

結と蓮は、ショウにホワホワ癒されながらそんな感想を抱いてると

「決まりだね!」

結のハキハキした通る声で、蓮はハッとした!


…ドキドキ…!


…は?……え??

俺、さっき一瞬寝てたのかな?

底辺デブス女2号のショウが可愛く見えてしまうなんて!

ないないない!

間違っても、ショウが可愛いとかあり得ないから

何処から、どう見たって陽毬よりは全然細いけどデブだし、容姿だって良くて中の中、悪くて下の上なのに


と、蓮は一瞬自分の感覚に焦りそれを否定していた。そんな自分の気持ちを紛らわすように


「廊下の方で、桔梗と使用人達が言い争っていたけど大丈夫なの?使用人達みんな調子に乗ってない?立場を分からせないといけないんじゃないの?
そもそも、ショウ達のご両親は?」

蓮はこの家で強く感じた感じた違和感の一部をショウに聞いてみた。


「…使用人…う〜ん…。“使用人ってお仕事”してるんだもんね。そっかぁ〜。
えっとね、私のお父さんとお母さんは仕事で忙しくて年に、2、3回しか帰って来れないんだ。だから、お父さんとお母さんの代わりに、ここに居る使用人達みんなで私と桔梗を育ててくれたの。
だから、私と桔梗にとっては、ここに居る使用人達はみんな私と桔梗の育ての親みたいな感じなんだよ。育ての親であって、きょうだいでもある感じかな?」


ショウにとって、この生活が当たり前過ぎて今まで自分の生活について深く考えた事もなかったのだろう。蓮に指摘されて、自分達の関係性をよくよく考えて出たショウの答えがコレだった。


それを聞いて、結と蓮はショウ達と使用人達の違和感について、妙に納得できてしまった。

つまりは、両親は仕事にかまけてばかりで自分達の子供を放置して使用人達に丸投げしていたという事になる。
年に、2、3回しか自分の子供に会いに来ない親ってなんなんだよ。育児放棄もいい所だろと複雑な気持ちでショウをみた。

何よりショウ達や使用人達の様子を見る限り、とても良好そうだ。この家に雇われた使用人達が“たまたま”いい人達が集まったんだろう。ショウは凄く運が良かったとしか言いようがない。

使用人達に悪い奴が多かったら…それを考えると虐待の2文字が頭に浮かび、ショウ達は本当に運が良かっただけなんだ!もしもの事をショウの両親は何も考えなかったのか!と、ゾッとしたし、結と蓮はショウの両親に対し凄く腹が立って仕方なかった。

自分達の子供達が可愛くないの!!?

どうして、自分達の身勝手で子供を作るような真似しといて育児放棄して他に丸投げできるの!?

信じられない!!

だから、桔梗はあんな腹黒でクソ生意気に育つんだよ!


と、蓮は考えていて、…ハタっとした。


…あれ?

と…。


「…あ、あのさ。ショウと桔梗って兄妹なの?」

なんて、素朴な疑問が。

だって、さっきショウは言ってなかっただろうか?


使用人達が、ショウと桔梗の親代わりかつきょうだいみたいな関係だと。

…って、事はまさか…ショウと桔梗って…

と、蓮は嫌な予感が脳内を占め、嫌な感じのドキドキが止まらなくなった。


「…え?私と桔梗?兄妹じゃないよ?だって、全然血の繋がりがないから。」

キョトンとした顔で蓮を見るショウに

「さっき、ショウと桔梗がここの使用人達に育てられたって言うから血の繋がりがあるのかなって思うよね?」

蓮の脳内では謎が謎を呼び

じゃあ何で一緒に育てられてるんだよ!

他人と一緒に娘を育てさせるとか…

…もしかして、跡取り問題で桔梗はこの家の養子になったって事?…いや、それだったら何で二人の苗字が違うんだよって話だよ


と、蓮は難解な謎を解く為に考え込んでいると


「…う〜ん…、私が生まれた時に、私の側に桔梗がいたんだって。それで、私が桔梗を気に入ってるし桔梗も私から離れないから、桔梗の親も見当たらないし仕方ないから【宝来家で“ショウ専用の従者”として育てよう】って、話になったんだって。」

ショウは、またもとんでもない話をぶっ込んできて結と蓮は固まってしまった。


…え?

桔梗って捨て子だったの?

それを簡単に拾って“ショウ専用の従者にする”とか、ショウの両親は一体何考えてるんだ?

それは一歩間違えたら、ショウの人なり次第で桔梗はどんな酷い扱いもされてただろうし、あの美貌だ…性奴隷にされてた可能性だって…


…あれ?

もしかして、ラブラブに見えて実は桔梗は生活の為にショウの奴隷にされるだけかもしれない

微塵もモテないショウの心と体を満たす為に、ショウが桔梗の事を性奴隷にいいように扱ってる…とか…?

…あり得ない話じゃない…

でも、それじゃ

桔梗の人権も何もあったもんじゃないだろ!?


と、蓮の妄想は膨らみに膨らみまくって、今はショウに対しかなりの嫌悪を感じていた。


「けど、それには誰かの戸籍に入らなきゃいけないから、桔梗は使用人達の中で一番偉いディーヴァはアレビーと夫婦だから二人の子供として養子縁組してディーヴァとアレビーの子供になったんだよ。
ディーヴァは使用人の中でダントツで強くて凄くイケメンだし、アレビーは使用人の中で一番の美人さんでやっぱり凄く強いから桔梗の両親にピッタリだって事で、二人が桔梗の親になる事になったって。
あと、二人には血の繋がった子供達が何人かいるんだけど、廊下で桔梗とお喋りしてるのが桔梗のお兄ちゃんとお姉ちゃん達なんだよ。」


と、ショウが教えてくれたのだが、

…あ、納得

桔梗と義理とはいえ、それなりに上手くいってるきょうだいならあんな風に言い合えるか

聞いてると、誰も引かない感じで

ケンカばかりする本当のきょうだいの様だ


しかし、こんな大事な話をポンポン喋ってしまうショウに不信感も湧く。


「…ここまで、聞いて置いてなんだけど。こんなデリケートな話、結だったら分かるけど。大した話もした事ない俺にまで話していいものなの?あんまり、良くない気がするんだけど。」

と、ショウのデリカシーの無さと人の気持ちを思いやる気持ちの欠如が酷いんじゃないの?とばかりに、ショウを軽蔑の眼差しで見てくる蓮の雰囲気に、ショウは敏感に反応してさっきまで意気揚々と元気いっぱいだったのが嘘かのようにシュンと落ち込み縮こまってしまった。


そこに


「いやいや、ショウちゃんは色んな事ちゃんと考えられる子だよ。今だって、人に話しても大丈夫だって判断したから話しただけだろ?
なんで、人の家の事にここまで踏み込んで色々聞きまくってた蓮くんが、ショウちゃんを責めるような事言うかな?意味分からんのだけど。蓮くんは、ショウちゃんに何がしたいの?いじめたいの?」

と、ショウを庇うように結が話に加わってきた。

「…結ちゃん…ありがと。」

ショウは、結が自分を庇ってくれた事、信頼してくれた事が嬉しくてじんわり涙が溢れてきた。

そこに、またまた


…ぎゅう!


「…ショウ、大丈夫だよ?ショウは何も悪いことしてないからね?」

さっきまで廊下で喧嘩してた筈の人達が急に現れ、桔梗は前からギュッとショウを抱き締めヨシヨシと慰めていて

蓮と結の前には、さっきショウが話していた桔梗の義理の兄二人と姉三人が鬼の形相で蓮を睨んで立っていた。

義理というだけあって血の繋がりのない5人の容姿は桔梗と全く似ていないが、美貌という部分に置いては腰が抜ける程までに美しい。


「うちのショウ様をあんまり苛めないでくれるかな?」

「…ショウ様が可哀想でいっぱいギュッってしてチュチュして可愛がりたいけど、あのクソ愚弟にいつも取られちゃうのがムカつく!」

「そうですね。よその方々から見れば僕達は、異様に見えてしまうのかもしれない。ですから、ショウ様には“ある程度までなら、話しても大丈夫ですよ。”と、言い聞かせています。

そもそもの話です。僕達がショウ様に言い聞かせて忠告するのは、あくまで“ショウ様が最終的にご自身の良心の心が傷つかない、後悔しない事が前提”であり
ショウ様さえ良ければ、誰かれ構わず全てを話してしまっていいのです。」

「だからね。さっきショウ様が喋った事も全然話して大丈夫だし、もっと話してもかなわないくらいなのよ。
なのに、それも知らずズケズケと家の事を聞いて置いて“デリカシーがない”だの“思いやりに欠如がある”だの失礼極まりない散々な事を考えて、本当にあなたはクソ反吐ヤローよ!大嫌い!」



…え?

ちょっとショウに注意しただけで、何で桔梗のきょうだい達にこんなに嫌われるの?…俺…

と、ショックを受ける蓮に、桔梗は面倒くさそうに

「そりゃ、そうだろ。コイツら全員…ショウの使用人全員が誠心誠意・全身善意ショウのみ仕える部下だ。
そして、おそらく全員漏れなくショウの事を主君だとは理解しつつも“自分の愛娘”として溺愛してる厄介者達ばかりだ。」

なんてため息を吐いていたが、そんな桔梗の言葉にも疑問と謎ばかりが多く、つい


「…あの…さ。見た感じ、みんな16才〜25才くらいまでの使用人しか見かけてないんだけど…ショウちゃんの育ての親をしてる使用人はどこにいるんだ?」

なんて、結の口から疑問が出てしまい、結は踏み込み過ぎたかと都合悪そうに聞かなかった事にしてくれないかなと思っていたのだが


「主に手の空いた【六宙皇(ろっこうちゅう)】の誰かが、ショウの子育てしてたぜ?
だから、ショウの主な育ての親は6人。だけど、赤ん坊や子供って手がかかるのは当たり前だろ?
あと、自分達の主の子育てがしたいって奴らばっかで、色んな奴らにショウは育ててもらったから部下達みんながショウの育ての親って言っても過言じゃねーんだよ。」

なんて、アッサリと桔梗は答えてきたが【六宙皇】って、なに!?何かの虫の名前???
って、感じの奇妙な名前が当たり前に出てきて結と蓮は混乱した。

「それ言っちゃうと、桔梗だってそうじゃん。
お前はオレ達の兄弟だし、父上、母上の息子に間違いないけど、何やらかすか分かんないお前を父上や母上、俺達だけじゃ手が付けられなかった。そりゃ、主な家族は俺らだけどな?
手が掛かかり過ぎて、俺達だけじゃどうにもできなかったお前の面倒見てきた部下達みんなも、お前の親やきょうだい達みたいなもんなんだからな?お前、みんなに感謝しなきゃいけないって思うぜ?」

「…確かに。お前があの方達に封印された時、どんなに大変だったか分かる?本当に大変だったんだからね?」


なんて、きょうだい達に言われて「…ま、まあ。それは感謝してるけど…」なんて、タジタジになってる桔梗の姿は滅多に見られない姿だし、“あ〜、末っ子だなぁ”と、感じる場合でもあった。


「…え?じゃあ、育ての親と実の両親の事は、なんて呼んでるんだ?」

結の素朴な疑問。


「私を育ててくれた親は“パパ、ママ”って、呼んでて、私を産んでくれた両親は、“お父さん、お母さん”って呼んでるよ。」

と、すんなり教えてくれたが、ショウがパッと最初に思い浮かべて出てきた親の顔はどうやら“パパ、ママ達”のようだ。

そのくらいに、育ての親との時間は濃厚で本当の娘のように大切に育ててもらっていた事が分かる気がする。

何か、色々と複雑な事情がありそうなショウの家ではあるが、ショウと桔梗は使用人達みんなに親のような愛情を持って大切に育ててもらっているようだ。


…じゃあ、ショウと桔梗を育ての親に押し付けて、二人の産みの親はどこほっつき歩いてるんだ?という疑問も湧くが、それもそうと…


「…ずっと気になってたんだけど、ここで働く使用人達があまりに多いがするんだけど何人ここで働いててるの?そんなに働く作業が多くある家なの?」

蓮がそんな質問をしてくると、桔梗は…クッ!とヴィランのように喉を鳴らして笑うと


「ああ、“ここにいる奴らだけで3000人”はいるって思うぜ?他の奴らは“本邸”にいるぜ?
なにせ、ここにはみんな入りきらねーし“本邸”を守らなきゃなんねーからな。ここには、部下の中でも上位者かつ月に3000人交代で仕事してる。本邸に戻ったら、自分しかできねー仕事がたんまり溜まってるからな。」


…???…

………意味が分からない………


桔梗の説明についていけてない結と蓮は、頭の中がこんらがってきた。


「…え?そもそもの話。この家が、ショウ達の本当の家じゃないって事?本当の家が別にあるって話かな?」

と、蓮が混乱する頭から何とか分かる範囲振り絞って聞いてみた。


「だから、そう言ってるだろ?ここは、ショウにとっては別荘みたいな所だよ。色々事情があって、ショウはここに居る。だから、俺を含めてショウの部下達の中でも上位者だけ、一ヵ月交代でショウの護衛と世話をする為にここに来てる。
上位者以下の部下達には、この世界のあまりに穢れきってる空気は毒過ぎるからな。病気になっちまう。」


…え?色々事情があってって、どういう理由?

“穢れきったこの世界”って、お前達の生まれ育った世界だろ?なに、おかしな事言ってるんだよ

こっちの頭が、おかしくなりそうだ


結と蓮は意味が分からなすぎてムシャクシャして、頭をぐしゃぐしゃと掻き乱したい気持ちになっていた。


と、その時だった。


コンコン!

部屋をノックする音が聞こえ、桔梗は


「…ゲッ!」

もの凄く嫌そうな顔をしていた。

そして


「失礼します。」

若い男性の声と共に部屋のドアが開いた。