「…ダァ〜メ!よそ見なんて嫌だよ、ちゃんとこっちを見て?」
と、桔梗はあざとく少しムスッとしてみせてきた。
…きゅ、きゅぅぅ〜〜〜ん!
…はわわわ…!
桔梗がとーーーっても、かわいい〜〜!
…そ、それに…
なんだか、とってもと〜ってもエッチチ過ぎるぅ〜〜〜!!
なんて、ショウはきゅんきゅんしながら
「桔梗、だーい好きっ!」
と、堪らず桔梗に飛び付きギュゥゥ〜っと抱き締めた。
いつも桔梗から抱き締めのは当たり前だし、ショウからだって抱き締めてくる事も少なくないのに。
いつも、してる事なのに
ドッキン、ドッキン、ドッキン!
桔梗は驚きと嬉しさのあまり心臓が破裂しそうに大きく動き、喜びと感動でどうにかなってしまいそうだった。桔梗も飛びついてきたショウを震える手で抱き締めジィ〜ンと幸せを噛み締めていた。
もう、桔梗のショウラブハートは大爆発でメロメロの骨抜き状態。…なのは、いいのだが…
かなり性欲の強い桔梗は、ショウの体の熱と感触、匂いに徐々にピリピリキュンキュンといたずらに甘く刺激してくる電流が全身を駆け巡り、脳まで沸騰しそうな感覚に襲われ脳内全てがピンク色に支配され麻痺しているような錯覚に陥っていた。
まるで超強力な媚薬を飲まされ、更に媚薬の効いたお香を焚かれたかのように、ショウが欲しくて欲しくてどうにかなってしまいそうになっていた。
…いや、もうすっかり心は蕩けきってぐにゃぐにゃ状態だ。だから、煮えたぎる自分の体ごと全てをめちゃくちゃに愛して欲しいと悶え堪らないとばかりに理性を失ってしまい
近くにショウの両親やオブシディアンがいる事なんて忘れてしまい
…ちゅっ!
と、ショウの首にキスをすると
「…えっ!?…ちょっ…!!き、桔梗っ!?」
ショウはビックリしちゃって、桔梗の名前を呼ぶが
ちゅ、ちゅっ、じゅっ…
桔梗は艶めかしいトロんだ表情をしながらショウに無我夢中になって貪りはじめている。
我慢が効かなくなってきて、軽いキスから徐々に吸い付くようなキス、更には絡みつくようなキスに変わってきて
ショウの体も反応し声も出そうになるが父親と母親、オブシディアンの手前、漏れる声を自分の口を押さえ甘く反応してしまう体を抑える為に目をギュッとつむり歯を食いしばった。
桔梗とは生まれた時からの付き合いだが、ここまで理性を失った桔梗を見たのは初めてかもしれない。
しかし、両親やオブシディアン、いつ目を覚ましてしまうか分からない一流達がいるので、どうにかして桔梗には正気に戻ってもらわなければならない。
ショウは桔梗のショウの全てを食べ尽くすかの様なとてつもない攻撃から逃げようと攻防している。
「…ハア、ハア…ショウ、ショウ、大好きっ!…お願いだから拒まないで?…俺、もう我慢できない…!」
と、ブワッっと凄まじいフェロモンを放出してショウに迫ってくる。ただ、ここで凄いなと思うのは我慢できなくなっても、少しのお触りとちょっとしたリップサービスはするもののショウに無理強いはしない事だ。
「…ハッ!桔梗!お家の部屋までワープしよ?」
男と女の違いはあれど、ショウも何となく桔梗の苦しさが分かるから何とかしてあげたい気持ちでいっぱいだ。それに、これは他の誰でもない。自分にしかしてあげられない事だから!
だけど、それには場所をわきまえないといけないし、人前なんてあり得ない!桔梗も限界そうだから、桔梗の魔道で自分達の部屋に行けばいいと閃き桔梗に声を掛けたのだが…
「…ンッ…!…ハア、ショウォ〜の声だけで…ンン〜〜〜ッッ!…俺、もう……ね?…ショウ、俺の事めちゃくちゃにしてぇ〜〜〜!」
「……え?…あれ?私の声聞こえてる?桔梗の魔道でお部屋に帰ろ?」
さっきよりも大きな声で強く桔梗に訴えかけるショウだったが
「もう、どうにかなってしまいそう!…早くぅ〜、お願い…」
桔梗の息は荒く、ハアハア息を切らし時にはハッハッ…と苦しそうに短く息を切らしたりしている。
何より…
「…あれ?…もしかして!もしかしなくても、私の声聞こえてない!?」
そう…今の桔梗はショウに、メロンメロンの骨抜き状態になっており夢中になり過ぎて、自分が求める言葉以外全てをシャットアウトしている様だった。
ひたすらに、ショウをその気にさせようとエッチチなアピールをし続ける桔梗を見て
「…あ!これ、ダメなやつだ!!!?
ど、どうしよう…!!」
抑えきれないフェロモンを周りにまでムンムンに撒き散らしながら、これでもかってくらいエッチアピールしているのに、ショウの煮え切らない態度にムッとした桔梗は
もう、これ以上焦らされたくないとばかりに、目をギラつかせ本格的にショウを襲う大勢に入った所で
……ガッ!ゴッ!!
「こんな場所で盛るとは躾のなってない犬以下だな。
しかも、ショウの父親である俺がいるというのに…情け無い。今すぐにでもショウとの婚約を破棄させたいくらいだ。」
リュウキは、桔梗の首に一撃を喰らわせ気絶させムカついたので、桔梗の頭に余計な一発も喰らわせておいた。
おかげで、桔梗の頭には痛々しい大きなたんこぶ一つできてしまった。
リュウキは、急所やツボの場所を心得ていてツボをつけば、相手を痛める事なく眠らせる事もできるというのに…と、マナとオブシディアンは思っていたが、リュウキの気持ちを察する事ができたので苦笑いしがなら見る事しかできなかった。
「…母親の私もいるんだけど?それに、桔梗君はそれだけ、ショウに魅力を感じてメロメロって事よ
ハア…ま、いっか。」
マナは、何か諦めの境地にいるようで諦めたようなため息を一つ溢し、娘のショウがいるのでニコニコ笑顔で泣きたい気持ちを踏ん張って我慢した。
「ここにいる者達を、病院へ一斉送還したんだがそれができるマナは魔力をほぼ使い果たし魔道が使えない。桔梗に関しては……ハア…言わずもがなだな。」
と、リュウキは自身によって気絶させられた桔梗を見て呆れため息を吐いていた。
「…仕方ない。緊急で医療班を呼びここにいる者達全ての応急処置をした後、あるべき場所へ搬送ししっかりとこの者達のケアをするよう伝えてくれ。」
リュウキは、周りの状況を見て即座に判断しオブシディアンに命令すると直ぐに、ワープで医療班達が来てリュウキの命令でそれぞれ動いて動いていた。
そして、応急処置を済ませた者から順に病院へ搬送され全ての者達が無事病院にいる事を確認してから、リュウキは部下によって用意された乗り物に乗りショウ達とは別の別荘へと帰って行った。
何故、二台なのか。
どうして、ショウ達とは違う別荘へとリュウキとマナが帰って行ったのかは……お察しいただきたい。
ショウも久しぶりに会えた両親に甘えたくて、どうして別々の乗り物に乗らなきゃいけないのか?自分達と別の別荘に行っちゃうのか?と、
一緒に居たいと泣きながら駄々を捏ねるショウを宥めるのに少々手こずったし、我が子が両親と離れたくないというのを突き放すのは…とても心苦しくて堪らなかった。
できるなら、自分達だって貴重な親子の時間を大切に過ごしたい気持ちでいっぱいなのだ。
だが、何処かの誰かさんが無駄にあり得ない程のフェロモンを広範囲に渡りぶち撒けてくれたおかげで、少なからずリュウキとマナも被害を被っていたのだ。
それをリュウキの強靭な精神力とマナの特殊魔道で協力者達の無事を確認するまではと何とか今まで耐えていたのだ。そして、全ての協力者達が病院へ搬送された報告を受けようやく肩の荷が降りた。
後は、このどうしようもない熱を発散しなければ頭がおかしくなりそうだ。と、一緒に居たいという我が子を何とか説得して、慌てて乗り物に乗り込んだのだった。
自分の両親が乗った乗り物を見送っている時、ショウはある事に気がついた。
「…あれ?お父さんとお母さんの車、凄く大きくない?
私達が乗る車と全然違うよ?お父さんとお母さんは2人で、こっちは3人なのに。
それに、ドアを閉めたら車の中の音が何にも聞こえなくなってたよ?窓の中も見れないようになってたから…手を振る事もできなかった…。」
と、防音、マジックミラーになっている車のガラスのせいで、外からの見送りができないとションボリしているショウにオブシディアンは
『忙しい二人だから、車の中でも仕事ができるように大きい車を選んだと思うよ。それに、仕事の内容を盗む悪い人達もいるから、警戒して防音、外から中が見えないようにしたんだよ。
そんな忙しい中、ショウ様のご両親はショウ様のピンチに駆け付けてくれたんだ。そうそう、できる事じゃない。ご両親にとても愛されてるんだね。』
そう言って笑い掛けてくれたので、ショウはそうなんだと納得してとっても忙しいのに自分の為に駆け付けてくれた事にとても感謝したし凄く嬉しかった。
なのに、そんな多忙の両親を行かないでと泣いて我が儘を言ってしまった自分がとても恥ずかしく思えた。
…だけど、やっぱり大好きな両親にまた暫く会えなくなると思うと、とても寂しくて泣きたくなってしまう。
いつも、側に桔梗とオブシディアンが居てくれるのに。…自分って、とっても我が儘なのかなぁと少し悩んでしまう。
それを察し
『子供にとって、両親は特別な存在だよ。もちろん、親にとっても子供はとても大切で特別な存在。
だから、子供が親と一緒に居たい。甘えたいって気持ちは当たり前の事だよ。
だから、今度ショウ様のご両親が帰って来た時には、たくさん甘えるといいよ。すると、ご両親もとても喜んでくれる筈だよ。』
オブシディアンは、優しくショウを諭すとショウは涙を流しながらも笑顔でうなづいた。
それを確認してオブシディアンは、ショウの膝枕で眠る(?)気を失っている桔梗をショウの体ごと波動で浮かせると車の中へと乗せた。
そんな面倒な事をしないで、桔梗を抱っこだり何だりして或いは魔道か波動で車に乗せればいいのではないかと思うだろうが、
恐ろしい事に、桔梗は無意識でもショウ以外自分に触れる事を嫌い攻撃してくるのだ。
例え、それが魔道や波動で直接桔梗に触れずとも、それを使った相手をも攻撃してくる厄介極まりない面倒な男なのだ。
だから、ショウと一緒にくっ付いた状態で、二人に触れないように魔道や波動で移動させなければならない。
本当に面倒くさい男だ
だけど、それは面倒な反面自分の体をしっかり守れてるという事。自分の身も心も全て、ショウ様だけに捧げている証拠でもある
それくらいでなければ、ショウ様の伴侶には相応しくないだろう
だから、娘を溺愛するあまり娘には恋人も結婚も許さないというイかれた父親も、桔梗の事は認めざる得ない
代わりに、桔梗はショウ様の父親からかなり目の敵にされてるようだが
なんて考えながら、実はもう目が覚めているのだが、ショウの膝枕が嬉しくて狸寝入りしている桔梗をオブシディアンは横目に見た。
いつもならば、用が済めばショウの影の中に潜り込むオブシディアンだが、先程までの桔梗の暴走のせいで大幅に気と体力を使ってしまったので影に潜り込む術が使えずやもえずショウ達の隣の席に座っているのだ。
…多分、寝たふりして偶然を装いながらショウ様に性的なイタズラをしてくるだろうな
桔梗は、ショウ様に対して万年発情期だからね
と、ほぼ二人から離れず見守ってきたオブシディアンには、この先の事が容易に想像できてしまう。
そう考えていたのだが
気がつけば、狸寝入りしている桔梗を膝枕し隣に座っていた筈のショウの寝息が聞こえたかと思うと
いつの間にか桔梗が座っていて、眠っているショウを自分と向き合う形で抱っこしてショウの首元に顔を埋めていた。
ショウを眠らせて何がしたいんだろうと、桔梗を観察し少し警戒していると
「……ショウ、ショウ!…ありがと。大好きだよ、本当に大好き!」
と、運転手に聞こえないように防音バリアーを張って桔梗は、泣きながらショウに話しかけていた。
「…体を繋げなくても気持ちいい…体を繋げる事とは別の幸せもあるなんて知らなかったよ。…ショウと居るだけで凄く心地いいんだ。」
だけど、何だかおかしい。
これは、ショウに話しかけてるだけではなくて…
「ショウが嬉しそうにしてたり、笑ってくれたり、楽しそうにしてたり、喜んでくれたり。
そんな姿を見るだけで、心が満たされて幸せ過ぎてさ。ショウの事を考えるだけでも気持ちが高揚して、こうしてあげたら喜ぶかなとか、そんな事を想像しただけで心が弾んで踊るんだ。」
もしかして…
「こんな気持ち、ショウと出会うまで知らなかった。…生まれてきてくれて本当にありがとう。そして、俺を受け止めて救ってくれた事……言葉では言い表せないくらいに感謝してる。
…ショウは、俺の“奥さん”、“天”というだけでなくて、永遠と感謝してもし尽くせない程の“救世主であり恩人”だよ。」
…いや、まだショウ様は“奥さん”じゃないけどね
「…そして、オブシディアン。あなたにも感謝してるんだ。」
…ドキッ!
やっぱり。桔梗は、ショウ様とボクに話しかけてるのか。珍しい事もあるもんだね
ビックリしちゃった
と、ポーカーフェイスのオブシディアンは優男のように穏やか笑顔のまま桔梗の話を聞いていた。
「“あの時”、オブシディアンが居なかったら、俺はショウと引き離されたまま長い時間を過ごしていたら…今とは違う不幸な道を歩んでいたかもしれない。」
当時を思い出すように話す桔梗に、オブシディアンはドキリとした。なにせ、ショウや桔梗が赤ん坊の頃、桔梗のあまりの異様さにリュウキ達は恐れ赤子の桔梗を封印した過去があるのだ。
だが、当時のオブシディアンは、桔梗が封印された事に何故かショウが悲しんでいる様な気がしてならなかった。そして、桔梗を封印する事によって何か不吉予感しかなく全身のゾワゾワが止まらなかったのだ。
だから、必死になって桔梗の封印を解く事を訴えた。その甲斐もあり、何かあったらオブシディアンが責任を持つという形で桔梗の封印は解かれ今に至るのだ。
遅かれ早かれ、桔梗ならば早い内に自力で封印を解いていたのだろうが。
しかし、今の桔梗の発言を聞いて確信した事がある。“あの時”、何がなんでも桔梗を封印から解き放って良かったと。
もし、あの時、あのまま放置していたなら…
そう考えると…ゾッ…!オブシディアンの背中に冷たいものが走った。
「それ以外にも、さりげなくショウのフォローしてくれたり…ショウの為に俺の事まで気にかけてくれてる。
…今しか、言わないけどオブシディアンには本当に感謝してる。
……ショウが、オブシディアンの事を家族の一員のように思っているから、俺もオブシディアンの事を頼りになる家族のように思ってるよ。」
…嬉しい事を言ってくれるが、やはりというか
桔梗は、ショウありきで様々に置いて判断しているのだと確信した。
だけど、そんな桔梗にまさか自分がそんな風に思われているとは思ってもなかった事なのでかなり驚いたし、とてもむず痒くも嬉しい気持ちになった。
『…ボクの独り言だけど。ショウ様の事は、我が主君であり…烏滸がましいけど“危なっかしくて目の離せない我が子”のように感じてる。そして、桔梗は“暴走しがちな色々と面倒くさい兄弟の末っ子”のように思ってるよ。』
オブシディアンは、らしくもなく自分の気持ちを桔梗に伝えると、桔梗はショウの首元に隠していた顔を思わずあげると驚いた表情でオブシディアンを見てきた。
そして、直ぐにショウの首元に顔を隠すと
「………ありがと………」
と、聞こえるか聞こえないくらい小さな声で、ポツリと恥ずかしそうに呟いた。
その様子に、あの桔梗がショウ以外にお礼を言うなんてとまたも驚いたが、オブシディアンは微笑ましい気持ちになり
『どういたしまして。』
そう返事を返した。
今の桔梗の行動は、ショウ様を守る為に自分の強固たる味方を増やそうと、敢えて自分の弱さを見せ庇護欲を駆り立てようとしている“演技”なのか“本音”なのかは正直なところ分からない
だけど、安心してほしい
もし、仮に桔梗の今の言動が演技だったとしても、それによってボクの心は揺れる事なんてない
伊達に隠密の厳しい訓練を受けてないからね
ボクは、ショウ様を“自分の君主”と決めた時瞬間から心は決まっているよ
ボクの心は、何があっても揺るがない
それから、いつも通り二人はなんの会話もする事なく
桔梗は、家に着くまでいつも通り「ショウ、かわいい」を連呼してショウの頭や顔中にキスしまくったり、頬擦りしたりと寝てるショウに大好きアピールしていた。
予想外の事はあったが、おそらく家に着いたら通常通りオブシディアンの想像通りの事が起こるであろう。
これは、間違いない。
の、だが…
今回、“悪女”という存在を知ったショウが
【悪女ごっこ】にハマり、ショウが悪女ごっこを飽きるまで数週間…オブシディアンは【多くの村人や兵、メイド役…その他諸々のエキストラ役】をさせられる羽目になる。
そこまでは、いいのだが
オブシディアンがエキストラではなく重要な脇役を任された時は本当に最悪だ。
例えば“ネトラレごっこ”で、政略結婚の為に無理矢理させられそうなショウ。その婚約者役がオブシディアンだった時の桔梗の殺気が凄まじく、ただの“ごっこ遊び”にも関わらず消されるかとハラハラした。
“ショウのごっこ遊び”に付き合うのはいいが、是非とも二人に直接関わらないエキストラがいいと心から思った。
だが、ショウは何故か“ごっこ遊び”の主人公を自分ではなく、桔梗やオブシディアンにさせたがるのでそれを否めるのに苦労する事も多々ある。
結局は、桔梗と自分とでショウを説得してショウか桔梗どちらかを主人公としたごっこ遊びをするのだが。
たまには、オブシディアンにも主人公やってもらいたい!と、ブスくれる時もあるがやんわり断りはするもののショウの気持ちを嬉しく感じ心がほんわか温まるオブシディアンだ。
何より、“ごっこ遊び”で厄介なのは桔梗という存在である。ショウは健全な“ごっこ遊び”をしているのだが、性欲多感な桔梗は健全だけで終わる筈もなく、そうなるよう巧みに誘導し徐々に性的なものへと変えてしまう困った君なのだ。
しかも、この“ごっこ遊び”の凄い所は桔梗の才能の無駄遣いにある。
ここが見せ場だとでもいうように、ショウの希望に沿った風景、衣装、などなど、“ごっこ遊びをする為だけに桔梗が創った異空間”に、作り上げそこで“ごっこ遊び”が始まる。
オブシディアンは、桔梗が創り出せない部分を補う為に分身の術を使いそれぞれ1人づつに変装、変化の術をさせ“多くのその他、大勢役”をこなす。
最初こそ、桔梗の無茶難題に苦労して“こんな無茶苦茶、出来るはずがない!”と、傍若無人にも程があると心の中で怒り呆れていたのだが…
最初、桔梗の思う通りできなかった術も毎日のように、日々向上心を持ち研究し力もつけていけば元々の才能というのも大きいが
おかげ様で今では、オブシディアンの分身の術に置いて右に出るものが居ないとさえ言われる程にまで成長する事ができた。そして、特定の隠密に必須である演技力も抜群に向上した。
何故なら
桔梗の演技力が素晴らしく、迫真の演技にこれは本当に起こっている事なのかもしれないと毎回錯覚をしてしまうほど。
ショウも頑張って演技してるが“大根役者”で、とても癒されるし、役になりきって演技してるのがまた可愛らしい。
しかし、桔梗のあまりの演技力の高さには驚かされるし、かなり勉強になる。
たまに、桔梗が可哀想な役をした時
悪者役のショウが、桔梗の演技に騙されとても心を痛めて中断→
桔梗が、これは演技だし〇〇ごっこで本当じゃないでしょ?楽しいから、続きしよ!と、ショウを慰めつつルンルン気分で続きを催促→
ごっこ遊び続行。
そんな感じである。どのごっこも、最後は二人ともベットで幸せそうにグッタリして眠るというお約束付きで。
様々な役になりきってするプレイは、二人の興奮剤というエッセンスになっているようだ。
もちろん、いつも“ごっこ遊び”をしてる訳でもなのだが。桔梗が、いつどのタイミングで発情を抑えきれなくなるのか、未だそのスイッチが分からない。長い付き合いでスイッチが入った瞬間なら分かるのだが。
だが、君主の遊びの一環や日常に関わる事が多いのは、自分くらいだろうなと苦笑するオブシディアンだ。
さて、ボクの君主様は今日はどういった可愛らしい要望をしてくれるのかな?
一方、ショウ達より早くに出発したリュウキ達夫婦であったが、ここに来て大問題が発生!
桔梗のえげつないフェロモンに当てられ、ショウや部下達の前では強靭な精神力とプライドで平然を装っていたリュウキと、微かに残った魔力を使い特殊バリアーを張り理性を失わないよう自分の身を守っていたマナだったが
やはり、桔梗のフェロモンは凄まじく二人にも大きく影響していた為、一刻も早くその熱を発散させる為にリュウキはこの特殊な車を用意したのだが。
「…ショウ達の姿も見えなくなった事だし。別の車を用意してほしいな。」
と、さっそくアダルティーな雰囲気をムンムンに出し、マナにアクションを掛けようとしていたリュウキを拒みマナはそう言った。
それに驚きを隠せないリュウキは、大きく目を見開き
「…マナ、どうした?」
と、至極不思議そうな表情を浮かべ聞いてきた。
「どうしたも何も、それはこっちのセリフよ!」
「?」
「ショウが生まれてから、今の今までご無沙汰。
当時、何度か私から誘った時、あなたは私になんて言った?
“お前は大切な家族だと思ってるが、もう性的に見られない”
そう、言って拒み続けたよね?
…それで、桔梗君のフェロモンに当てられたから、“どうせ夫婦だしお互いに熱を発散させられて丁度いいだろう”とか、思ってるかもしれないけど、私はそんな都合のいい女じゃない!!」
「…マナ!?急に、どうしたんだ?」
「急にじゃないよ!ショウを産んで、あなたに“女として見れない”って言われたあの日から、ずっとずっと悩んで悲しんで考えてたの。」
「今は、そうも言ってられない状況だろ!」
「…“そうも言ってられない状況”。そう、やっぱりあなたにとって私はそういう立ち位置になっているんだね。…分かった。」
「時間が経てば経つ程、お前だってかなり辛くなっている筈だ。お前を抱くのは夫である俺の役目だろ。」
「…“役目”。なら、私はいらない!私は家に戻り次第、魔力回復剤を飲んで、自分を落ち着かせられるから安心して?
あなたは、この地域から一番近い“現地妻”か“現地恋人”の所まで行って、その浮かされた熱を存分に発散してね!たくさん、“恋人”や“奥さん”と“子供”もいるみたいだし。」
「お前、いつからその事を…」
「私は、大勢いる奥さんや恋人のうちの一人は嫌だし。
やっぱり、この人だって決めた一人の人と愛し愛されたいの。だから、離婚しましょ!」
「…は?…離婚だと…?ショウの事はどうするんだ?」
「その事も含めて、後でしっかり話し合いましょう。」
そう言って、新たに到着した車にマナは乗り込むと何処かへ向かって居なくなってしまった。
特殊な車には、リュウキが一人取り残された状態でポカンとしていた。
「……待て待て!あいつ、いつから“現地妻”や“現地の恋人”……“子供”まで知ってたんだ?」
そう、リュウキは恋多き男で世界各国を渡り歩き長期滞在或いは戦場で戦っている時に、強く心惹かれる女性と恋に落ちては激しく燃え上がるような本気の恋愛をしていた。
そして、結婚したいほど心惹かれた女性には、しっかりと
“仕事の都合で滅多に家に帰れない事”
“実は本妻があるが、家族として愛しているが性的に見られず抱きたくない事”
“子供ができても自分の子供として認知しない。あくまでも、自分の子供は本妻の子供だけだという事。”
“代わりに、家に帰る度に妻だけでなく子供の面倒もしっかりみて、子供の学校や職の事も共に話し合いしっかり育てる事”
“生活に苦労させないように、毎月仕送りをする事”
“そして、リュウキが何者なのか追求しない事”
“本妻や子供には絶対に危害は加えない事”
を、条件に出し、それでもいいと強い気持ちを持った女性達と結婚して、それぞれ各国の現地に家庭を持っている。
もちろん、女性が年老いたり異性として魅力を感じなくなったら別れるが。別れて、また新たに燃え上がる様な女性を見つけてのエンドレスである。
だから、何回何百回と結婚と離婚(正式ではないが)、新たな恋人との出会いと別れを繰り返したか分からない。
もちろん、一晩限りの相手も相当な数程いる。
こんな自分勝手な条件を付けられても、少しでもリュウキに愛されるならと思わせてしまう程、極上の美女達を魅了し虜にしてしまうのがリュウキだ。
しかし、子供も28人も居るので、これ以上増えると厄介な事になりそうだと一流の医療魔道士に頼み自分の精子を無くした。
それに、馬鹿正直にそんな話をしたら
マナをショックを受けるだろうと、バレないように綿密、緻密なまでに計画を立て各国の家族や恋人達・一晩限りの相手達と過ごし上手くいっていたと思っていた矢先の出来事だった。
「……離婚……?」
…ドックン、ドックン、ドックン!
嫌な鼓動だけが、リュウキの全身に鳴り響いていた。
「…嘘だろ…?」

