「…それ、誰の話?私の話じゃないよ?
もしかして、“浮気”?桔梗は、“向こうのショウ”と浮気したの?」

と、顔を真っ赤にしてプンプン怒っているショウの姿が見えた。

それには、桔梗だけでなくリュウキやマナ、オブシディアン達もビックリだった。いつも、おとなしくて人見知りなショウが、人目を憚らずまさかのビンタ。

まさか、ショウがそんな行動を起こすなんて思ってもみなかったものだから、みんな唖然としながらショウを見ていた。


「……え?いや…あのさ。さっきまで、俺“始まりの世界のショウに、過去世の俺がしてきた悪い事をショウの立場になって体験するって幻術”に掛けられてたの…知ってるよね?」

あまりの出来事に、未だ頭の処理が追いつかない桔梗は、キョトーンとしながらショウがその事について理解しているのか確かめた。


「…それが、どうしたの?浮気と何か関係あるの?」

なんて、よく分からない事を言い出して怒ってるショウ。何で、幻術に掛けられただけで浮気になるのか理解できない。

さっきまで桔梗が掛けられた幻術の内容だけ見れば、浮気したのはむしろショウの方である。
幻術の中のショウは、桔梗が過去世やらかした最低最悪な言動を“ここに居るショウ”の姿形で、そのまま再現したものである。

実際にショウの立場になり体験してみると、話には聞いていたが実際に体験すると話を聞いただけとは全くの別物。聞いただけでは分からないとは、こういう事を言うのだと桔梗は身をもって知った。

精神的苦痛や苦悩など様々に置いて、想像を絶する様な言い表しようない、耐えがたい!兎に角語彙力に欠けるがとんでもないものだった。そういう他ない。
もう、二度とあんな思いは味わいたくないし、思い出したくもない。

そんな苦しみや苦痛を、何よりも大切なショウにこの自分が与えていたなんてと考えただけで自分に嫌悪し吐き気がした。

…自分はなんて穢らわしくも汚ない存在なんだと思わざる得ない、過去世の自分の恐ろしくも悍ましい言動。傲慢で横暴もいいところだ。
しかも、大切な愛しい存在を罵声罵倒して嘲笑い、酷いことばかりしていた。

こんな事、絶対に許されるはずがないのに…

何故、穢らわしい汚物な自分は、澄みきった神聖なるショウの側にいるのか。…こんな自分は、偉大なるショウの側にいていい存在などではない。

……でもっ!

強欲な自分は、それでもショウの側にいたい。離れるなんて考えられない!

まして、ショウが自分以外の誰かと……そんなの…そんなの絶対に嫌だ!!

……どうすれば、いい?

どうしたら……!!?


と、頭を抱え、永遠と出ない答えを求めて頭の中でグルグル考えてる桔梗に

…ぱちんっ!

今度は、少し痛みがある程度に勢いよく桔梗の両頬は、ショウの小さめな手で挟まれ

「桔梗。上を向いて、私を見て!」

と、強めの口調で言われ、言われるがまま桔梗は俯いていた顔をあげショウの顔を見た。

…ドックン!

だ、ダメだ!今は、とてもじゃないけどショウの顔が見れない!

傷心中の桔梗は、
どうしてもショウの顔が見れないという気持ちでいっぱいだったが、ショウが強く熱望してきた事なので何とか自分の気持ちに耐えショウの顔を見た。

だが、物凄く後ろめたくてまともにショウの顔が見れず、どうしても目が泳いでしまうのは許してほしい。


「桔梗は、誰が好きなの?“始まりの世界のショウ”?、物凄く美人な男の子や女の子?それとも、私?」

と、問われ、まさかの質問の内容に驚いた拍子に


「…そっ、そんなの!?ショウに決まってる!
ショウしかいないよ!!あまりに愚問過ぎてビックリしちゃう質問だよ?」

“始まりのショウ”の事や“桔梗の過去世、体の関係のあった極上の美男、美女達”については、桔梗の過去世の問題があるのでその事には触れられなかった。…口に出せる訳がなかった。

本当なら、

『ショウ以外考えられないよ!ショウだけなのに、どうしてそんな意地悪な酷い事言うの!?
何でそこで“始まりのショウ”や、“美男、美女”の話が出てくるの?ショウ以外あり得ないから!ショウ以外気持ち悪くて触れる事すら憚れるってのに。変な事言わないで。』

なんて、言ってやりたいのだが…。

自分の全ての過去世を覚えている桔梗は、そんな事とてもではないが言えなかった。それに、過去世“始まりの世界のショウにどれだけ酷い事をし続けてきたのか知ってしまった、今”。

ますます、自分の発言には全くの説得力なんてないように感じ、気持ちでは言いたい事や伝えたい事が山程あっても自分にはそれを言う資格が無いと喉まで出掛かった言葉を言い出せずに飲み込んでいた。

そんな桔梗に、ショウは


「桔梗は、私の事“始まりのショウの代わり”だって思ってる?桔梗の気持ち、ちゃんと教えて!」

と、不安と怒りが混じり合った様な複雑な表情で桔梗に聞いてきた。

その質問に、桔梗はドキリとした。

まさかまさかの質問に、少し躊躇しながらも桔梗は答えた。

もう、どうせ嫌われてるのだ。ここで、何を言ったって何も変わらない。

なら、大好きなショウの気持ちに応えて、自分の考えてる事感じている事を洗いざらい言ってしまおう。

桔梗は、窮地に立たされやぶれかぶれになっていた。


「うん、最初はそう。」

と、答えた桔梗の言葉に、ショウは「…やっぱり!」と呟きショックを受けていた。

「だけど、それもショウが生まれる前までの話。
ショウが生まれて、その顔を見たら“代わり”も何も頭からすっ飛んじゃった。」

「…?」

どういう事かなと首を傾げ、桔梗を見るショウに桔梗は


…きゅん!

…ああ、かわいいなぁ

今すぐ、抱き締めていっぱいキスしたい


なんて、キュンキュンしつつも何とか本能にうち勝ち答えた。

「…ビックリする話なんだけど。ああ、この女の子が俺の全てなんだって直感したよ。
何があってもこの子を守る。絶対に大切にする!
そう、心に誓ったと同時に、ショウを一目見た時から【初めて“恋”に落ちちゃった】。
もちろん、ショウが誕生してから“始まりのショウの代わり”だなんて思ってないし、俺のショウと“向こうのショウ”は“同じ”ものでできてるけど“別人”だと感じたんだ。」

そう言って、恐る恐るショウの顔をチラッと見ると


…ドキッ!

…え?

凄く驚いた顔しちゃって…あれ?

…え?え?嘘っ!?

なんだか、凄く嬉しそうにふにゃって笑ってる。


その時、ショウは「…そっか。そういう事だったんだ!」と、何か吹っ切れたような晴れ晴れとした表情で小さく呟いていた。

その様子に、桔梗はとても驚いた。


どうして?俺の話のどこに、ショウにとって嬉しい話が入ってたの?

分からないけど、ショウが嬉しそうにしてるとこっちまで嬉しい!ショウ、何が嬉しかったの?後で、ゆっくり教えてね?


…きゅんきゅん!


「こんな事言うと気持ち悪いって思うかもしれないけど、ショウも“向こうのショウ”も“なくてはならない特別な天”という事に関しては同じ。
けど、しつこいようだけど。俺が初めて恋しちゃったのは、ショウであって“向こうのショウ”じゃない。」

…不思議なんだけど、ショウと“向こうのショウ”は同じ筈なのに、全然違う別人に感じて同じように接する事ができない。

何故かは、理論的に分かってるつもりだけど。それ以上に何かがある気がしてならない。

「こんなにも俺の身も心も夢中にさせられるのもショウだけ。だって、俺は“向こうのショウ”には全然欲情しないよ。過去世の自分自身気がついてなかったし、絶対に認めようとしなかっただろうけど。
“向こうのショウ”の事は、決して穢してはならない崇めるべき神聖なる絶対的存在だと心の奥底では感じてた。
だからかな?“向こうのショウ”の事は異性として見れなかった。
“向こうのショウ”は俺にとっての唯一無二の“絶対的君主”だった。…今となっては過去(過去世)の話にすぎないんだけどね。」


そこで、どこが気に入らなかったのかショウは、さっきまでご機嫌さんだったのに、急にほっぺたをお餅のようにぷくぅ〜と膨らませてプンプン怒っていた。


きゅぅ〜〜〜!

怒ってるショウも可愛いって思うなんて、俺はどれだけショウの沼にズブズブにのめり込んでいるわけ?

まあ、本気で怒ってないのが分かってるから可愛いって思える余裕があるだけだけどね

ショウが本気で怒ってたら…俺はショックでどうにかなってるに違いない事だけは分かるから


「それに、俺のショウと“向こうのショウ”は、魂や根っこの部分や根本的なものこそ同じなのに、性格も似てるようで違う。言動も何もかも同じようで全然違う。
…つまり、何が言いたいかって言うとね。俺はショウと“向こうのショウ”を同一人物とは見てない。
同じ魂を持つ別人だと思ってる。感覚としては、双子の姉と妹って感じかな?そんな風にしかみれない。
だから、俺にとって“向こうのショウ”…ううん!ショウ以外全てが恋愛対象外。」

…きゅん!

…あ。ショウの機嫌が治った

ふふっ!分かりやす過ぎて、可愛い過ぎない?

なんで、こんなに可愛いんだろう?どうしようもなく可愛過ぎて…俺だけのものにしたいなぁ〜

俺と二人だけの世界に閉じ込めて、ショウを独り占めしたいな〜


…誰にも邪魔される事なく、ショウを隅々まで……ハッ!今は、そんな事を考えてる暇がなかった

「俺が好きなのは、ショウだけだよ。恋人になりたいのも結婚したいのも、エッチしたいのもショウだけ。
ショウは俺の全てだよ。」

…表面上は、周りに居る奴らの事を考えて簡素な言葉で言ってるけどね

本当の本当は、こんな表現じゃ言い表せないくらいズブズブのドロドロな事考えちゃってる

なんなら、永遠にショウの心が俺だけしか考えられないくらい虜にして、体も隅々まで愛して一つに繋がってたいくらい欲情しっぱなしなんだよ?

けど、それもいいけど

ショウが生まれてから今まで、きっとこれからも
色んな嬉しい、楽しい事をショウが俺にいっぱいいっぱい教えてくれるから、それ以外の楽しみも知っちゃったからね

何もしなくても、ただ側に居るだけで幸せだなんて感じる事も初めて知った

それも含めて、ショウといる毎日が多幸感で溢れてる

…好き、大好き!

大好き、愛してるだけじゃ足りない!!

言葉で言い表せないくらい好きすぎて、一緒にいるだけでも狂おしい程までに愛おしくて大好きで大切で大事で!

どうしたら、俺のこの気持ち伝わるのかな?

…ショウは、どれくらい俺の事好き?

俺のショウに対する愛が大きすぎてドン引きされちゃうかな?…嫌われないように、いつでも紳士でいるよう心掛けて大人の余裕を見せなきゃ

ショウに、カッコいいって思われたいし俺だけに夢中になってほしいから


桔梗の本心なのだろう。さっきまで泳いでいた目が真っ直ぐにショウに向かっている。

「ただ、今現在“始まりの世界”が何者かによって、壊されようとしている。
始まりの世界の世界が消滅したら、そこから分岐してできた全てのパラレルワールドも消滅する。もちろん、ショウや俺達のいるこの世界も。
それを阻止する為に、向こうがピンチに陥ったら助けに行ってる。
俺がショウとずっとずっと一緒に居たいから。だから、絶対に向こうの世界を壊されてはダメなんだ。」

桔梗がちょくちょく、始まりの世界に行ってるって知ってたけど…まさか、そんな恐ろしい理由があったなんてとショウは青ざめた。

だけど、話を聞いていて嬉しい事もあった。

桔梗は、向こうのショウと自分を“別人”と考えてくれている事にだ。そこに、とても心打たれ

そして、ショウなりにハッと気がついた事があった。


「世界の話は後でゆっくり聞かせて?
今はね。その話じゃないの!」

「…うん、そうだね。」

怒ってる訳でもなく、真剣な顔で桔梗の顔を見てくるショウに桔梗は迂闊にもカッコ可愛いとドキドキしながら見ている。

けど、いまいちショウが何が言いたいのかよく分からないので、空返事で返しておいたが…

今までも狂おしいくらい愛してた筈なのに、惚れ直して更に好きになってしまった。好きに上限限度はないんだろうか?

これ以上、ショウを好きになってしまったら自分の心はどうなってしまうのだろう?…持ち堪える事ができるだろうか?


…どうしよう…!

俺のショウが、カッコ可愛過ぎる!!

…す、好きぃ〜〜〜っっっ!!!好きすぎて、どうにかなってしまいそう


と、キュンキュンとドキドキが止まらない桔梗は、思わず口元を押さえ目はハートになっていて恋する乙女の様になっていた。…男だけど…

腰が砕け落ちそうになるのをプライドだけで持ちこたえショウの次の言葉を待つ。


…ドキドキドキ


「桔梗。あのね、桔梗が私の事“向こうのショウ”とは違うって言ってくれた事、すごくすっごく嬉しかった!
桔梗、大好きって思った。」


…ドキン!


…ゾクゾクゾクゥ〜〜〜!


ショウ…そんな大した事ない言葉が嬉しかったの?

俺の事、大好きって言ってくれた

…俺も、俺もショウが大大大好きぃ〜〜〜!!

桔梗の目をまっすぐに見て真剣に話すショウに、桔梗は興奮してきて体中に淡い桃色の電流が走りショウを蕩けそうな表情で見ている。

その色気たるや…

周りにいる一流達は、桔梗の垂れ流しのフェロモンに当てられうっとりと惚け釘付け状態だ。


「…しかし、桔梗は美貌もさることながら人の心を酔わす色気も凄まじいな。…ショウのどこに、桔梗の心を虜にする要素が全くもって分からないな。」

二人の様子を見ていたリュウキが、万物全ての生き物を虜にするとも過言ではない美貌とカリスマ性を持ち合わせている桔梗が、何故にあそこまで異性として性的対象としてショウに夢中になっているのかサッパリ理解できなかった。そこに


「それは普通に“恋”でしょ!あなたには分からないでしょうけどね。」

と、首を傾げるリュウキにマナはニッコリ笑顔で皮肉めいた言葉を掛けた。

そんなマナの冷たい笑顔に、オブシディアンはなんとも言えない気持ちになっていた。

なんか都合が悪くなったリュウキは、失言だったかと口元を少し隠すような素振りを見せショウと桔梗の様子を見る事に集中した。

そんなリュウキの様子に、何かを諦めているかのようにマナは小さく息を吐き一瞬少し悲しげな表情を浮かべ、直ぐにいつもの笑顔でショウと桔梗に向き直った。

マナの様子を見ていたオブシディアンは複雑な気持ちに駆られながらも、桔梗と自分の主であるショウの様子を見守る。

ショウはジッと蕩け顔の桔梗を見続け言葉を続ける。


「桔梗の過去世は、“今の桔梗じゃない”。桔梗の魂を持った“別人”なんだって思った。」

その言葉を聞いて桔梗は、夢見心地な気持ちからハッと目が覚めたように目を見開き驚いた様子でショウを見ていた。


「それも、それぞれの気持ちの持ちよう。その過去世が、自分にとってとってもいい事で自分の過去世と同じようになりたいって思ったら、新たな体や生まれ育った環境でそれを目指せばいいと思う。」

確かに人によっては、過去世素晴らしい人生でその記憶を持って生まれる可能性もある。過去世、色々と複雑な事情があり、今世ではそれを解決しようと思う者もいるかもしれない。

「桔梗は生まれ変わってから、私以外の誰かとエッチな事したの?」

ショウは恥ずかしかったのだろう、羞恥で真っ赤な顔をしていたが真剣な眼差しで桔梗に質問した。


…ドキッ!!

「…な、ないっ!あるわけないよ!
生まれ変わってから、俺はショウの体しか知らない。他は知りたくもない!!ショウを知ってから、他の奴らとすれ違って少し肩がぶつかっただけでも気持ち悪いのに。ショウだって知ってるでしょ?
俺が人間潔癖症で、常に除菌シートや除菌スプレー持ち歩いてる事!」


そうなのだ。桔梗は、ほんの少し人に触れただけで気持ち悪くて我慢できず除菌シートなどで手を拭いてるし、人の手から渡されたテスト用紙やノートまで軽く除菌している。他にも、他人の唾が飛んで自分につくのを恐れ、人とあまり話したがらない。とか、他にも色々と人間潔癖症は難儀で面倒くさいのだ。

「うん、知ってるよ。でも、過去世の桔梗はそれも平気だったんでしょ?」

と、聞いてくるショウに


「…え?…あ、確かに、そうだった。人と普通に接する事ができてたよ。」

…ズキリ…

確かに、そういう話をしてるんだけど。
その事について話し合いをしてるんだけど…やっぱり、自分の最低最悪な過去世をほじくり返されるのは、かなりキツイ。今にも、“もう、この話はやめて!!”と、叫んで逃げてしまいたいくらい心の傷口がジグジグ痛む。

そして、また俯き掛けた桔梗の顔を無理矢理グイッとショウと目線が合うよう上を向かせられた。そして、真剣なショウの姿。


…トクンッ!

ショウに、こんな強引な所があったなんて!

…こんな時に不謹慎だけど、やっぱり…やっぱり、こういう時のショウはカッコいい

…ハア〜…俺のショウが素敵過ぎて…抱かれたい…


…トクン、トクン…!


またしても、目をハートにしながら桔梗はショウが触れてる自分の両頬からジワジワと快楽を拾っていき、体中が熱く下半身はズシリと重くなり小さく息が上がり始めていた。

その様子を見ていたリュウキは


「……アイツ、ド変態だな。容姿で誤魔化されてるが、かなり気持ち悪い奴だぞ?…やっぱり、ショウの婚約者にしておくのはやめさせたいな。」

と、ドン引きしていたが

周りの一流達は、桔梗のあまりの妖艶さにふにゃふにゃ〜っと腰を抜かす者や、大きく息を荒げ桔梗に釘付けで理性を失い自慰行為をし始めようとする者まで出てきた。

それに気がついたリュウキは、ショウ達を最後まで見届けなければいつ何処で桔梗が暴走するか分からないので、待機させていた一流達に少し申し訳なく思うと同時に、性に対しても耐久もある一流達をこうも簡単にアッサリと理性を奪い虜にしてしまう桔梗の美貌とフェロモンを警戒した。


「ね?違うでしょ?」

ほらね!と、自信満々な表情で桔梗に言ってくるショウに桔梗は首を傾げた。


「過去世の桔梗は桔梗であって違う。
だって、体は真っさらに綺麗に創り変わって、心だって変わってる!もう、本当の別人だよ。
だから、今を生きる桔梗は“過去世と別の生き方”がしたくてそれを実行してるよね?なら、過去世桔梗に姿形が似てる人と、今現在を生きてる桔梗とは全然違う人だよ。」


…ドックン…!


「きっと、過去世桔梗に似た人が“こうなっちゃいけないよ”って、教えてくれてるんだと思う。だから、その出来事も忘れちゃいけないって思う。」


…ドキドキドキ!!

…え?え?え?

ショウって…ショウって、いざって時はこんなにも頼もしくて頼れる人だったの?

何それ!…完璧過ぎるんだけど…!

カッコいいよ〜…なのに、可愛いも合わさって相乗効果で俺の心が追いつかないぃぃ〜〜


それに、確かにそうだ。ショウの言う通りだよ。

ショウがそう言ってくれるから、俺は自信を持ってショウの側にいられる。自信を持って前を向いて生きていける。


俺は俺だ!



ドクンドクン…!



「…へえ?普段、人見知りで内気な我が子にこんな一面があったなんてな。さすが、俺の子だな。可愛いだけじゃない。」

と、ショウの毅然とした態度と心持ちを見ていて、リュウキはショウの事を誇らしく思い思わず口角が上がっていた。

「私の子供でもあるんですけど!?」

リュウキの腕の中から、マナがプンプン怒りながら物申していた。

「ああ。お前が、腹を痛めて頑張って産んでくれた俺達の唯一無二の大切な宝だ。ショウを産んでくれて、ありがとう。感謝してる。」

リュウキは、建物が木っ端微塵になってからずっと魔力不足のマナを労わるようにお姫様抱っこしている。
そこから優しい眼差しでマナは見られ、とても嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い気持ちになっていた。



「忘れちゃいけない事だけど、その人は桔梗じゃないから心に留めておくだけね。深く考える事じゃないんだからね!悪い事しそうな時に、こんな事をしちゃった人がいたって見本にすればいいと思う。それだけだよ。」


…トクン…トクン、トクン!


…ショウ…

ショウが過去世の桔梗と今世の桔梗とを割り切ってくれたおかげで、桔梗は心の底から救われ過去世の穢れ全てが浄化された。過去世の桔梗とは完全に決別できたのだ。

そう感じたとか、思えたじゃない。ショウが、そう言ったから絶対にそうなのだ。


…だ、だめだ!

もう、我慢の限界だ!!


…ドックン、ドックン!


「……ショウ、ありがとう。」

桔梗は情け無い顔で涙をボロボロ流しながら、喜びと感動で震える声でショウにお礼を言った。


…ドックンドックンドックン!!


「…こんな時に、水をさしてごめんね?…俺、もう…我慢できない。…ショウの事…抱き締めたいんだけど…いい?」

と、恐る恐る聞いてくる桔梗に、ショウは一瞬キョトンとした顔をしてからクスクス笑い出して


「いつも、何も言わないでギュッってしてくるのに変な桔梗。そんな事聞かなくても、いつだってギュッしていいのに。桔梗にギュッってされるとね、私、凄く嬉しいし安心するの。だから、桔梗のギュッ、だ〜い好きだよ。」

そう言って、ショウは桔梗の為に大きく手を広げた。

けど、何故か桔梗はその場から動かず桔梗には珍しくオドオドした様子を見せていた。顔を赤らめ潤んだ瞳でショウを見ている。


ドッキーン!


…う、うひゃぁぁ〜〜〜っっっ!!!?

桔梗、どうしてこんなに色っぽくなってるの?

いつも色っぽいけど、いつもの比じゃないくらい色っぽいの!

…な、なんか、エッチチな気持ちになっちゃうぅ〜〜〜


…ドキドキ!


と、ショウが桔梗の自分に当てられたフェロモンをビシバシとぶつけられてる最中


「〜〜〜ッッッ!!?…ショウが…」

「…へ?私?私が、どうしたの?」

ショウが、短めの太い眉毛をくいっと下げて恐る恐る桔梗に聞くと


「〜〜〜ショウが、あまりにカッコいいし!なのに、可愛いから俺見惚れちゃって…
…だから…その…恥ずかしいんだけど。ショウが、俺の事メロメロにしちゃったから、腰が砕けて動けなくなっちゃった…」

桔梗はいつもの冷静さの欠片もなく、恥じらい真っ赤になりながらまるで遊女のような動きでとても色っぽく艶やかにショウを誘い込んでいた。

まだ12才…今年で13才になる少年とは思えないほどのあまりの妖艶さとアダっぽさに周りの人達はノックダウンする者達が続出。

辛うじて失神しなかった者達の多くは、理性は失うものの桔梗の神々しくも神聖なる美貌を崇めるあまり襲うなんてとてもではないが出来なく。しかし、燃え上がるような激しい性への欲望で頭や体は沸騰しそうにおかしくなり…結果、桔梗の姿を見るだけで悦びを感じ自分の欲をどうにかしたくて自慰行為に夢中になっている。

その中にも、僅か2名ほど辛うじて失神せず必死に自我を保とうと耐え続けているという強者もいた。この2名に対しリュウキは、とんでもない精神力の持ち主達だととても感心していた。

周りがそんな酷い状況になっている事に、ショウはショックを受けつつ…あちこちから性独特の臭い匂いが充満してきてる。…他人の性の匂いは吐き気がするくらい臭く感じるのは何故だろう?

分からないが、ほとんどの人がピクピク腰を動かしながら失神してるし…股間の所がびしょ濡れだからお漏らしでもしたのか…それとも…。

しかも、ヘニャヘニャ〜と腰を抜かしてる人達は……それぞれのやり方で自慰行為にふけっていてショウにはとても刺激が強すぎて見ていられないし、あちこちから喘ぐ声やたまに桔梗の名前を呼びながら快がる声……聞いてられない。

マナも周りのそんな様子に焦り、ショウの教育上良くない!どうしよう!!と、リュウキに訴えかけると

「…ああ、分かっている。」

と、深いため息を吐き、光のスピードで全ての一流達の眠りのツボを突いていき一流達を眠らせておいた。

その様子を見て、ショウはリュウキによって倒されていく一流達を心配し大丈夫なのかと聞くと


「大丈夫だ。あの人達は“悪い魔道士”によって精神状態をおかしくさせられたようだ。だから、あの人達を正常に戻す為に少しの間眠らせるようにしてきただけだ。」

と、優しく笑いかけてきたので、ショウはその言葉を聞いて安心したが、一つ不安な事が

「…え!?悪い魔道士はどうなったの?」

そう言って青ざめるショウに

「ああ、さっき警察がきて逮捕されて行ったようだ。だから、もう安心だ。」

なんて、息を吐くかのようにリュウキはショウを安心させる為に嘘をついた。

「…よ、良かったぁ〜!これで、みんな正常に戻れるし、悪い魔道士も逮捕されたから安心だね!」

と、リュウキの言葉を信じきっているショウはホッとしたような笑顔をリュウキに向けてきた。そんな、娘にリュウキとマナは


うちの娘が、バ可愛いすぎる

…いい子に育ったなぁ〜

なんて、心の中で親バカな事を考え悶えていた。


しかし、ここで

そんな親子の会話を邪魔する者が…!