幻術に掛かった桔梗は、最初こそとても幸せそうで美しい笑顔が見られた。だが、時間が経つにつれて桔梗の表情は曇っていき…
ついには
「…ショウ、どうして…?」
と、口に出し、ポロポロと涙を溢しはじめた。それを見たショウは慌てて、ポケットからハンカチを取り出すと桔梗の目から流れる涙を拭いてあげた。
その内、桔梗は悲痛に顔を歪め
「…ヤダ!ヤダよっ!!捨てないで!何でもするから!ショウの望む事なら何だってする。
欲しいなら、この城も国だってあげるから!“天”の座だってあげる!!俺が差し出せるもの全部あげるから!
だから、捨てないでぇぇーーーーーーーーッッッ!!!」
と、泣き叫び桔梗の体は、ビクンッ!ビクンッ!と、小さく跳ね、ビリリッ、ビリッ…!…バチバチバチ!!と、桔梗の全身から黒紫の稲妻のような形のものが排出されてきた。
…バキ…!バキバキッ!!
それは、中にいる魔道士達の結界により何とか阻止できているが、結界には無数の小さなヒビが入っている。
その威力と力に、魔道士達は驚くもこのままではいけないと渾身の力を込め結界を強化している。
「…えっ!!桔梗!?」
その様子に、ショウは驚き心配のあまりリュウキとマナの顔を見た。すると、二人共青ざめた表情に変わり
「…だめ!このままだと桔梗君の魔力が暴走して、大変な事になっちゃう!桔梗君自身の身も危ない!!
……あっ!!?外の魔道士さんや聖女さん達、錬金術師さん達の魔力が尽きちゃって倒れてる子達が大勢いる!?屋敷の周りにいる魔道士さん達は何とか食らいついてきてくれてるけど、彼らが倒れちゃうのも時間の問題かも!!」
と、焦ったように青ざめるマナに、リュウキは
「幻術を解く事はできないのか!?」
「…やってる!やってるけど、桔梗君がそれを許してくれない。桔梗君のショウへの気持ちが強すぎて幻術に強くしがみついてて幻術が解けないの!?」
と、マナは桔梗に掛けた幻術を解こうと必死になっているが、大きく魔力だけが奪われどうしようもない状況になっていた。
そんな中でも、マナは自分達の為に強力してくれている魔道士達の命や後遺症が残らないよう自分の魔力を魔道士達に補給し与え続けている。
いくら、底が見えない程のえげつない魔力量の持ち主であるマナでさえ、ショウと桔梗同時に幻術を使いそれからの幻術を解く解術をしながら周りの魔道士達に自分の魔力を分け与えているのだ。
マナの魔力の底が見えてきてもおかしくない状況である。現にマナは魔力が尽き始め、立ってるのすらままならなく魔法の杖にしがみ付きながら地面にしゃがみ込んでいるのがやっとの状態だ。顔色も悪く大きく息も乱れ肩で息をしている。
想定外の事だった。
何かあっても、術を掛けた本人が術を解けばいい事だと単純に考えていた。
それが、桔梗のショウへのあまりの気持ちの重さにマナの解術が全く効かない。自分達が考えていたより、桔梗のショウへの激重な気持ちは遥か上をいっていた。
まさか、ここまでとは…と、桔梗の気持ちの重さに少し恐怖を感じるリュウキとマナ、オブシディアンだ。
「…ど、どうしよう!…このままじゃ…!!」
その内、桔梗は白目を剥き
「…う、嘘っ!?ショウが、俺以外の人とエッチしてる!!?…ヤダッ!ヤダヤダヤダーーーーーッッッ!!!ウワァァーーーーーッッッ!!!」
と、悲痛な悲鳴混じりの叫びをあげ
「…な、何で!?見たくないのに、ショウの不貞が見えてしまう…!俺はワープでもしたの?
ショウと憎いイケメンがいる…!なのに、何で自分の姿や声は二人には見えてないの?聞こえてないの?まるで自分が幽霊か透明人間にでもなった気分だ。
最悪だ。…何で、いちいちこんなのが見聞きできてしまうんだよ…」
なんて、絶望の声を出していた。
そんな桔梗の全身には血管が浮き上がり口からドバドバとよだれが出てきた。
桔梗の魔力の暴走がどんどん悪化していきショウと桔梗にいるベット以外全てが桔梗の魔力の暴走で木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
大勢の一流達が、一致団結して桔梗の暴走を抑え込んでいるというのにだ。その内、一人、また一人と魔力が尽き倒れていく一流達。
魔道士達に、桔梗の暴走の刃が飛んで行く度にリュウキとオブシディアンがそれに対処していく。頼もしい二人である。
それに命拾いした魔道士達は、あの暴走の刃に触れたら自分達は一貫のお終いだと恐怖するも一流としての意地とプライドで渾身の力を振り絞り戦い続けようと踏ん張っている。
桔梗が掛けられた幻術の中では、どこまで話が進んだのか
「…こ、殺してる…!ショウの体を穢した輩はみんな探し出して皆殺しにしてやる!
…許さない…絶対に許さない。…ショウは、俺だけの天守なんだから!」
なんて、物騒な事を口走っている。
そんな桔梗をショウは、ギュッと抱き締めると
「そうだよ!桔梗は私だけの桔梗だよ!」
と、苦しそうな桔梗の姿に心を痛めがならも、懸命に涙を堪えながら声を掛けた。すると、桔梗の体はピクッとショウの声に反応し少しだけ暴走が弱まった。
ここぞとばかりに、まだ立ち上がっている魔道士達は渾身の力でヒビ割れた結界を補修し結界の術を継続している。
「桔梗?聞こえてる?大丈夫だよ。“私はここに居るよ”。桔梗のいる場所はそっちじゃないよ。こっちだよ。だから、早く戻ってきて!!」
と、泣きながら桔梗に訴えかけると
「……俺のショウは、“ここには居ない”。…俺のショウは……ッ…ショウはァァァーーーーーッッッ!!!
……ああ、ショウが俺が気付いてないと思って色んなヤツと……うぅっ…オエェーーーッ!…ヤダ…嘘だ…嘘だよ…こんな…酷い地獄だ…うぅ…!
…でも、外から聞こえてくる…何だ?凄く、凄く大切な事を忘れてる気がする…何だ?…何だっけ…!」
桔梗は幻術の中と外から聞こえるショウの声に混乱し、色々と葛藤して苦しんでいるようだ。ベットの上では頭を抱え奇声を発しながらうずくまっている。
それに驚いたのは、リュウキとオブシディアン。
そこ(幻術の中)は、側にショウが居るなんて分かる筈がないしそんな余裕がある筈もない。幻術の中が本当の世界だと思い込んでいるのだから。
しかしながらだ。
もし、幻術の中の物語が自分にとってあまりに酷い場合、精神的苦痛で眠った状態のまま、もがき左右に動き回ったりシーツを掴んでベットをぐちゃぐちゃににして暴れてもおかしくない。
なのに、そんな事などせずショウを守るように、そしてショウに救いを求めるようにショウに抱きついたままいるのだ。
……そんな馬鹿な……
あり得ない、と、驚くしかない。
リュウキとオブシディアンが、桔梗のショウに対する思いの強さからか、たまたまの偶然なのか分からないが、凄い精神力だと桔梗に驚かされてる間にも
ショウは懸命に桔梗に訴えかけている。
「桔梗ッ!君のショウは、ここにいるよ!」
と、強く声を掛けたところで、桔梗の目がカッと開き魔力の暴走も止まった。
そして、しばらくの間ボーッとしてから
ようやく、自分を包み込む柔らかな温かみを感じショウの顔を見ると、桔梗の胸に色々なものが込み上げてきて声をあげて泣いていた。
「…無理だよ。あんなの耐えられないっ!耐えられる訳ない!!…なのに、俺…俺……ッッッ!!?」
と、ひとしきり泣き叫ぶとハッと我に返りショウの顔を見た。そして、桔梗にとって耐えきれないものがあり、すぐさまショウから離れて縮こまり怯え震えながら声を押し殺して泣いていた。
マナの幻術は、ここまでと決められた物語に行き着くまで抜け出せないのだが、これ以上桔梗の精神が保たないと判断したリュウキとマナはアイコンタクトをとりお互いにうなづくとまだ途中ではあったが桔梗に掛けた幻術を解いたのだった。
リュウキは、魔力をほぼ使い切ったマナを地面に敷いた自分の上着の上に寝かせオブシディアンと共にマナに魔力を注ぎ込みながら、ショウがどう出るのか様子を窺っていた。
オブシディアンには、ギリギリまで二人に手助けはせず静かに見守ってほしいと伝えてある。
桔梗が心配で、ショウはベットから起き上がると桔梗の側まで行き桔梗の前にちょこんと座った。
ショウの気配に気がつき、大きくビクッと肩が跳ねる桔梗は体育座りで膝に顔を埋めショウの顔を見ようとしなかった。
だが、ショウ達が使っていたベット以外屋敷全てが木っ端微塵に消え更地になった地面にショウが座ろうとしていたので、すかさず自分の上着を座布団代わりに敷いてあげる桔梗にショウは嬉しそうに「ありがと!」と言って遠慮なく座った。
…あ、ここは敢えて魔道は使わないんだ。と、わざわざ自ら動き自分の上着を丁寧に敷いてその上にショウをエスコートしてから、さっき自分が居た場所まで戻るという面倒くさい事をしている桔梗に周りにいた人達は呆れていた。
…何がしたいんだ?意味が分からない、と。
そんな周りの反応など気にせず、ショウは桔梗に話しかけた。
「……どうしたの?どうして、そんなに震えてるの?」
と、ショウが桔梗の頭に手を乗せると
「…だ、ダメ!…俺に触っちゃ汚いよ?…ショウの手が穢れてしまう!」
桔梗は泣き腫らした顔をあげ、早く手を引っ込めるようショウに言った。
「…どうして?桔梗は、どこも汚くないよ?何があったの?」
と、心配そうに桔梗の顔を覗き込むショウを見ると酷くショックを受けた表情をし、ショウから顔ごと視線を逸らすと下を俯きポツリポツリと自分の気持ちを話し始めた。
「……俺、ショウの体験をして。初めて知る事ばっかりで凄く驚いたよ。…まさか、ショウがこんな壮絶な苦しい辛いばかりの人生を歩んでいたなんてっ!
…ショウの事を考えれば、胸が張り裂けそうに辛い。その原因、元凶が、俺だなんて……!!」
桔梗は頭を抱え、ひたすらに苦しい、辛い…どうしたらいいか分からないと酷く取り乱し、過呼吸を起こしパニックを起こしていた。
すると
パッチィーーーン!!!
と、桔梗は片方の頬に小さな衝撃が走るのを感じ、小さな痛みを感じた頬を押さえ思わず自分に衝撃を与えた人物の顔を見た。
……え?
ついには
「…ショウ、どうして…?」
と、口に出し、ポロポロと涙を溢しはじめた。それを見たショウは慌てて、ポケットからハンカチを取り出すと桔梗の目から流れる涙を拭いてあげた。
その内、桔梗は悲痛に顔を歪め
「…ヤダ!ヤダよっ!!捨てないで!何でもするから!ショウの望む事なら何だってする。
欲しいなら、この城も国だってあげるから!“天”の座だってあげる!!俺が差し出せるもの全部あげるから!
だから、捨てないでぇぇーーーーーーーーッッッ!!!」
と、泣き叫び桔梗の体は、ビクンッ!ビクンッ!と、小さく跳ね、ビリリッ、ビリッ…!…バチバチバチ!!と、桔梗の全身から黒紫の稲妻のような形のものが排出されてきた。
…バキ…!バキバキッ!!
それは、中にいる魔道士達の結界により何とか阻止できているが、結界には無数の小さなヒビが入っている。
その威力と力に、魔道士達は驚くもこのままではいけないと渾身の力を込め結界を強化している。
「…えっ!!桔梗!?」
その様子に、ショウは驚き心配のあまりリュウキとマナの顔を見た。すると、二人共青ざめた表情に変わり
「…だめ!このままだと桔梗君の魔力が暴走して、大変な事になっちゃう!桔梗君自身の身も危ない!!
……あっ!!?外の魔道士さんや聖女さん達、錬金術師さん達の魔力が尽きちゃって倒れてる子達が大勢いる!?屋敷の周りにいる魔道士さん達は何とか食らいついてきてくれてるけど、彼らが倒れちゃうのも時間の問題かも!!」
と、焦ったように青ざめるマナに、リュウキは
「幻術を解く事はできないのか!?」
「…やってる!やってるけど、桔梗君がそれを許してくれない。桔梗君のショウへの気持ちが強すぎて幻術に強くしがみついてて幻術が解けないの!?」
と、マナは桔梗に掛けた幻術を解こうと必死になっているが、大きく魔力だけが奪われどうしようもない状況になっていた。
そんな中でも、マナは自分達の為に強力してくれている魔道士達の命や後遺症が残らないよう自分の魔力を魔道士達に補給し与え続けている。
いくら、底が見えない程のえげつない魔力量の持ち主であるマナでさえ、ショウと桔梗同時に幻術を使いそれからの幻術を解く解術をしながら周りの魔道士達に自分の魔力を分け与えているのだ。
マナの魔力の底が見えてきてもおかしくない状況である。現にマナは魔力が尽き始め、立ってるのすらままならなく魔法の杖にしがみ付きながら地面にしゃがみ込んでいるのがやっとの状態だ。顔色も悪く大きく息も乱れ肩で息をしている。
想定外の事だった。
何かあっても、術を掛けた本人が術を解けばいい事だと単純に考えていた。
それが、桔梗のショウへのあまりの気持ちの重さにマナの解術が全く効かない。自分達が考えていたより、桔梗のショウへの激重な気持ちは遥か上をいっていた。
まさか、ここまでとは…と、桔梗の気持ちの重さに少し恐怖を感じるリュウキとマナ、オブシディアンだ。
「…ど、どうしよう!…このままじゃ…!!」
その内、桔梗は白目を剥き
「…う、嘘っ!?ショウが、俺以外の人とエッチしてる!!?…ヤダッ!ヤダヤダヤダーーーーーッッッ!!!ウワァァーーーーーッッッ!!!」
と、悲痛な悲鳴混じりの叫びをあげ
「…な、何で!?見たくないのに、ショウの不貞が見えてしまう…!俺はワープでもしたの?
ショウと憎いイケメンがいる…!なのに、何で自分の姿や声は二人には見えてないの?聞こえてないの?まるで自分が幽霊か透明人間にでもなった気分だ。
最悪だ。…何で、いちいちこんなのが見聞きできてしまうんだよ…」
なんて、絶望の声を出していた。
そんな桔梗の全身には血管が浮き上がり口からドバドバとよだれが出てきた。
桔梗の魔力の暴走がどんどん悪化していきショウと桔梗にいるベット以外全てが桔梗の魔力の暴走で木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
大勢の一流達が、一致団結して桔梗の暴走を抑え込んでいるというのにだ。その内、一人、また一人と魔力が尽き倒れていく一流達。
魔道士達に、桔梗の暴走の刃が飛んで行く度にリュウキとオブシディアンがそれに対処していく。頼もしい二人である。
それに命拾いした魔道士達は、あの暴走の刃に触れたら自分達は一貫のお終いだと恐怖するも一流としての意地とプライドで渾身の力を振り絞り戦い続けようと踏ん張っている。
桔梗が掛けられた幻術の中では、どこまで話が進んだのか
「…こ、殺してる…!ショウの体を穢した輩はみんな探し出して皆殺しにしてやる!
…許さない…絶対に許さない。…ショウは、俺だけの天守なんだから!」
なんて、物騒な事を口走っている。
そんな桔梗をショウは、ギュッと抱き締めると
「そうだよ!桔梗は私だけの桔梗だよ!」
と、苦しそうな桔梗の姿に心を痛めがならも、懸命に涙を堪えながら声を掛けた。すると、桔梗の体はピクッとショウの声に反応し少しだけ暴走が弱まった。
ここぞとばかりに、まだ立ち上がっている魔道士達は渾身の力でヒビ割れた結界を補修し結界の術を継続している。
「桔梗?聞こえてる?大丈夫だよ。“私はここに居るよ”。桔梗のいる場所はそっちじゃないよ。こっちだよ。だから、早く戻ってきて!!」
と、泣きながら桔梗に訴えかけると
「……俺のショウは、“ここには居ない”。…俺のショウは……ッ…ショウはァァァーーーーーッッッ!!!
……ああ、ショウが俺が気付いてないと思って色んなヤツと……うぅっ…オエェーーーッ!…ヤダ…嘘だ…嘘だよ…こんな…酷い地獄だ…うぅ…!
…でも、外から聞こえてくる…何だ?凄く、凄く大切な事を忘れてる気がする…何だ?…何だっけ…!」
桔梗は幻術の中と外から聞こえるショウの声に混乱し、色々と葛藤して苦しんでいるようだ。ベットの上では頭を抱え奇声を発しながらうずくまっている。
それに驚いたのは、リュウキとオブシディアン。
そこ(幻術の中)は、側にショウが居るなんて分かる筈がないしそんな余裕がある筈もない。幻術の中が本当の世界だと思い込んでいるのだから。
しかしながらだ。
もし、幻術の中の物語が自分にとってあまりに酷い場合、精神的苦痛で眠った状態のまま、もがき左右に動き回ったりシーツを掴んでベットをぐちゃぐちゃににして暴れてもおかしくない。
なのに、そんな事などせずショウを守るように、そしてショウに救いを求めるようにショウに抱きついたままいるのだ。
……そんな馬鹿な……
あり得ない、と、驚くしかない。
リュウキとオブシディアンが、桔梗のショウに対する思いの強さからか、たまたまの偶然なのか分からないが、凄い精神力だと桔梗に驚かされてる間にも
ショウは懸命に桔梗に訴えかけている。
「桔梗ッ!君のショウは、ここにいるよ!」
と、強く声を掛けたところで、桔梗の目がカッと開き魔力の暴走も止まった。
そして、しばらくの間ボーッとしてから
ようやく、自分を包み込む柔らかな温かみを感じショウの顔を見ると、桔梗の胸に色々なものが込み上げてきて声をあげて泣いていた。
「…無理だよ。あんなの耐えられないっ!耐えられる訳ない!!…なのに、俺…俺……ッッッ!!?」
と、ひとしきり泣き叫ぶとハッと我に返りショウの顔を見た。そして、桔梗にとって耐えきれないものがあり、すぐさまショウから離れて縮こまり怯え震えながら声を押し殺して泣いていた。
マナの幻術は、ここまでと決められた物語に行き着くまで抜け出せないのだが、これ以上桔梗の精神が保たないと判断したリュウキとマナはアイコンタクトをとりお互いにうなづくとまだ途中ではあったが桔梗に掛けた幻術を解いたのだった。
リュウキは、魔力をほぼ使い切ったマナを地面に敷いた自分の上着の上に寝かせオブシディアンと共にマナに魔力を注ぎ込みながら、ショウがどう出るのか様子を窺っていた。
オブシディアンには、ギリギリまで二人に手助けはせず静かに見守ってほしいと伝えてある。
桔梗が心配で、ショウはベットから起き上がると桔梗の側まで行き桔梗の前にちょこんと座った。
ショウの気配に気がつき、大きくビクッと肩が跳ねる桔梗は体育座りで膝に顔を埋めショウの顔を見ようとしなかった。
だが、ショウ達が使っていたベット以外屋敷全てが木っ端微塵に消え更地になった地面にショウが座ろうとしていたので、すかさず自分の上着を座布団代わりに敷いてあげる桔梗にショウは嬉しそうに「ありがと!」と言って遠慮なく座った。
…あ、ここは敢えて魔道は使わないんだ。と、わざわざ自ら動き自分の上着を丁寧に敷いてその上にショウをエスコートしてから、さっき自分が居た場所まで戻るという面倒くさい事をしている桔梗に周りにいた人達は呆れていた。
…何がしたいんだ?意味が分からない、と。
そんな周りの反応など気にせず、ショウは桔梗に話しかけた。
「……どうしたの?どうして、そんなに震えてるの?」
と、ショウが桔梗の頭に手を乗せると
「…だ、ダメ!…俺に触っちゃ汚いよ?…ショウの手が穢れてしまう!」
桔梗は泣き腫らした顔をあげ、早く手を引っ込めるようショウに言った。
「…どうして?桔梗は、どこも汚くないよ?何があったの?」
と、心配そうに桔梗の顔を覗き込むショウを見ると酷くショックを受けた表情をし、ショウから顔ごと視線を逸らすと下を俯きポツリポツリと自分の気持ちを話し始めた。
「……俺、ショウの体験をして。初めて知る事ばっかりで凄く驚いたよ。…まさか、ショウがこんな壮絶な苦しい辛いばかりの人生を歩んでいたなんてっ!
…ショウの事を考えれば、胸が張り裂けそうに辛い。その原因、元凶が、俺だなんて……!!」
桔梗は頭を抱え、ひたすらに苦しい、辛い…どうしたらいいか分からないと酷く取り乱し、過呼吸を起こしパニックを起こしていた。
すると
パッチィーーーン!!!
と、桔梗は片方の頬に小さな衝撃が走るのを感じ、小さな痛みを感じた頬を押さえ思わず自分に衝撃を与えた人物の顔を見た。
……え?

