環くんがしゃがみ込んだすきを狙ったのか、チョコムースを持った総長様が私の前に。
「ほら、おいしいから」とお兄ちゃん顔で微笑みながら、チョコムースが乗ったスプーンを、私の口の前に突き出してきてました。
だっ……、だから!
アーんなんて無理ですから!
私は椅子に座ったまま、火照った顔を横に逃がす。
でも視線の先には、立ち上がった環くんがいて
「俺もひーちゃんに、アーんで食べさせたくなっちゃったなぁ」
ルンルン顔で、環くんも私にムースが乗ったスプーンを突き出してきて
「俺が作ったんだから、俺のを食べてくれるよな?」
「可愛いアライグマさんに、餌付けしてみたいの。総長じゃなくて、俺のを食べてよ」
二人から飛んできた、甘い要求。
どちらか一人を選ばなければいけない、無理難題。
どうしていいかわからなくて。
二人とも傷つけたくなくて。
私はオロオロとうつむくことしかできない。



